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第十五話 かわいい?授業風景②

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「モルドせんせー! できました!」「や、やってみましたわ」
「はい、参ります」
『ぷぅぷぅ~♪』

 バーナードが今回用意してくれたのは、淡いピンクの花の苗だ。
 小ぶりで今は小さな蕾の状態。
 話によると、チューリップくらいの大きさまで成長するらしい。

 それを四つ用意してもらったので、植える作業とフローリアには土壌への魔力供給。レイクには水魔法で水やりをお願いした。

「! フローリア様」
「は、はいっ」
「本当に、魔力を与えるというのは初めて……なのですよね?」
「え、えぇ」
「ふむ……」

 おかしい。
 魔法というのは通常、『理解』『想像』、そして同時に『発動』と『創造』のプロセスを踏む。
 体内に巡る魔力を『理解』し、どういった魔法なのかを『想像』し、そして外へと『発動』すると共に『創造』する。
 魔力感知能力は、この『理解』の部分が大きく関わる。

 今回は自分の中にある魔力をそのまま他に与える……つまり、『創造』の部分を省略しているわけだが、その代わりにふつうに魔法を発動するよりも『理解』が必要だ。

 たった数日修行したからと言ってできるものではない。
 というか、魔力の供給のやり方はさっき教えたばかりだ。

「相性がいいのだろう」
『カモなのーでし!』

 俺が云々うなっていると、魔力に詳しい二人が傍まで来た。

「! そうか……。もしかすると、フローリア様は地属性に適性があるのかもしれませんね」
「まぁ! そうなのですね」
「すごいよリア!」
「も、もうっ……レイクさまったら、おおげさですわ……」
「っっっ」

 自分のことのように嬉しそうなレイクと、もじもじと照れだすフローリア。
 
 俺はその破壊力に耐え切れず、片膝をついた。

「「せんせー!?」」
「ご心配なく、持病です」

 いや持病でも心配するだろうよ。
 もうここまできたら、持病ネタがどこまで通じるかやってみよう。

「……と、とにかく。フローリア様には、初めは土魔法や緑魔法を試して頂くのがいいかもしれませんね」
「ええ。そうとわかりましたら、やってみますわ!」
「ぼくはみずまほうですね!」
「はい。まずは適性のある魔法で、発動への段階というものをものにしましょう。
 そうすれば自ずと他の魔法も使えるようになるでしょうから」
「「ハーーイ!」」
『みーー!』

 二人と並んでルリも一緒に手を挙げて返事した。
 あ、あざといな……ッ!?

「他の三つも確認してみますね。
 レイク様、今のうちにルリへ水を与えてあげてください」
「ハイっ!」

 二人とルリは俺の目の届く場所でキャッキャとじゃれ合う。
 ……ここが天国だったか。

「さて。……うん、どれも魔力は安定しているな」

 魔力というのは与えすぎてもよくないものだ。

「──うお、びっくりした」

 花壇を見ていると、いつの間にかゼヤが真後ろに立っていた。

「どうした?」
「……」

 相変わらず口数は少ない。
 なんか、めちゃめちゃ花を見てるな。

「花が珍しいのか?」
「……」

 ジッと立って見つめたまま、動じない。

「屈んで見たらどうだ?」
「……」

 コクリと頷き、言われるがまま俺の横に並んで花を見る。
 ……なんか、すごくシュールな状況だな。
 さきほどゼヤをガン見していた使用人がまた声をあげた気がする。

「そういえば、闇の精霊というのは影に潜んでいるのだったな」

 他の精霊とちがい、人の目に見えないどころか別の空間に潜んでいるということか。
 確かに色んな物に興味を持っても不思議じゃないよな。

「……」

 なおも無言で花を見つめる。
 ときおり別の角度から覗き込んだりする様子は、ちょっと子供みたいだ。

 あ、アレ? そう思うと、なんか……かわ……いい……かも?

 セイレンは人の世も精霊のことも詳しいようだったけど、もしかするとゼヤは人の世についてはあまり知らないのかもしれない。

「気になることがあればいつでも言ってくれ。俺で分かることなら答えるよ」
「……あぁ」

 
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