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19.失敗だけど正解

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あたしがお握りひとつとアップルパイ1個を食べてる間に。残りのお握りとおかず達が消えた。

アップルパイも欠片さえ残っていない。

つまりお弁当完食。

青銀色の獣人さんは甘い物もイケる口らしい。



「はい、どーぞ。」



「・・ありがと。」



なんの躊躇もなく差し出したハーブティーを受取ってゴクゴク飲む獣人さん。

嬉しいけど謎だ。

人間の作ったものを怖いと思わないのかな?

そう思われても仕方ないというか当然な歴史背景があるのに。



「・・気にならないの?」



「?」



首を傾げる獣人さんカワイイ・・じゃなくて。



「あたし・・人間が作ったものなのにイヤじゃないの?」



「・・・キミが怯えてなかったから。敵意も殺意もない。哀れみも。・・優しい目で人間に見つめられたの初めて。」



ええ。出会えたことに120%喜びしかないです。

殺意だなんて抱くわけがありません。



「この世界の生まれじゃないからね~。」



偏見なんてこれっぽっちもないわけですよ。



「・・・そうなんだ。住んでた世界が違うんだ。」



うんうんと頷く獣人さんを見てハタと気付く。



・・・・・あたしいま・・口に出してた??


・・・・・・・・・・・や、やっちまった~~!!!



あわあわ慌てるあたしを不思議そうに見ている獣人さん。

何言ってんだコイツ??的な雰囲気は微塵もなく。純粋にどうしたの?って感じ。



・・・・・ハァ。なんかもういいや。

一度口にしちゃったことは戻せないもんね。

なんとなくだけどこの獣人さん口堅そうだし。


それに正直スッキリしちゃった。

誰にも言えない誰も知らないってけっこうキツかったのよ。



「みょ~に納得してるけど・・なに言っちゃってんのコイツ??って思わないの?」



「うん。この世界の人間にキミみたいな人はいないから。偏見や嫌悪がない人もいるけど普通に接してくれる人はいない。」



そう言って獣人さんは少し俯く。



「・・ご飯とっても美味しかった。手作りのちゃんとしたもの久しぶりに食べた。」



顔を上げてあたしを見て。ふわっと笑った獣人さんに胸が締め付けられる。



「い、いつも何食べてるの??」



「森で暮らしてるから。狩りをしたり採取をしたり。」



果物をそのまま食べるとか魚や野生動物の肉を焼いて食べるとかってことよね。

ちゃんと野菜も食べてるのかしら?

栄養的には問題ないのかな?

くっ・・。いろんなもの作っていっぱい食べさせてあげたい!!


今しがたやらかしてしまった大失敗の事などどこへやら。

あたしの頭の中は獣人さんの食生活のことでいっぱいに。


なので約束をしてもらいました。

ギルドに来たときは、昼は勤務先のお店、夜とお店の定休日の光の日(こちらの世界の1週間は月・火・水・樹・光・大地・風の7日間)は滞在先の暁の空に寄るようにって。

否は言わせない勢いでね。うふ。



「あ。まだ自己紹介してなかったね。ユミ・シトー。ユミって呼んで。」



「シェイ。」



手を差しだすとフワリと優しく握ってくれて。

それがとても嬉しかった。



「よろしくね!シェイ。」




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