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二十八 専門家②

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(……ん?)

「ユールさま~」

 数人、関係者が行き交う一階のフロアにて、なにやら遠めから手を振る人物。

「はぁ」

 額に手を当て、なんだかお疲れなユール。
 もしかして。

 その人物は小走りで駆けてきた。

「ほうほう、なるほどなるほど」

(んんん!?)

 萌木色の髪が鮮やかで。
 もみあげの部分だけ長く伸ばした特徴的な髪形。
 そして、魔族お決まりなのか整った顔立ち。

 それだけなら、完璧。
 あ、ユールの部下だな。と分かる。

 だが。

 出会い頭に、まるで実験対象のような観察のされ方。
 前、うしろ、左右。
 あらゆる方向から、私を観察。

 挨拶がどうとか、そういう話じゃない。
 これはもう、あれだろう。

(ーー変人だ!)

 ゲーマーだから、なんとなくわかる。
 マッドサイエンティストとまではいかないが、この手のゲームの専門家とは、ちょっとアレな人なのがお決まりだ。
 こだわりが強く、自分の興味のある分野以外無頓着。
 そのタイプだ!

「……だから会わせたくなかったんだ」
「いやはや……これはこれは」

 なんとなく、ユールのあの気の乗らなさが理解できた。
 恐らく私が同じ立場でもそうだろう。

「……うん! 魔性の方ですね!」
「はいっ!?」

 ど、どういうこと!?
 まさか、この人も転生者ーー!

「お前は、もう少し、言い方を、かんがえろっ」

 なにかがぶつかる音と共に、その人物は「いってえ!」と喚く。

「いやーー、さすが魔のレ・ローゼンの姫君。おいしそ……じゃなかった、素晴らしい魔力ですね!」
「おい」

 またも「いってえ!」と叫ぶ彼は、意外に学習しない。

 あぁ、魔性って。
 魔力が高くて、魔族にとっては吸いたくなるって話?

 なんか……原作と微妙に意味合いちがうの、なんなの。

「はぁ、すまないリュミ。紹介したいのはこの男で間違いないのだが、やめておくか」
「ちょっとちょっと!」
「仲がよろしいんですね」

 ライエンとその側近たちと違い、なんというか……。
 気さく? だ。
 それともこの人、意外とお偉いさんなのか?

「申し遅れました、私は魔皇国にて魔道具を研究しております、リクヴィール・ゾ・フェルノ・セラフィニ。どうぞリクとお呼びください」
「……セラフィニ?」
「父方の親類だ」
「まぁ!」

 やはりというか、魔皇国の重要人物じゃないか!
 原作だと、敵の研究者みたいな立ち位置だろうか?
 中ボス?

 ……それにしてはどこか気迫が足りないけど。

「では、リク様と」
「ええ、どうぞそのように」
「リク、近いぞ」

 ユールの制止が入る。
 ま、まさか魔力吸われるんじゃないでしょうね。

「過保護~」
「うるさいぞ」
「ふふ」

 親類、というよりは。
 どこか兄弟のような感じがする。
 幼少のころからの付き合いなのだろうか。
 二人きりであれば、今以上にくだけた関係かもしれない。

「愛されてますね~」
「ま、魔力が優れているだけですわ!」
「え?」
「え?」
「……」

 いや、さっき自分でもそう言ったでしょ。

「ええと、我らの特性は……?」
「吸魔でしょうか? はい、うかがっておりますわ」
「その意味は?」
「意味……? 闇の魔力を抑えるため、ですわよね?」

 意味、というよりは理由という方がしっくりくるが。

「ユールさま~?」
「うるさい、だまっていろ」
「?」

 まだ他に、隠された仕様があるんですか!?

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