しゃぼん玉

をかや れいと

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間合い

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帰ってきてから一度も目を合わさないから
私も一度も目を合わさないでいた

それだけのこと
この空間にある雰囲気を大切にして
心臓近くでモヤがかかるのは知らんぷりした

動く画面に夢中になるあなたを横目で見て
もううんざりだと思う

「昨日のご飯、食べきれなかった」
「じゃあ食べようかな」

目の奥でずきんずきんと脈打つ何かに
鼻から深く息をして
身体の中からなくなったことにした

銀色の冷蔵庫から、残り物と醤油を出して
卓上に置く瞬間
あなたは一度も私を見なかった

きっと今私がボロボロ尋常じゃない涙を流しても
声を出さなきゃあなたは気がつかないだろう

噛み締めた奥歯で私は何を潰したんだろう
次はきちんと口から深呼吸をする

吐き出すものはきちんと私の中にあるのに
吐き出す方法を知らない私は
遠くに見えるゴミ袋みたい

角ばったゴミに形を少し変えられてしまって
もう容量オーバーの袋の先から
白く丸めたティッシュがこぼれ落ちそうで

二口、食事をしたあなたが
慣れた手つきでティッシュを引き抜いて
口元を拭く

私は卓上の丸まったティッシュをただ見ていた

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