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0-4『夢』
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場面は変わり煌びやかな王城と庭園が浮かび上がる。
そこでは一人の女の子が花の王冠を造っていた。
「出来た!!ルーのお姫様ティアラ!!」
梳かれ艶が出た金髪が光に反射される。
彼女は横にいる銀髪の少女にニンマリとした笑顔を向ける。
向けられた少女はオドオドし戸惑っているが、
そんな彼女を無視し少女は王冠を無理矢理被せた。
「ルナリアのティアラだから略して【ルナアーラ】!」
被せる際にキラリと胸元のネックレスが照らされて光る。
それは紅く美しく光る宝玉で、
印として『白い角笛』が刻まれていた。
「……わぁ~」
被せられた王冠をまじまじと見つめるルナリアにはにかみ笑う少女。
直後、空の陽が白い雲に隠される。
陰りのある表情でルナリアは金髪の少女に顔を向ける。
自身の身体が微動し、金の装飾に彩られたバングル(大きい腕輪)が音を鳴らす。
紋様として刻まれている『黒い鎌の刃』が鈍い光沢を見せた。
「リファラ様……」
そう言葉を掛けるとリファラが頬を膨らませた。
そんな彼女を見て戸惑うルナリア。
オロオロとしているとリファラに頬を抓られる。
「リーちゃん!!私の事はリーちゃんって呼ぶの!!」
痛みを訴えるがリファラはそのまま力を強くする為に……
「い……いひゃい~……」
次第に涙をいっぱいに目に浮かべるルナリア。
それに気付きリファラは急いで指を離す。
そして『うさぎ柄のハンカチ』でルナリアの涙を拭う。
拭われるが止めどなく涙が溢れてくる。
だが一向にルナリアのすすり泣く声が止まない。
「こんな痛みで泣くなんて……。練習はどうしたのよ?」
「だって、大好きな友達に抓られたんだもん。稽古とは全然違うよ」
呆れた声で問い掛ける質問に答えになっていない答えを呟くルナリア。
「それに……私は嫌われているし」
その答えを聞いたリファラはイライラした様子で髪を毟る。
そして唇を強く噛むと人差し指と中指を立ててルナリアの鼻の穴に勢いよく突っ込む。
仰け反るルナリアだが仰け反った分だけ体重が掛かりさっきより涙目になる。
「また貴女はそんな事を言ってぇええええ!!」
「いだだだだだ!???」
抵抗するがそのまま押し倒される。
反動で指が離れる。
指を鼻から離されたルナリアは咳き込みながらリファラを見ると彼女はその気の強そうな瞳に目一杯の涙を溜め込んでいた。
「私はみんなの言うリファラ様でも、
グリザイユ王家の王女殿下でも無い!」
言いながら両手でルナリアの顔を包む。
震えた身体に呼応し溜め込んだ雫がルナリアの顔や首の宝玉に落ちる。
その様子を見て戸惑うルナリアに気付いたリファラはハンカチで自身の涙を拭い押し倒す体制を離れた。
そして顔を背けながら呟く。
「……ただ、運が良かっただけの人間なの」
「っ」
ルナリアが息を呑んだ頃タイミング良く顔を合わせたリファラは擦って赤くなった瞼を最大に見開いて言った。
「貴女はハクラサマーリーの遺児じゃなくて、
私の侍従のルナリア!」
そう言いルナリアが装備する腕輪を右手首ごと引き寄せ、
自分の胸を掴ませた。
視界には『白の角笛』と『黒い竜の爪』が両隣に映る。
「騎士団見習いの私の大切な友達なの!!」
「リーちゃん……」
ルナリアの手からリファラの鼓動を感じ取る。
瞬間ポタリと空から落ちてきた水滴が2人の髪を濡らす。
次第に王城全体に雨が降り始めるが、
それはリファラが息を吐くほどに強くなっていった。
それに呆気にとられるルナリアの身体を彼女は抱き寄せる。
「だから誓いなさい!どんな事が有っても私の約束を護るって!!恩人である私に対して命で報いると!!」
リファラの発言に目を見開くルナリア。
雨に濡れるほど空気は冷めていき息は白くなる。
豪雨により身体が冷えていく。
そんな中ルナリアは息を呑み瞳孔を開く。
「私は……」
どちらにも傾き得る弱い決意をリファラに誓おうとした時。
(……バリバリバリ!!)
