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5 守るべきもの

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「なるほど、ね」

 メーアスが居ないことを良いことに、約束のない来訪者が数名来た。
 単純に結婚式にでれなかったから挨拶にきたという者や、結婚祝いを持ってきたついでに雑談がしたいような者達であったが。
 
 しかし、共通するのは皆、だった者だ。

 ライエンルートを隅々までやったからこそ分かる。

(ライエンの女好きは、愛情に飢えた心の裏返し……)

 第一王子だったライエン。
 しかし、彼の母親である当時の王妃は産後の体調が優れず亡くなり。
 現皇后は後妻である第二王子の生母だ。

 それ故、幼い頃から誰に甘えればいいか分からず。
 王としての未来を見越し、勉学や剣術、魔法の訓練に励むも周囲は生まれたばかりの第二王子を可愛がり。

 かと思えば第二王子を王にしたい皇后の手により、側近や重役の取り込みが行われ。
 誰も、ライエン自身をみる者は居なくなった。

 かろうじて周りに居るのは、『第一王子』『将来の王』という肩書。
 それに群がるだけの者。 

 次第に『王になる』という生きる目標さえ見失った彼は、第二王子に王位を明け渡しても良いと考え、自堕落な生活におちていった。

(ただ、第二王子は魔力が強くないのよねぇ)

 この国は魔力の強さが地位の高さを表している。
 いわゆる貴族と呼ばれる者たちは、大多数が強大な魔力の血脈なため、魔力の強い者同士で婚姻する。

 しかし、後妻であった第二王子の母は名家の出身ではなかった。
 そのため、先王は第二王子に王位を譲ろうとはしなかった。

(確かそれでライエンルートで小競り合いが起きるんだっけ……)

 表面だけでは見えないキャラの、その深淵を覗いた時に私はライエンを好きになった。

 そして、そんなライエンのことをずっと見てきたメーアス。
 彼は文字通り親友であり、戦友でもある。

 荒んだライエンの心を支えたのはヒロインだけではなかったのだ。

「そしてライエンが王となった今、かつての政敵はいかにして取り入ろうかと探っている……と」

 直接ライエンに取り入る訳にもいかないだろうから、まずは周りを攻めてみようって?
 はっ。ほんと、調子が良いのね。

「しかし残念、あなたたちの顔はみんなライエンルートで見てるのよ」

 先程まで談笑していた応接間。
 その窓から去りゆく馬車を眺める。

 ヒロインやライエン、メーアスたちが守ってくれたこのエンディング後の世界。
 だったら、彼らが幸せにならなくてどうする。

 大半は分かりやすい者だったが、中にはこちらに探りを入れるようなタイプの人間もいた。
 あわよくば、失脚させようって?

 冗談じゃない!

 私はもちろんライエン推しを守りたい。
 
 そしてそれは、彼の側近であるメーアスを守ることにも繋がるのだ。


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