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王都にて

12. 指針

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 次の日、朝食の時間になると鈴音はダイニングへと向かっていた。


「おはよう、エヴァ」


 扉の前で丁度、義父アルビレオと遭遇した。


「義父上、おはようございます」

「ーーーー、一晩で何かあったみたいだね」


 昨夜、決意を新たにした為か己の纏う雰囲気が変わっているのであろう。そんな些細なことすら見抜く彼は、さすがといったところだ。


「今後の事について報告と、少々お伺いしたい事がありまして」

「? そうか、まずは食事にしよう」

「はい」


 粗方食事を終え、鈴音は改めて口を開いた。


「それで、今後についてなのですが」

「うん」

「封印をより強固にする為精霊との契約も目指しながら、己の修行も兼ね……、旅をしようと思っております」

「なるほど」

「それで、まずはエンジェリア国内で契約者の居ない精霊について、情報があれば教えて頂きたいのですが……」


 基本的にエクイタスは世界中どこにでも通用する称号ではあるが、登録は国単位だ。精霊の情報も、契約をすれば国の戦力として扱われる為、国単位で管理している。


「そうだね……。一応国家機密ではあるが、まぁエヴァに教えるのを良しとしない者は居ないだろう。その場合は正式に精霊局に届けてもらうんだけど。一ついいかい?」

「はい?」


 逆に提案を受けるとは思っていなかった為、少し間延びした返事をしてしまった。


「実はエヴァに、隣国のシェルディンに行ってきて欲しいんだ。あちらとは友好国になるから、エクイタスになると挨拶に伺う習わしがあるんだよ」

(シェルディン……!攻略キャラの何人かはそこ出身だったな)

「先にシルフ便で連絡は取っておくから、道中旅をしながらでも行ってもらえないかな」


 風の小妖精、シルフは精霊の中で一番小さく、一番個体数が居るとされ、特別力の強い精霊を有するエクイタス(便宜上、上級エクイタスと言われることもある)の言うことは契約がなくとも協力してくれる。
 それを利用して、各国の連絡を取り合う際には急ぎであればシルフ便と呼ばれる連絡手段を用いる。エクイタスが国ごとに登録する所以の一つだ。
 ヒトの甘い食べ物がお気に入りのシルフにお菓子を一つあげると、文を一つ届けてくれる。
 届け先はエクイタス(届け先は上級でなくとも良い)のみで、相手の魔力を認知して初めてシルフは文を渡すことが出来る。


「えっと……、道中精霊がいらっしゃれば伺ってみたいのですが。シェルディンへの道は急ぎではないのでしょうか」

「大丈夫、習わしというだけで義務ではないから。ただ、友好国である以上ずっと行ってきたことを踏襲しない訳にはいかないからね」

「そういうことでしたら」

「それで、今の所我が国で情報があるのは、水の精霊アクエリアだね」


(アクエリア!原作でも契約していた人魚のような水の精霊ね。エヴァの水魔法の補助をしてくれていたから、契約出来れば助かるわ)


「それで、アクエリア様はどちらに?」

「ウェレイノラのーー」


 アルビレオが言い掛けた時、突如バンッと音が鳴ったと共にカイネギスが室内へ入ってきた。


「義兄様……?」

「どうしたんだい、カイネギス。そんなに慌てて」


 不思議そうな顔で見遣ると、カイネギスは重たい口を開いた。


「魔者(まのもの)が出た」

「「!」」


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