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6 貴族の務め
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『風よ、刃となれ!』
周囲を漂う風が、まるで意志をもったかのように目の前の敵へと斬りかかり。
狼のような魔物が二体、地に伏した。
「ネイギス様! ありがとうございます!」
「助かった……」
「怪我はなくって?」
この国における貴族とは、魔力の強い血筋。
領地や治める場所で民から税を徴収する代わりに、治世と脅威を払う義務を担わなければならない。
「はい! ……でもまさか、ネイギス様が来て下さるとは」
「ちょうど手が空いていたものですから」
たまたま用事があり外出していると、馬車の中より街中の騒がしい音が聞こえた。
『郊外で魔物が出た!』というので、その場で対処に向かうと伝え、市民には国軍への連絡だけ依頼した。
畑仕事中に出くわした郊外に住む市民は、魔力が乏しいながらも果敢に魔物に挑んでいた。
彼らを笑顔で見送り、待機させていた馬車へと戻る。
(エンディング後でも、世界から魔物が消える訳ではないのね……?)
原作でのラスボスーー、最大の敵というのは隣国にある魔族の国。
そこの皇帝だ。
物語の中盤で、国同士の争いに発展する。
この世で生まれながらに持てる魔力は、火・水・風・土が基本となり。
百年に一人の割合で、光の属性が生まれるという。
そして、この世で闇の属性を持てるのは魔物と魔族。
元々魔物は理由なく人を襲うものとして描かれ、魔族との直接の関係は言及されていない。
ラスボス戦ではヒロインが光の究極魔法を発動して、世界が光でくまなく照らされた。
そうしてラスボスは闇の力を失い、このエレデア王国が勝利する。
しかし、魔物はいる。
(やはり魔族と魔物は別物なのかしら)
勝利後はすぐエンディングなので、魔物との戦闘シーンはなく、考察勢でよく意見が分かれたものだ。
(もしくは、隠しルートで裏話が聞けるとか?)
王道ルートは確かに全てクリアした。
だが、解放までの条件が鬼畜設定の裏ルートもあるらしい。
まずはパッケージキャラの全イベント、全スチル解放が先決だったため、そのルートは未プレイだ。
「ーーネイギス!」
「っ!?」
ぼんやりと考えていると、いつの間にか帰宅していた。
そして、そこには城へと出仕しているはずの旦那様ことメーアスが居た。
「な、なんで」
「良かった……、無事だね?」
おかしい。
メーアスがこんなに心配を露わにするのは、ライエンに対してだけだ。
ヒロインにすら、好感度が最大付近になるまではデレない、手の内を見せないキャラだ。
「え、ええ。怪我はありません」
恐らく軍への通報で魔物の討伐に私が出向くと聞いたメーアスが、仕事の途中で抜けてきたのだろう。
これほどまでに、愛されているとは。
(正直、予想外)
ライエンへの想いと、ヒロインへの想い。
それぞれを同時期に失った者同士が結ばれたということは、なんとなく分かる。
だがそれだけでこんなに愛されるものだろうか?
ネイギスとしての、大事な何かを忘れている気がする。
周囲を漂う風が、まるで意志をもったかのように目の前の敵へと斬りかかり。
狼のような魔物が二体、地に伏した。
「ネイギス様! ありがとうございます!」
「助かった……」
「怪我はなくって?」
この国における貴族とは、魔力の強い血筋。
領地や治める場所で民から税を徴収する代わりに、治世と脅威を払う義務を担わなければならない。
「はい! ……でもまさか、ネイギス様が来て下さるとは」
「ちょうど手が空いていたものですから」
たまたま用事があり外出していると、馬車の中より街中の騒がしい音が聞こえた。
『郊外で魔物が出た!』というので、その場で対処に向かうと伝え、市民には国軍への連絡だけ依頼した。
畑仕事中に出くわした郊外に住む市民は、魔力が乏しいながらも果敢に魔物に挑んでいた。
彼らを笑顔で見送り、待機させていた馬車へと戻る。
(エンディング後でも、世界から魔物が消える訳ではないのね……?)
原作でのラスボスーー、最大の敵というのは隣国にある魔族の国。
そこの皇帝だ。
物語の中盤で、国同士の争いに発展する。
この世で生まれながらに持てる魔力は、火・水・風・土が基本となり。
百年に一人の割合で、光の属性が生まれるという。
そして、この世で闇の属性を持てるのは魔物と魔族。
元々魔物は理由なく人を襲うものとして描かれ、魔族との直接の関係は言及されていない。
ラスボス戦ではヒロインが光の究極魔法を発動して、世界が光でくまなく照らされた。
そうしてラスボスは闇の力を失い、このエレデア王国が勝利する。
しかし、魔物はいる。
(やはり魔族と魔物は別物なのかしら)
勝利後はすぐエンディングなので、魔物との戦闘シーンはなく、考察勢でよく意見が分かれたものだ。
(もしくは、隠しルートで裏話が聞けるとか?)
王道ルートは確かに全てクリアした。
だが、解放までの条件が鬼畜設定の裏ルートもあるらしい。
まずはパッケージキャラの全イベント、全スチル解放が先決だったため、そのルートは未プレイだ。
「ーーネイギス!」
「っ!?」
ぼんやりと考えていると、いつの間にか帰宅していた。
そして、そこには城へと出仕しているはずの旦那様ことメーアスが居た。
「な、なんで」
「良かった……、無事だね?」
おかしい。
メーアスがこんなに心配を露わにするのは、ライエンに対してだけだ。
ヒロインにすら、好感度が最大付近になるまではデレない、手の内を見せないキャラだ。
「え、ええ。怪我はありません」
恐らく軍への通報で魔物の討伐に私が出向くと聞いたメーアスが、仕事の途中で抜けてきたのだろう。
これほどまでに、愛されているとは。
(正直、予想外)
ライエンへの想いと、ヒロインへの想い。
それぞれを同時期に失った者同士が結ばれたということは、なんとなく分かる。
だがそれだけでこんなに愛されるものだろうか?
ネイギスとしての、大事な何かを忘れている気がする。
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