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弓師とエルフ
二十七話 プランツバードの蒸し焼きと森のスープ①
しおりを挟む「今夜はプランツバードの肉を用意した」
「おおお」
夕方になり、さっそく調理をしに来てくれたミラウッド。
プランツバードというのは、なんでも鳥の姿をした魔物で草食。
群れる特徴があるので、一か所のエリアに住み着くとそこの薬草なんかがすぐに無くなってしまう。
定期的に罠や狩猟で数を減らし追い立て、森の中の住処をぐるぐる移動させるそうだ。
「ハーブも食べるからな。臭みがまったくないんだ」
「たしかに……!」
綺麗なピンク色……というよりは、どこか緑掛かったようにも見えるプランツバードの肉。
少し近づいて匂いを嗅いでみるが、たしかに臭みがまったくない。
もしやこの間食べた鶏肉はこれだったのか?
一緒に鳥の好むバードリーフとやらもあったし、きっとそうだ。
「セロー様、ルナリア様。野菜のカットをお願いできますか?」
『おうよ』
『お任せですわ。ええ、お任せくださいな!』
競い合うように二人が野菜を取り合う。
「どんな風に食べるんだ?」
「蒸し焼きにしてソースを掛けようと思う」
「おおお……絶対おいしいやつだ」
ハーブがお好みのプランツバードには脂身も少ないので、肉質がしっとり。
表面を焼いたあとに蒸して火を通すとより美味しいそうだ。
「ソースにはピスカを使うのか?」
俺はこの村に来て食べる機会の多い桃色の実を想像した。
「いや。今日は──」
そう言ってテーブルにある袋から取り出したのは、オレンジ色の実。
ピスカよりもやや大きく、ピンポン玉みたいだ。
俺は注意深くそれを視てみる。
【プリメの実:酸味の強い果実。熱が加わると甘さを増す】
「プリメの実?」
「そうだ。これを使う」
「へぇ。どんな風になるか楽しみだ」
自炊歴の浅い俺だと、これをどう使えばいいか見当がつかない。
「そしてもう一つ。明日は水の精霊に拝謁するかもしれない。スープも作ろう」
そう言ってミラウッドは豆とキノコを取り出し、水を入れた鍋を火にかけ準備した。
「キノコ、切ろうか?」
「ああ、ありがとう」
さすがに二品ある今日は手伝いも許された。
俺もキッチンに備えられた包丁を取り出して、手のひらサイズのキノコを食べやすい大きさにカットしていく。
椎茸よりも傘の部分が円錐状に伸びていて、食べ応えがありそうなキノコだ。
鍋の水が沸騰したらキノコと豆を投入。
灰汁を取り除いた方がいいかミラウッドに確認すると、このキノコの灰汁は無害なので気にならないなら残しておいていいと言われた。
どんな味か興味がある。
というか椎茸の灰汁はそんなに気になるほどじゃないしな。
取らずに残しておこう。
スープはとりあえず具材が煮込むまでこれでOK!
次にプランツバードとソース作りだ。
「切ってから焼くのか?」
「本来は焼いてから切り分けたいところだが、フライパンに乗り切らないからな。少し大きめに切って焼こう」
そう言ってミラウッドは丸々一羽分の肉をざっくりと三等分に切る。
今度はフライパンにオリーブオイルのようなサラッとした油を引いて、皮目を下にして焼く。
「わー……!」
「焼くだけでも十分美味しそうではあるがな」
俺は鶏肉のカリッとした皮目の部分が好きだ。
炭火で焼いた焼き鳥の、ちょっと炭の香ばしい香りがするあの部分。
それに近づくかのような肉の焼ける音が、俺の心を躍らせる。
ミラウッドは皮目の面が焼けるとひっくり返して塩を振り、おそらく酒と思われる液体を注いで蓋をした。
もう既に食べたい。
『イイ音がするな』
『今日はなにかしら、ええ。楽しみです!』
音につられて休戦した精霊二人も側にやってきた。
「では、待っている間にソース作りだ」
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