独占欲と言う名の殺人

あげまん

文字の大きさ
上 下
1 / 1

回想

しおりを挟む
また一つため息をついた



重い、だるい、まるで魂が抜けてしまったような身体を起こす。
懐かしい夢を見た気がする。あの日の夢を。
「もう、中学生かぁ、早いなぁ。」
私達は残された夏休みを少し惜しむようにそんな話をした。
「そうだよね。学校一緒に行こうね」
他愛ない話だけれども私はやっと青春がやって来たみたいで嬉しかった。でも、私と美由の約束は一瞬の夢に過ぎなかった。
いっそ、このまま死んでしまおうか。そうしたらどんなに楽だろうか。ねぇ美由。連れていってよ。
いつも早く来る春姫の元気なキンキンした声で私は、現実に連れ戻された。
うるさい。もう少し待っててよ。いつまでも子どもだな。
「おはよ」私は春姫と美由に挨拶する。でも春姫はそんなこと聞いてないかのように、「社会の予習やってない。」だとか、「数字ヤダなぁ」とかどうでもいい話を永遠とする。
春姫と何か居たくないのに。本当は美由と居たいのに。
ねぇ、美由。美由もそうだよね、ねぇ。
授業が終わり、部活の時間がはじまる。私は正面に飾られた「技を磨き、徳を成す」という剣道の教訓を睨み付けた。なにが技を磨き、だ。
初心者の山田先生がやる気あんのかと私達を怒鳴る。
私は滝のように流れる汗を感じながら、拳を握りしめた。強くなりたい。
誰より、誰よりも、、、っ!
バタリ。
誰かが倒れた音がする。
誰だろう。
あれは、
あれは、そう、きっと、、、
間違えない。美由だ、
そばに駆け寄り、美由が生きているか確認する。私が首を左右に振ると誰かの悲鳴が道場に響いた。
私は思考回路をフル回転させて考える。わからない。だって、それは、あまりにも美しい、一瞬の死だったから。
なぜ?何故私を置いていくの?私も連れていってよ。私を一人にしないで。
「美由ーーーーー..... 」
私は道場の陰からそれを食い入るように見ていた春姫にまだ気付いていない。
後日
美由の葬式があった。同級生が大勢美由の死を惜しんだ。私も制服を着て、参列した。
あれは、春姫か。
大袈裟に鼻をすする春姫。ウザイ。本当は悲しくなんかないはずなのに。馬鹿みたい。
私はじっくり視線で春姫を犯した。
「萌加ちゃん。」蚊の鳴くような声が聞こえた。
私は振り向く。
それは、美由のお母さんだ。美由と同じ小柄な人だ。
「こんなにたくさん来てもらって、美由は幸せ者だわ。」小さく、小さく呟く。目は腫れていた。
「この度は、御愁傷様です、、」
美由のお母さんは何やら鞄を漁り始めた。
「これを、貴方にって美由が」それは、竹刀のキーホルダーだった。
ダサい。
だけれども、また美由との小さな小さな世界に入り込んだみたいで。嬉しかった。
「ありがとうございます、、、、」
どう?春姫、私達は。
まだ大袈裟に泣いている春姫を横目で見た。

続く
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...