35 / 60
三十四 苦悩する騎士①
しおりを挟む
考えられる可能性は、ふたつ。
(ローゼンの者が魔皇国に行く、つまり魔皇国の戦力が増す)
魔皇国にこれ以上の優位性を与えたくない者のしわざ。
これがまぁ、たぶん第二王子派。
今後どういった手段をえらぶかは不明だが、ナレド公国と手を組み、彼らの独立を手助けして見返りを求めるには私は邪魔であると。
もうひとつ。
(シンシア、か)
魔法学校の教師や、攻略キャラは魔力がたかい。
加えて、シンシアは未熟。
かつ光の魔法での魅了は闇の魔法に比べて効果がうすい。
だが、騎士ならどうだろう。
魔力が微量なため、魔法学校ではなく武術専門の学校へと行く彼らなら。
そのうえ、相手のためになる魅了ならどうだろう。
(打倒魔族のためになると、そう説けば……あるいは)
シンシアは軟禁状態にあるとはいえ、城の世話をする者と接する機会はゼロではないだろう。
(むしろ、最悪を想定すれば、その両方……、手を組んでることも予想される)
魔皇国に力を持たれては困る勢力と、ユールティアスに私が嫁いでは困る人物。
……目的、一致してない?
「はぁ、やだやだ」
「どうされました?」
「なんでもないわ、フレア」
なんの問題もなく追っ手を撒いて、何食わぬ顔で帰宅した。
いつものように着替え、過ごす。
(対人はそんなに経験ないけど、魔物にくらべればなんてことないわ)
それよりも厄介なのは、うしろに控える勢力との腹の探り合い。
人間というのは、そういう意味では厄介だ。
「お兄様は今日も遅いかしら?」
「ええ、おそらくは」
「そう」
なるべく早めに話したいところではあるが、父も不在。
先に話すべきは、ユールだろう。
でも……。
(魔族への差別。当人が気付かない訳がない。……それを私に言わなかったのは)
心配をかけたくない、そのやさしさからだと思う。
こちらから切り込んで良いものか……。
(はぁ)
原作には原作の大変さがあったのだろうが、今は今で人間の思惑が絡んでいる。
当たり前ではあるが、ゲームのように上手くいかないものだ。
◇
今日はユールは休みらしい。
おそらく、私の提案した水魔法を付与する魔道具。
その素材をリクヴィールと検討している。
(私は私で、どんな魔法にするか考えておこう)
水属性に適性がある者だけが使用する訳ではない。
彼らの魔力を期待して発揮する効果ではだめだ。
「ん?」
以前メーアスと話した庭園内の東屋。
そこに、ウルムが一人。ぽつんと座っている。
(どうしたんだろ?)
めずらしい。
メーアスと常に一緒という訳ではないが、その明るく兄貴分なキャラクターでいつも誰かしらと一緒だ。
それが一人、なにか思いつめている。
(うーーん)
正直、放置したい。
原作はもう関係ないといっても、やはり男性と過度に接するのは控えたい。
さらにはシンシアに連なる者だ。
だが、彼は騎士。
今ほしい情報、それを持っているかもしれない。
なにかお悩みがあるのなら、それとなく聞いてみたい。
(待てよ)
騎士? 騎士、だな。
ウルムって、もしかして魔力……高くない?
原作のパラメーターを見たことがないので分からないが。
ってことは。
シンシアの魅了に……耐性が低いのでは?
(……やめておくか)
万が一、の可能性もある。
ユールとすら意見交換をしていない今、危ない橋を渡るのもよくない。
そう、去ろうとした。
「ーーあ、リュミネーヴァ嬢!」
(げ)
(ローゼンの者が魔皇国に行く、つまり魔皇国の戦力が増す)
魔皇国にこれ以上の優位性を与えたくない者のしわざ。
これがまぁ、たぶん第二王子派。
今後どういった手段をえらぶかは不明だが、ナレド公国と手を組み、彼らの独立を手助けして見返りを求めるには私は邪魔であると。
もうひとつ。
(シンシア、か)
魔法学校の教師や、攻略キャラは魔力がたかい。
加えて、シンシアは未熟。
かつ光の魔法での魅了は闇の魔法に比べて効果がうすい。
だが、騎士ならどうだろう。
魔力が微量なため、魔法学校ではなく武術専門の学校へと行く彼らなら。
そのうえ、相手のためになる魅了ならどうだろう。
(打倒魔族のためになると、そう説けば……あるいは)
シンシアは軟禁状態にあるとはいえ、城の世話をする者と接する機会はゼロではないだろう。
(むしろ、最悪を想定すれば、その両方……、手を組んでることも予想される)
魔皇国に力を持たれては困る勢力と、ユールティアスに私が嫁いでは困る人物。
……目的、一致してない?
「はぁ、やだやだ」
「どうされました?」
「なんでもないわ、フレア」
なんの問題もなく追っ手を撒いて、何食わぬ顔で帰宅した。
いつものように着替え、過ごす。
(対人はそんなに経験ないけど、魔物にくらべればなんてことないわ)
それよりも厄介なのは、うしろに控える勢力との腹の探り合い。
人間というのは、そういう意味では厄介だ。
「お兄様は今日も遅いかしら?」
「ええ、おそらくは」
「そう」
なるべく早めに話したいところではあるが、父も不在。
先に話すべきは、ユールだろう。
でも……。
(魔族への差別。当人が気付かない訳がない。……それを私に言わなかったのは)
心配をかけたくない、そのやさしさからだと思う。
こちらから切り込んで良いものか……。
(はぁ)
原作には原作の大変さがあったのだろうが、今は今で人間の思惑が絡んでいる。
当たり前ではあるが、ゲームのように上手くいかないものだ。
◇
今日はユールは休みらしい。
おそらく、私の提案した水魔法を付与する魔道具。
その素材をリクヴィールと検討している。
(私は私で、どんな魔法にするか考えておこう)
水属性に適性がある者だけが使用する訳ではない。
彼らの魔力を期待して発揮する効果ではだめだ。
「ん?」
以前メーアスと話した庭園内の東屋。
そこに、ウルムが一人。ぽつんと座っている。
(どうしたんだろ?)
めずらしい。
メーアスと常に一緒という訳ではないが、その明るく兄貴分なキャラクターでいつも誰かしらと一緒だ。
それが一人、なにか思いつめている。
(うーーん)
正直、放置したい。
原作はもう関係ないといっても、やはり男性と過度に接するのは控えたい。
さらにはシンシアに連なる者だ。
だが、彼は騎士。
今ほしい情報、それを持っているかもしれない。
なにかお悩みがあるのなら、それとなく聞いてみたい。
(待てよ)
騎士? 騎士、だな。
ウルムって、もしかして魔力……高くない?
原作のパラメーターを見たことがないので分からないが。
ってことは。
シンシアの魅了に……耐性が低いのでは?
(……やめておくか)
万が一、の可能性もある。
ユールとすら意見交換をしていない今、危ない橋を渡るのもよくない。
そう、去ろうとした。
「ーーあ、リュミネーヴァ嬢!」
(げ)
11
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる