しゃぼん玉

をかや れいと

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通話ボタンと震える手

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いつもと何も変わらない態度で
本当に気がつかなかった

いつもどうりにご飯を食べて
テレビを見て
お風呂に入る素振りして
準備しだしたくらいから怪しいなって

お気に入りの帽子
お気に入りのシャツ
お気に入りのジーンズ

あぁ、それだとバカでもわかっちゃうよ
そっか、女の人と遊びに行くんだ

私があげたネックレスぶら下げて
私が知らない女の人と

見送る時は自然な笑顔で
この数年で身につけた技術を引っ提げて
これでもかと穏やかなふりをして
ちょっといってくるって彼を見送った


だからまさか
ずっと帰らないと思ってなくて
夜中ぐらいには戻るのかなぁって
こっそり待ってたのに

1日経てど、
バイトに行って帰ってきても
戻ってきた気配すらないから

又彼の家で何日か過ごして
1人きりの夜は布団がしんと冷たいのね

3日経った朝
もう耐えられなくなって
携帯持つ手も震えてた
なんなら私の顔もぐっしゃりしてて
鼻水が涙がわかんないもの
いっぱい顔に引っ付けたまま家を出たよ

彼の番号は嫌でも覚えてる
発信ボタンがなかなか押せない

泣いているのかなんなのか
もうわかんない顔で
自分のプライドだけで指を止めた

ここでかけたら負けだ
涙を拭って顔に当たる風がいやに暖かい
あぁかけちゃだめだし
泣いちゃだめだ

いつも通りにしないと

震える手、携帯が鳴っていた
彼からの着信
私は思わずボタンを押して

ずっと息してなかった
やっと息が吐けてそれだけでまた泣けた

おはよう
そのいつも通りの声に
私の神経が全てつながっていくんだよ

ピンと背を正して
胸を張って
涙を拭って歩き出す

世話がやけてしまう
いくらなんでも、と何度も思う

苛立ちを奥歯でかみしめて
見送った時の彼を思い出す

おはよう、のその一言に
全身が震える
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