異世界弓師~作るおっさんと、射るエルフ~

蒼乃ロゼ

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異世界と弓作り

五十二話 精霊の力

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「──ミラウッド!!」

 長老たちの要請により、守衛のエルフらと森にやってきた。
 一度炎が森に燃え広がると大変なことになる。
 俺たちは唯一目覚めている水の精霊である、泉の精霊に力を貸してほしいと頼み、一緒に現場へ急行した。
 そこには大きなトカゲのような生物がミラウッドたちと対峙していた。

「なっ、なんだ!? あれが、……魔物!?」

 初めて遭遇した魔物。しかも、相当強そうだ。
 俺は精霊たちに事前に言われていたように、あまり前に出過ぎないよう注意した。

『んだぁ、ありゃ? 図体デケー』
「ちょっと、風のお方! そんなこと言ってる場合ですの!?」
『チッ、うるせーなぁ』
「セロー……頼めるか?」
『やりゃーイイんだろ~。──おい! そこの人間とエルフども! 巻き込まれないように気ぃつけなぁ!』
「「!」」

 セローが合図すると、ミラウッドと一緒にいた男女……恐らく冒険者の二人。それから一緒に来た守衛のエルフたちが後ずさる。

『この姿じゃぁ、ちと制御しづらいか……』

 セローはぶつぶつと何かを言いつつ、風をまとっていく。

「──ったく。よりによって木に囲まれた場所とは」
「人型……?」

 纏った風が名残惜しそうに離れると、セローは以前出会った時の姿となっていた。

「じゃ、さっさとやるか」
『!』
「おい、寝ぼすけ」
「うるさいですわね! やればいいんでしょう、ええ。そうします!」

 セローに指示されたルナリアは、巨大なトカゲを絡めとるように地面に生えた草を成長させ、その巨体を逃げないようにさせた。

「ま、これもたまたまオレがここに居たのが運の尽き……ってコトで」

 セローは右手に風を集中させる。
 次第に強くなる風は、俺たちの間をも駆け回り小さな竜巻のようにセローを中心として大きくなる。

「じゃあな」
『~!?』

 右手を魔物にかざすと、それまで蓄えた風の力が一気に解放されたように魔物へと放たれた。竜巻を凝縮したかのような魔法の弾だ。それが到達したら自分がどうなるかよく分かるのだろう。
 魔物は恐れおののき、必死に逃げ出そうと試みる。

「ちょ、ちょっとぉ!」

 どうなるか予想したルナリアは、魔物が吹き飛ぶと思われる方向の木々の枝を伸ばし簡易的なネットを作る。

「コーヤ、オレの後ろに」
「お、おう」

 言われるがまま避難すれば、案の定風の力によって魔物が後方にぶっ飛んだ!
 その衝撃は周囲にとんでもない風圧をもたらし、冒険者やエルフの守衛らが必死に地面に伏せて耐えている。
 不思議なことにセローの後ろにいる俺はなんともなかった。

「ナイスキャッチ」
「もぉ!! 風のお方ったら、ほんっとーーーーに野蛮ですのね!」

 衝撃のわりには木々を荒らす音も聞こえず、魔物はすぐ側の枝のネットにキャッチされていた。

「……あ! そうだ、急がないと……!」

 魔物に気を取られ忘れていたが、ここへは消火活動に来たことを思い出した。

「泉の精霊、すまないが力を貸してほしい」
『!』

 俺の願いに「任せろ」と言わんばかりに頷いた泉の精霊は、周辺の小川から呼び寄せた水を雨のように降らせて鎮火してくれた。

「ありがとう」
『♪』

 役目を終えた泉の精霊は俺の肩に座って一息ついた。

「おい、そこはオレの席だぞ」
「いつの間に?」
「──コーヤ!」
「あ、ミラウッド……!」

 俺は危ないからとエルフの守衛たちが魔物を調べに行ってくれた。
 彼らと入れ替わりにミラウッドが向かってくる。

「怪我は……?」
「大丈夫大丈夫、ちょっと怖かったけど三人がいるし」

 俺は精霊三人を見回す。

「よかった。……でも、なぜここに?」
「いやいや、ミラウッドこそ。俺は村の人に泉の精霊の力を借りて、消火活動を手伝ってくれって言われてさ」
「なるほど、泉の精霊様か。……皆さま、お力添え感謝いたします」
「おー」
「困った時はお互い様ですわ、エルフのお方」
『♪』
「でも、魔物がいたのは予想外だったな」

 ミラウッドの後方に目をやると、魔物についてエルフの守衛と冒険者たちが何やら話し込んでいる。

「精霊様がいない森は、外を縄張りにする魔物にとって都合がいいのかもしれないな……。長老方と何らかの対策を立てねばならない」

 自分も危険な目に遭ったというのに、さっそく村の安全について考え出したミラウッド。
 やっぱり冷静で真面目だな……すごい。

「……? あれ」
「ん?」

 ふと、ミラウッドに対して違和感を覚えた。
 俺より背が高いミラウッドと話すときはやや目線を上げるのだが……。
 その時に視界にちらつくはずの何かが無い。

「……? ……あ!! 弓! 弓が、ない?」

 俺が幾度となく興味を持った、エルフたちの弓。それが背中に無い。
 手に持っている様子もなければ、周辺にも落ちていない。
 ついでにいえば、腰元の剣も鞘のみだ。

 もっと他に気になることはあるのだろうが、弓師としてやはりそこが一番に目についた。

「弓か。実は──」

 ミラウッドは先ほどまであった、ヘルリザードというらしい魔物との激闘の様子を教えてくれた。

「そうだったのか……。ミラウッドに怪我がなくてよかった」
「ああ、ありがとう。剣は外で買うとして、弓はウィンハックにまた頼もうと思う」
「あ、そのことなんだけどさ……」
「どうした?」
「え~っと、落ち着いてからでいいから、話したいことがあって」
「? もちろんだ」

 ウィンハックに言われて気付いたこと。決心したこと。
 それらをミラウッドに打ち明けようと思ったが、ひとまず状況が落ち着いてからにしよう。

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