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弓師、異世界へ
五話 不審者からの格上げ
しおりを挟む「──俺が、神の遣いいいいい!!??」
逆に!?
さっきまで、不審者だったのに!?
「現状からはそう考えざるを得ない、というのが長老方の判断だ」
「そ、そんなこと言われても……」
さきほどの謎の文字が見えた件を長老たちに伝えに行き、そして慌てて帰ってきたエルフのお兄さんが言うには、こうだった。
根拠は二つ。
一つは聖樹の枝を折った件。
これはミラウッドさんから聞いたとおりだ。
もし何らかの邪な目的を持ってエルフの村に来たのなら、そもそも聖樹に触ることはできないだろうと。
そしてもう一つは、さきほどの視えた文字。
ミラウッドさんが新たに教えてくれたのは、この世界には魔法が三種類あるらしい。
精霊に力を借りる『精霊魔法』。
エルフたちが得意とする魔法で、おもに炎や風のような自然現象を精霊を介して味方につける魔法のようだ。契約した精霊がいるか、精霊が棲む土地でしか使えないらしい。
次に自分の魔力を道具や呪文、魔法陣なんかを使って具現化する魔法。精霊魔法と区別するために魔術と言うことも。使用するには修行が必要みたいだ。
そしてもう一つが神からの贈り物とも言われる、『神賜魔法』。
漫画やゲームで言うところの『スキル』や『ギフト』みたいなもので、生まれながらに特殊な能力を持つ人のみが使えるらしい。
で、鑑定魔法というのは難しい魔法の部類。
通常は魔道具みたいな媒介が必要らしい。
さっき俺がやったように何の準備もなくできる人は、ほぼ『神賜魔法』を使用しているとみなされる。
そんな人物が、聖樹から落ちてきた……これはもう、エルフの祈りに応えて聖樹が召喚した神の遣いだろう!!
──というのが長老たちの見解らしい。
違います……。
異世界からやってきたただの四十路のおっさんです……。
「な、なんか話が突飛すぎませんかね」
「しかし別の場所で触れた木から、こうして聖樹の元へと飛ばされたわけだろう?」
「ええ、まぁ……」
「実際コーヤが何者かは置いておくとしても、それはきっと意味あることだ」
意味あること……かぁ。
仮に意味あることなのだとしたら。
「どんな、意味だろう」
「それを知るために、長老たちより命が下された」
「!?」
「君に精霊たちが応えるかどうか。それを確かめて来いとのことだ」
「せ、精霊を……!?」
応えてもらえない自信しかない。
しかし、エルフたちに逆らう勇気もない。
ミラウッドさんがテキパキと周りに何かを指示している。
ああ、やっぱり行くしかない……よなぁ。
どうしよう。
「これを」
「?」
さっき慌てて長老たちのところから戻ってきたお兄さんが、俺に何かを手渡す。
「あ、枝……」
「長老たちが、君に持っていて欲しいとのことだ」
「ど、どうも」
そう言われて渡された枝の葉をよくよく見れば、俺が山で触れた謎の木の葉と似ているような気がしてきた。
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