33 / 149
八月の太陽
しおりを挟むちょろちょろと水の音
地面はこんなに熱いのに
水の中に手を入れると気持ちいい
ひんやりと身体を一部冷やす
八月の太陽
ギラギラしてる、蝉の声
草木の間を風が走り回る
夏が好き、私は
たまらない太陽が眩しいのが良い
逃げろと人の声がする
屈めとあなたが叫ぶ
聞き慣れた警報音が鳴る
耳を反復する
この音はきっとずっと忘れない
死んでも残る
私の耳に染み付いている
雲の影、航空機のかたち
こんな風にいろんなことを
争いで学びたくなかった
これから生まれいく命は
どんな風にして
大切なことを学ぶのだろう
その時、私たちのことは
素晴らしかったこととして
語り継がれるのだろうか
ぼこんぼこんと落ちる塊
目の前でまた人が去く
もう涙も出ない
悲しいことがある度に泣いていたら
私はきっと今頃いない
早くこちらへと軍服を着た人が叫ぶ
もんぺ姿の母がこける
あぁ、もう誰も救えない
こんな世の中は理不尽だと思う
選択肢は一つしかなかった
生き延びることを考えるよりも
死ぬことの方が素晴らしいと
私たちが生まれた国は
どんなに素晴らしい国に
これからなっていくんだろう
火が移る
ぱちぱちと燃え広がっていく
残酷な音ばかり耳が覚えてる
すぐ後ろに爆弾が落ちてきて
気がついたら空を見てた
こんな時にだけ何故
我慢していた涙が溢れでる
満足に水を飲めた日はいつが最後だろう
もう自分の身体の中には
一滴もこぼすような水分なんて
ないと思っていたのに
あなたにも会えない
きっともう誰にも会えない
生まれてこのかた
幸せだと思えた数の方が少なかった
恐怖と、恐怖と、恐怖
それでも素晴らしいらしい
八月の太陽は
こんなに眩しかっただろうか
ギラギラと照らしつける私を
弔ったりしないで
素晴らしいなんて絶対に言わないで
きちんと残酷を思い知って
まだ、まだ生きていたい
私を忘れないで
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。


【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる