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55 継承の儀①

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 魔法使いの集落であるリースから馬車で三十分ほど。
 そこに、この場所はある。

「ひさびさだな~」
「自宅に来る前は、ここに居たのか?」
「まぁね。たまにリースにもいたけど」

 レトくんは、やはりというか。
 兄であるダオのことが、相当好きみたいだ。
 ずっとダオの近くにいる。

 そのままテオレムに帰っても失敗の責任を問われると思う。
 ので、ダオ同様うちで保護した。
 同胞の保護は我が務めですからね。

 数日うちのご飯を食べたら、呪いの印はダオ同様うすくなった。
 はじめは驚きっぱなしだったけど、今ではすっかり慣れて「今日の料理はなんだ?」と聞いてくる始末。
 お気に召したようで、なにより。
 名前もハニティと呼んでくれるようになった。
 ブラコンでツンデレ。今日もすべてに感謝、ありがとう。

「ふんっ、さっさと終わらせろ」
「無茶言わないでよ~」

 相変わらずのツン属性強めだけど、しっかり着いてきた。
 お留守番してていいって言ったのに。

「──お待ちしておりました、ハニティ殿」
「げ」

 敷地内は、うちの植物園以上に広い植物の楽園だ。
 お野菜よりかはハーブとか、お花が多いけど。
 香りも素敵だし、見た目もとっても綺麗。

 緑よりもカラフルな、永遠の樹までの道のりを楽しんでいると忘れかけていた存在に遭遇。

「えーーっと、ゼノ? だっけ」
「覚えて頂いて、光栄です」
「ふむ……」

 赤い髪の騎士……というよりは剣士。
 魔法がそんなに得意ではない、ゼノ。

 ダオはといえば、なにやら考え込んでしまった。
 いや、わたし今日魔女の騎士の件ぜんぜん考えてないからね?
 もうちょい後でいいよね!?

「いずれお仕えする貴女の儀式ですからね、もちろん馳せ参じましたよ」
「お、お気遣いなく~」
「……ハニティ、こいつはっていいのか?」
「ダメに決まってるでしょ!?」

 ああもう、レトくんも参戦してめちゃくちゃだよ。
 ダオが魔女の騎士に立候補した件はすでに話していて、魔力を失うことについては若干危惧しているみたい。
 でも、兄大好きレトくんからすれば、兄の願いも叶ってほしいという訳だ。

「……ちっ」
「そちらの方は?」
「あ、えーっと、ダオのおとうとさん」
「なるほど」

 気を悪くしないところは紳士的でありがたい。

「リチアナはいないんですね?」
「? それは、まぁ」

(定期試験の時の様子を見る限り、かなり仲良さそうだったんだよな~)

 それも、勝手にライバル視してるわたしの儀式なのだから、自分も行く! と言っても良さそうだけどねぇ。
 さすがに大魔女を誰よりも尊敬している彼女だから、邪魔はしないと思うけど。

「──ハニティ、いらっしゃい」
「グランローズ様」

 相変わらず、年齢不詳の美魔女こと地の大魔女さま。

「ラヴァースが待っていますよ」
「あ、はい」

 そっか、継承の儀って……ラヴァース様の了承を得るって意味なのか。
 で、たぶん他の大魔女のみなさんもお揃いなのは他の精霊にも認めてもらうってことか。
 き、緊張してきたな。

「あら」
「……なんだ?」
「ふふ。ハニティのこと……よろしくお願いね」
「──! 誰があんなバカ女!」
「はいはい、バカ女でいいから行きますよ~」

 グランローズ様も大人の対応で助かった。
 レトくんは帰ったらローズさんの刑、決定。

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