幼馴染から離れたい。

αの運命

「あの！伊賀崎先輩、これ読んでください！」





放課後、帰ろうとしたところ、伊賀崎が呼び止められた。


目の前には綺麗な女子が、手紙を手に持っている。






「あの子、一年の八木玲奈やぎれいなじゃん」

「新入生だ」

「狙ってたのに～」

「うわ、可愛くね？」

「伊賀崎くん、受け取っちゃうのかな」





「あの子、Ωらしいよ」





Ω･･･


Ωっていったら、運命の相手か。


見れば絵になるような2人だ。


朔はαだから綺麗なΩと番になるんだ。


朔を見れば受け取る気がないのか、困ったように眉をさげている。


それ手紙告白のだろ。


なんで困ってるんだ？早く受け取れよ。


だってその子Ωなんだろ。





･･･違う。


俺はそう言うことを言いたいんじゃない、


ただ、





「･･･優希？」





名前を呼ばれてハッとする。


気がつけば、何故か、朔の制服の袖を掴んでいた。





「あ、俺･･･先帰る」


「え、優希っ」





視線を感じながらその場を抜け出した。


とにかくあの場に居られなくて、離れたくて。


半ば朔から離れるために走った。










＊＊＊










朔はαだ。


だから、家もお金持ちだし、頭いいし、容姿も整ってるし。


学校では人気者で、Ωにも･･･





Ω･･･





朔αは将来Ωと番になるんだ。


それで、





「俺はβ･･･」





ただの幼馴染。


朔αにとって、俺は平凡な幼馴染βだ。



朔の運命になんてなれやしない。


いやそんなことおこがましすぎる。


俺はβで、それはずっと変わらない。





でも、もし、将来、朔に番ができて結婚して、子供ができたら･･･





俺は平然幼馴染でいられるだろうか。