しゃぼん玉

をかや れいと

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彼女のリアル

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タンタンタンとリズムよく階段駆け下りる
ベージュのトートバック
ネイビーのセットアップスーツ
くるりと巻かれた毛先が少し色あせて

コツコツと音を鳴らさない
ニューバランスのスニーカー

彼女のリアルは滲み出ない

シルバーピンクの携帯カバー
首筋からジャスミンの香り
身に付けるアクセサリーは腕時計だけ
荒れた指先

磨かれた爪の表面
ネイルアートは色を持たない

彼女のリアルが滲み出る

広い海にぽたんと落とされた
白い絵の具
誰にも気づかれない間に白は白でなくなる

大きな青に飲み込まれて
水色にもなれない
彼女の個性は何処へ流れるの

水色のカッターシャツ
腕まくりして初めて見える手首の細さと
彼女のリアルに絶望する

八重歯を見せて笑うその裏に
一体何を隠しているの
掌を広げたって何にも出てきやしないのに
大きく口を開けたって

きっと何もこぼさないのに

彼女のリアルは
遠い昔に身体の奥にしまい込まれて
もう一滴も外へ出なくなった

固まった水性絵の具
キャップの部分に劣化した塊がこびりつく
ぼろぼろと零れ落ちるそれに
一体誰が気がついてやれるだろうか

何で泣かないの?って野暮な僕に
自分の色が滲み出るからと

白を隠す彼女のリアルに
僕はいつ水をさせるだろう

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