28 / 35
第二十八話 VSオーガ【ウォレス視点】
しおりを挟む「ルリ、あなたは僕の言葉が理解できると考えてよろしいですか?」
『んみみ!』
「っ、そ、そうですか。分かりました。では、僕が奴を引きつけている間──」
このかわ……、モルドの従魔であるルリはどうやら賢い。
水うさぎの知能がそれほど高いとは知らなかったが……、おおかた魔導師モルドに鍛えられたのだろう。
オーガ相手に、力任せでは押し負ける。
だが、ルリが氷魔法を使えるのであれば、僕の剣技も活かしやすいというもの。
「参る」
剣を構え、ニタニタと笑いを浮かべながら迫りくるオーガを見据えた。
「っし!」
先手必勝。
足元に、身体強化のため魔力を集中。
低く踏み込んだ先にはオーガの太い脚。
まずは一閃。脚を狙いにいく。
『グ……?』
「! 硬いな」
刃こぼれしそうなほどに押し返された愛剣は、申し訳なさそうに甲高い声をあげた。
オーガには傷どころか、痛みも伝わっていないのか?
後ろに回り、次いで守りの甘そうな脇腹を掠める。
「手ごたえあり……だが」
脇腹を掠めた筋には、鮮血が浮かび上がった。
それでも大きな傷は与えられない。
『グルゥアアアアアー!!』
痛みは伴ったようで、オーガはその怒りを露わにする。
いいぞ、その調子だ。
もっと僕に怒り狂うといい。
「【我が剣に斬れぬものはなし】」
呼吸を整え、内なる魔力を認識し。足元に集めていた魔力を、今度は刃へと集中させた。
足元から胸、肩から腕、腕から手へと伝い、その延長にあると認識させる。
顔の前に掲げた愛剣は、その輝きを増した。
「どうした、怖気づいたか?」
『!!』
軽く挑発をしてやれば、簡単に乗ってくる。
太い丸太を軽々と操るその腕力には恐れ入る……が。
「当たらなければ、ないにも等しい」
僕の軌道をなぞるように、上から振り下ろし、下から振り上げ。
横から薙ぎ払い、上からたたきつける。
それらを難なく躱し、ある場所へと誘導する。
「────ここだ! ルリ!」
『ぷぅ~~~~!』
村のあちこちで散乱していた水。
飲料水、あるいは農作業用の水瓶が倒れて溢れたそれをルリが水魔法で一か所に集めていた。
『!?』
水音が響く場所に誘導されるとオーガはようやく異変に気付く。
「もう遅い」
僕目掛けて振り下ろした丸太は、水溜まりを割る。
その瞬間にルリは氷魔法を発動させ、脚と丸太を地面に氷で固定させた。
「──はあぁ!」
魔力によって硬度を増した愛剣は、いとも簡単に腕を切り裂いた。
『ガアアアァァ!!??』
「終わりだ」
丸太から手を離し、バランスを崩したオーガの首筋に狙いを定め、
『ガッ──』
「ふん」
刃にまとわりついた鮮血を、軽く振り払った。
『ンミーーー!!』
「っ!?」
オーガが重い音と共に崩れ去ると、ルリが胸元に飛び込んできた。
「ぐっ……!」
なんだ、この生物は……!!
こんな愛らしい従魔、見たことが無い!
『ぷぅぷぅ!』
「? モルド?」
そういえば、あちらはどうなっているだろうか。
「!! あ、あれは──っ」
11
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。


誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる