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四十六 それぞれの意志①
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「やあ、リュミネーヴァ嬢」
「あら、メーアス様」
当たり前なのだが、三大公爵家である彼もまた、この宴に招待されていた。
(……ナレドの私兵。今は、置いておこう)
アイゼン公爵殿が私に忠告するということは、自分では動けない。
が、立場上良好とは言えない私にわざわざ言う必要性。
つまり、私に少なからず脅威を排除するように期待を寄せている。
だが、さすがにアイゼン公爵家主催の場で行動は起こさないだろう。
「元気そうだね、騎士団長になにか言われたかと思ったけれど」
「え? いえ、激励して頂いただけですわ」
もしかして、見掛けて心配してくれたのか?
「それなら良かった。……ガーグイルの件も聞いたよ。さすが、リュミネーヴァ嬢だ」
「お褒めいただき、光栄ですわ」
騎士団への情報共有はしていないようだが、ライエン側に情報が届いているのはよかった。
ナレドの私兵の件を聞いた今、早めに魔道具が完成して欲しいところだ。
「私は水と多少風がつかえる程度だからね、相性が悪い魔物だった。……助かりました」
「とんでもないことです」
「ーーところで、ウルムを見掛けませんでしたか?」
「ウルム様?」
そういえば、おそらく主役? の一員なのに、見てないな。
というかライエンも居ない気がする。
「いえ、私は特に……」
「ふむ、屋敷の中だろうか」
「かもしれませんわね」
実家だし、宴の切り盛りでもしているんだろう。
「リュミネーヴァ嬢、……くれぐれも、気を付けて」
「! ……ええ」
それは、貴方もでは? というのはやめておいた。
ライエン側で、かつ魔族とも良好な。
色んな者の思惑が重なり、最も危険と思われるのは確かに自分だからだ。
(騎士団長の様子を見る限り、彼らの意志が一つとは限らない)
目的は同じかもしれないが、そこに至るまでの手段や想い、それらはきっと異なる。
「もしウルムを見掛けましたら、私に教えてください」
「承知いたしましたわ」
去っていくメーアスを見て気付いた。
(メーアスの家……メルゼン公爵家というのは、きっとこうやってこの国を支えてきたのね)
どこにも偏らず、中庸。
複雑な状況の私にも、ウルムにも気を配れる人物。
それは、王としての資質の一つでもあるのではないだろうか。
(こうやってずっと、ライエンを支えてくれたんだわ)
メーアス、ウルムと共に本来彼を支える柱となるはずの私は、もう側に居ることはできない。
その役目は兄がしっかり全うしてくれることだろう。
ならば、せめて私は。
(せめて、ふりかかる火の粉だけでも払えると良いのだけれど)
「あら、メーアス様」
当たり前なのだが、三大公爵家である彼もまた、この宴に招待されていた。
(……ナレドの私兵。今は、置いておこう)
アイゼン公爵殿が私に忠告するということは、自分では動けない。
が、立場上良好とは言えない私にわざわざ言う必要性。
つまり、私に少なからず脅威を排除するように期待を寄せている。
だが、さすがにアイゼン公爵家主催の場で行動は起こさないだろう。
「元気そうだね、騎士団長になにか言われたかと思ったけれど」
「え? いえ、激励して頂いただけですわ」
もしかして、見掛けて心配してくれたのか?
「それなら良かった。……ガーグイルの件も聞いたよ。さすが、リュミネーヴァ嬢だ」
「お褒めいただき、光栄ですわ」
騎士団への情報共有はしていないようだが、ライエン側に情報が届いているのはよかった。
ナレドの私兵の件を聞いた今、早めに魔道具が完成して欲しいところだ。
「私は水と多少風がつかえる程度だからね、相性が悪い魔物だった。……助かりました」
「とんでもないことです」
「ーーところで、ウルムを見掛けませんでしたか?」
「ウルム様?」
そういえば、おそらく主役? の一員なのに、見てないな。
というかライエンも居ない気がする。
「いえ、私は特に……」
「ふむ、屋敷の中だろうか」
「かもしれませんわね」
実家だし、宴の切り盛りでもしているんだろう。
「リュミネーヴァ嬢、……くれぐれも、気を付けて」
「! ……ええ」
それは、貴方もでは? というのはやめておいた。
ライエン側で、かつ魔族とも良好な。
色んな者の思惑が重なり、最も危険と思われるのは確かに自分だからだ。
(騎士団長の様子を見る限り、彼らの意志が一つとは限らない)
目的は同じかもしれないが、そこに至るまでの手段や想い、それらはきっと異なる。
「もしウルムを見掛けましたら、私に教えてください」
「承知いたしましたわ」
去っていくメーアスを見て気付いた。
(メーアスの家……メルゼン公爵家というのは、きっとこうやってこの国を支えてきたのね)
どこにも偏らず、中庸。
複雑な状況の私にも、ウルムにも気を配れる人物。
それは、王としての資質の一つでもあるのではないだろうか。
(こうやってずっと、ライエンを支えてくれたんだわ)
メーアス、ウルムと共に本来彼を支える柱となるはずの私は、もう側に居ることはできない。
その役目は兄がしっかり全うしてくれることだろう。
ならば、せめて私は。
(せめて、ふりかかる火の粉だけでも払えると良いのだけれど)
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