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記憶の狭間
しおりを挟むあぁ、だめだねぇ
君は心が少し弱っているから
先生がそう言ったから
私はその瞬間から心が弱ったのかもしれない
10年くらい前のあの日
初めて青色の薬をもらった時
きれいな色だと思った
小学校の時理科の授業で習った
ハルジオンって花の名前と少し似てる
けど色は正反対だった
本当にだめだって思った時に飲んでね
でもお守りみたいにもってれば大丈夫だから
と言われた薬は結局一度も飲まなかった
本当にお守りみたいになって
きちんと私をあるべき私でいさせてくれた
眠れない日にってもらった青い薬は
ワンシート一晩で飲んで、馬鹿みたいに吐いた
もうこれ以上何もこの体からは
出てこないんだよって言い聞かせても
身体は震えることをやめてくれなかった
お酒を飲んでる時には絶対飲んだらだめだよ
と先生が言ったから
お酒を飲んでいる時に薬を飲んでみた
気がついたら朝になっていて
遮光カーテンのせいで時間がわからなかったけれど
携帯にはたくさんの人からの
折り返し連絡がきていて
夜中の間に私が電話したらしかった
でも何も覚えてない
本当にさっぱり、記憶まっさら
何にも覚えていなかったし
何でこの人に連絡したのか見当もつかなかった
そのことは先生には言えなくて
その日のことは忘れることにした
もう二度とお酒と薬は一緒に飲まないって決めて
私はその病院に行くのをやめた
お守りがわりにしてた薬は
化粧ポーチに入れていたから
半年もすれば汚れて使えなくなった
汚れたお守りは効力を失って
私の腕にどんどん傷が増えていった
その傷は小さくて浅かったのに
またいつもみたいに記憶をなくした夜
私はきっともう自分でいたくなかったんだと思う
朝起きたらベッドが血だらけになっていて
腕には血だらけのタオルが巻かれていた
タオルを巻くだけまだマシだと思った
生きたいって思っていたから
きっとタオルを巻いたんでしょうって
あの日からもう何年も経つ
私は世間に飲まれていって
病院は何回も転々としたけれど
初めていった病院の先生の言葉が
忘れられない
あぁ、だめだねぇ
君は少し心が弱っているから
どんな言い訳にもなる
どんな慰めも効かなくなった
私は心が弱っているから
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