耳を劈く程の雷が響いた。
突然の大きな音に堪らず目を瞑るルナリア。
「……うん。私どうかしてた。こんなんじゃリーちゃんの事を護る騎士になんてなれない」
ゆっくりと目を開けていく。
「私はっ」
再びリファラに誓おうと目を開くと、
(パチリパチリパチリ)
リファラの背後の陰にさながら雨粒で眼を洗うかのように瞬きをする頭ぐらいの大きさの瞳のような何かが此方を見ていた。
いきなりの事に事態を呑み込めないルナリア。
「キシシシシ!!」
動像(ゴーレム)を思わせる硬質な嗤い声は雨の音に混じり合いルナリアの鼓膜を震わせた。
そこでは一人の女の子が花の王冠を造っていた。
「出来た!!ルーのお姫様ティアラ!!」
梳かれ艶が出た金髪が光に反射される。
彼女は横にいる銀髪の少女にニンマリとした笑顔を向ける。
向けられた少女はオドオドし戸惑っているが、
そんな彼女を無視し少女は王冠を無理矢理被せた。
「ルナリアのティアラだから略して【ルナアーラ】!」
被せる際にキラリと胸元のネックレスが照らされて光る。
それは紅く美しく光る宝玉で、
印として『白い角笛』が刻まれていた。
「……わぁ~」
被せられた王冠をまじまじと見つめるルナリアにはにかみ笑う少女。
直後、空の陽が白い雲に隠される。
陰りのある表情でルナリアは金髪の少女に顔を向ける。
自身の身体が微動し、金の装飾に彩られたバングル(大きい腕輪)が音を鳴らす。
紋様として刻まれている『黒い鎌の刃』が鈍い光沢を見せた。
「リファラ様……」
そう言葉を掛けるとリファラが頬を膨らませた。
そんな彼女を見て戸惑うルナリア。
オロオロとしているとリファラに頬を抓られる。
「リーちゃん!!私の事はリーちゃんって呼ぶの!!」
痛みを訴えるがリファラはそのまま力を強くする為に……
「い……いひゃい~……」
次第に涙をいっぱいに目に浮かべるルナリア。
それに気付きリファラは急いで指を離す。
そして『うさぎ柄のハンカチ』でルナリアの涙を拭う。
拭われるが止めどなく涙が溢れてくる。
だが一向にルナリアのすすり泣く声が止まない。
「こんな痛みで泣くなんて……。練習はどうしたのよ?」
「だって、大好きな友達に抓られたんだもん。稽古とは全然違うよ」
呆れた声で問い掛ける質問に答えになっていない答えを呟くルナリア。
「それに……私は嫌われているし」
その答えを聞いたリファラはイライラした様子で髪を毟る。
そして唇を強く噛むと人差し指と中指を立ててルナリアの鼻の穴に勢いよく突っ込む。
仰け反るルナリアだが仰け反った分だけ体重が掛かりさっきより涙目になる。
「また貴女はそんな事を言ってぇええええ!!」
「いだだだだだ!???」
抵抗するがそのまま押し倒される。
反動で指が離れる。
指を鼻から離されたルナリアは咳き込みながらリファラを見ると彼女はその気の強そうな瞳に目一杯の涙を溜め込んでいた。
「私はみんなの言うリファラ様でも、
グリザイユ王家の王女殿下でも無い!」
言いながら両手でルナリアの顔を包む。
震えた身体に呼応し溜め込んだ雫がルナリアの顔や首の宝玉に落ちる。
その様子を見て戸惑うルナリアに気付いたリファラはハンカチで自身の涙を拭い押し倒す体制を離れた。
そして顔を背けながら呟く。
「……ただ、運が良かっただけの人間なの」
「っ」
ルナリアが息を呑んだ頃タイミング良く顔を合わせたリファラは擦って赤くなった瞼を最大に見開いて言った。
「貴女はハクラサマーリーの遺児じゃなくて、
私の侍従のルナリア!」
そう言いルナリアが装備する腕輪を右手首ごと引き寄せ、
自分の胸を掴ませた。
視界には『白の角笛』と『黒い竜の爪』が両隣に映る。
「騎士団見習いの私の大切な友達なの!!」
「リーちゃん……」
ルナリアの手からリファラの鼓動を感じ取る。
瞬間ポタリと空から落ちてきた水滴が2人の髪を濡らす。
次第に王城全体に雨が降り始めるが、
それはリファラが息を吐くほどに強くなっていった。
それに呆気にとられるルナリアの身体を彼女は抱き寄せる。
「だから誓いなさい!どんな事が有っても私の約束を護るって!!恩人である私に対して命で報いると!!」
リファラの発言に目を見開くルナリア。
雨に濡れるほど空気は冷めていき息は白くなる。
豪雨により身体が冷えていく。
そんな中ルナリアは息を呑み瞳孔を開く。
「私は……」
どちらにも傾き得る弱い決意をリファラに誓おうとした時。
(……バリバリバリ!!)
耳を劈く程の雷が響いた。
突然の大きな音に堪らず目を瞑るルナリア。
「……うん。私どうかしてた。こんなんじゃリーちゃんの事を護る騎士になんてなれない」
ゆっくりと目を開けていく。
「私はっ」
再びリファラに誓おうと目を開くと、
(パチリパチリパチリ)
リファラの背後の陰にさながら雨粒で眼を洗うかのように瞬きをする頭ぐらいの大きさの瞳のような何かが此方を見ていた。
いきなりの事に事態を呑み込めないルナリア。
「キシシシシ!!」
動像(ゴーレム)を思わせる硬質な嗤い声は雨の音に混じり合いルナリアの鼓膜を震わせた。
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