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回想
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また一つため息をついた
重い、だるい、まるで魂が抜けてしまったような身体を起こす。
懐かしい夢を見た気がする。あの日の夢を。
「もう、中学生かぁ、早いなぁ。」
私達は残された夏休みを少し惜しむようにそんな話をした。
「そうだよね。学校一緒に行こうね」
他愛ない話だけれども私はやっと青春がやって来たみたいで嬉しかった。でも、私と美由の約束は一瞬の夢に過ぎなかった。
いっそ、このまま死んでしまおうか。そうしたらどんなに楽だろうか。ねぇ美由。連れていってよ。
いつも早く来る春姫の元気なキンキンした声で私は、現実に連れ戻された。
うるさい。もう少し待っててよ。いつまでも子どもだな。
「おはよ」私は春姫と美由に挨拶する。でも春姫はそんなこと聞いてないかのように、「社会の予習やってない。」だとか、「数字ヤダなぁ」とかどうでもいい話を永遠とする。
春姫と何か居たくないのに。本当は美由と居たいのに。
ねぇ、美由。美由もそうだよね、ねぇ。
授業が終わり、部活の時間がはじまる。私は正面に飾られた「技を磨き、徳を成す」という剣道の教訓を睨み付けた。なにが技を磨き、だ。
初心者の山田先生がやる気あんのかと私達を怒鳴る。
私は滝のように流れる汗を感じながら、拳を握りしめた。強くなりたい。
誰より、誰よりも、、、っ!
バタリ。
誰かが倒れた音がする。
誰だろう。
あれは、
あれは、そう、きっと、、、
間違えない。美由だ、
そばに駆け寄り、美由が生きているか確認する。私が首を左右に振ると誰かの悲鳴が道場に響いた。
私は思考回路をフル回転させて考える。わからない。だって、それは、あまりにも美しい、一瞬の死だったから。
なぜ?何故私を置いていくの?私も連れていってよ。私を一人にしないで。
「美由ーーーーー..... 」
私は道場の陰からそれを食い入るように見ていた春姫にまだ気付いていない。
後日
美由の葬式があった。同級生が大勢美由の死を惜しんだ。私も制服を着て、参列した。
あれは、春姫か。
大袈裟に鼻をすする春姫。ウザイ。本当は悲しくなんかないはずなのに。馬鹿みたい。
私はじっくり視線で春姫を犯した。
「萌加ちゃん。」蚊の鳴くような声が聞こえた。
私は振り向く。
それは、美由のお母さんだ。美由と同じ小柄な人だ。
「こんなにたくさん来てもらって、美由は幸せ者だわ。」小さく、小さく呟く。目は腫れていた。
「この度は、御愁傷様です、、」
美由のお母さんは何やら鞄を漁り始めた。
「これを、貴方にって美由が」それは、竹刀のキーホルダーだった。
ダサい。
だけれども、また美由との小さな小さな世界に入り込んだみたいで。嬉しかった。
「ありがとうございます、、、、」
どう?春姫、私達は。
まだ大袈裟に泣いている春姫を横目で見た。
続く
重い、だるい、まるで魂が抜けてしまったような身体を起こす。
懐かしい夢を見た気がする。あの日の夢を。
「もう、中学生かぁ、早いなぁ。」
私達は残された夏休みを少し惜しむようにそんな話をした。
「そうだよね。学校一緒に行こうね」
他愛ない話だけれども私はやっと青春がやって来たみたいで嬉しかった。でも、私と美由の約束は一瞬の夢に過ぎなかった。
いっそ、このまま死んでしまおうか。そうしたらどんなに楽だろうか。ねぇ美由。連れていってよ。
いつも早く来る春姫の元気なキンキンした声で私は、現実に連れ戻された。
うるさい。もう少し待っててよ。いつまでも子どもだな。
「おはよ」私は春姫と美由に挨拶する。でも春姫はそんなこと聞いてないかのように、「社会の予習やってない。」だとか、「数字ヤダなぁ」とかどうでもいい話を永遠とする。
春姫と何か居たくないのに。本当は美由と居たいのに。
ねぇ、美由。美由もそうだよね、ねぇ。
授業が終わり、部活の時間がはじまる。私は正面に飾られた「技を磨き、徳を成す」という剣道の教訓を睨み付けた。なにが技を磨き、だ。
初心者の山田先生がやる気あんのかと私達を怒鳴る。
私は滝のように流れる汗を感じながら、拳を握りしめた。強くなりたい。
誰より、誰よりも、、、っ!
バタリ。
誰かが倒れた音がする。
誰だろう。
あれは、
あれは、そう、きっと、、、
間違えない。美由だ、
そばに駆け寄り、美由が生きているか確認する。私が首を左右に振ると誰かの悲鳴が道場に響いた。
私は思考回路をフル回転させて考える。わからない。だって、それは、あまりにも美しい、一瞬の死だったから。
なぜ?何故私を置いていくの?私も連れていってよ。私を一人にしないで。
「美由ーーーーー..... 」
私は道場の陰からそれを食い入るように見ていた春姫にまだ気付いていない。
後日
美由の葬式があった。同級生が大勢美由の死を惜しんだ。私も制服を着て、参列した。
あれは、春姫か。
大袈裟に鼻をすする春姫。ウザイ。本当は悲しくなんかないはずなのに。馬鹿みたい。
私はじっくり視線で春姫を犯した。
「萌加ちゃん。」蚊の鳴くような声が聞こえた。
私は振り向く。
それは、美由のお母さんだ。美由と同じ小柄な人だ。
「こんなにたくさん来てもらって、美由は幸せ者だわ。」小さく、小さく呟く。目は腫れていた。
「この度は、御愁傷様です、、」
美由のお母さんは何やら鞄を漁り始めた。
「これを、貴方にって美由が」それは、竹刀のキーホルダーだった。
ダサい。
だけれども、また美由との小さな小さな世界に入り込んだみたいで。嬉しかった。
「ありがとうございます、、、、」
どう?春姫、私達は。
まだ大袈裟に泣いている春姫を横目で見た。
続く
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