94 / 149
間合い
しおりを挟む帰ってきてから一度も目を合わさないから
私も一度も目を合わさないでいた
それだけのこと
この空間にある雰囲気を大切にして
心臓近くでモヤがかかるのは知らんぷりした
動く画面に夢中になるあなたを横目で見て
もううんざりだと思う
「昨日のご飯、食べきれなかった」
「じゃあ食べようかな」
目の奥でずきんずきんと脈打つ何かに
鼻から深く息をして
身体の中からなくなったことにした
銀色の冷蔵庫から、残り物と醤油を出して
卓上に置く瞬間
あなたは一度も私を見なかった
きっと今私がボロボロ尋常じゃない涙を流しても
声を出さなきゃあなたは気がつかないだろう
噛み締めた奥歯で私は何を潰したんだろう
次はきちんと口から深呼吸をする
吐き出すものはきちんと私の中にあるのに
吐き出す方法を知らない私は
遠くに見えるゴミ袋みたい
角ばったゴミに形を少し変えられてしまって
もう容量オーバーの袋の先から
白く丸めたティッシュがこぼれ落ちそうで
二口、食事をしたあなたが
慣れた手つきでティッシュを引き抜いて
口元を拭く
私は卓上の丸まったティッシュをただ見ていた
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。



【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる