しゃぼん玉

をかや れいと

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始まり

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まだ再スタートするには早すぎる
まるで神様が言葉をこぼしたみたいに
今日は雨が降った


神様っているの?
辛気臭そうに濡らした前髪をいじって
その間から目を覗かせる君


鼠色の夜に目に見えるくらい
丸い雨
私もそう思った
何かを始めるにはまだ早いかもしれない

いつまで黙ってるの?
傘持ってなかったら怒ってるの?
それでも黙ると
見えない月を見上げるフリした

マスク越しに息を吸い込むと
きちんと雨の匂いがした
目の前を黒猫が通り過ぎる
遠くの空で飛行機が音を鳴らす
傘は持っていないんだった

お互い様でしょ?
左手で指差した暗闇にひとつ光る建物
雨宿り出来たって
どうにかなるってわけじゃあない


虫が群がるみたいに明るいコンビニに
いつも以上に人が群れてた
順番抜かしのおばあさん
私はもう怒ったりしない

傘買う?
小さい子どもみたいに、服の裾を掴んで
顔を横に振る私の頭に手を乗せた
大丈夫だよって


丸い雨は丸いままだった
神様の涙はこんなに透明なんだ
濡れた手を繋ぐ
もう涙が止まらないからやめてほしい

だって早すぎるから
何かを始めるには、まだ


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