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8.準備できてますよ
しおりを挟む廊下に出て話をしようとしているエリスさんの腕を軽くタップして身振り手振りで"寝室を使ってください"と伝える。
仕事柄まわりに聞かれずに話したいこともあるかなと。
本物の紳士なエリスさんなら部屋に入れても大丈夫だし。
ときどきエセ紳士がいるのよねぇ。女性陣にはそのことを声を大にして伝えたい。マジ気を付けて。
もし万が一なことがあったとしてもまだ夕方だし従業員さんがその辺にいるでしょ。
寝室に入ることに躊躇したエリスさんに小声で『さっきチェックインしたばかりでまだ未使用なので』と伝えると申し訳なさそうに頭を下げて入っていった。
遠慮しつつも入っていったことを考えるとやっぱり関係者以外にはあまり聞かれたくない話みたいね。
そうそう。このお部屋小さいながらダイニングスペースと寝室があるのよ。
しかもトイレとお風呂も別々で1泊5000円。
ギルド直営=公営ってことなんだろうけど破格のお値段だよね~。
「ユミちゃん、もう少しここ借りてもいいかな?」
夕ごはんの準備をしていた手をとめて振り返ると寝室のドアからエリスさんがひょっこり顔を出している。
なんか可愛い絵面だな。
「どうぞー。お気になさらず。私は今のとこ寝室には用事ないので。」
「ありがとう。助かるよ。」
にっこり微笑んでまた寝室のドアを閉じるエリスさん。
ここなら安心して仕事の話ができると判断したらしい。
ドアを閉めちゃえば隣の部屋に小さな話し声が漏れることもないし、私は調理中だからさっきみたいに話しかけられない限り気付かないし。
なんといっても異世界人ですから。
この国の重要な話を聞いてもさっぱりわかりません。
ま、エリスさんはそんなこと全然知らないけどさ。
まだ時間かかりそうな雰囲気だったな~。
そして私は夕ごはんの支度中。
うん。エリスさんの分も作らないとな状況だよね。
もしかしたら規則とかで禁止されてるかもしれないけど。
そしたら残りは明日食べればいいし。
男の人、しかも体が資本の騎士さまにいくら具沢山でグリルチキン入りとはいえサラダとパン・・。
ないな。
よし!ポテトグラタンと林檎のコンポートも追加で作ろう!
野菜ばっかりなのは我慢してもらうしかない。
それから30分後。
「長々とごめんね。おかげさまで一つ仕事が片付いた・・・え?もう夕御飯作っちゃったの?」
寝室から出てきたエリスさんがそのまま固まっている。
なぜそんなに驚く?
コンロ2つ&オーブンをフル活用すればこんなものじゃない?
まだ林檎のコンポートは出来上がってないし。
「良かったらエリスさんも食べてってください。たくさん作っちゃったので。」
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