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16 ミスター何それ、本領発揮

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「なぁ、ハニティ。魔女の騎士って、なんだ?」
「あー」

 さあやって参りました、何それの時間。
 エボニーといつも通り気持ちよく取引を終えて、彼女を見送った。
 ……ら、これだ。

 いや、気になるよね。
 うん、分かる。分かるけど……。
 これに関しては、正直話を聞かせたくない。
 わたしには荷が重すぎる。

「えーっとですねぇ……」
「聞いちゃまずかったか?」
「い、いや。そういうんじゃないんだけど」
「……言いづらい、とか」
「うっ。……まぁ、そうなるかな」
「なら、……無理には聞かないさ」

 ああ、そんな肩を落としてしょんぼりされると胸が痛む。
 違う、ちがうんだ。
 こういうのは、大魔女様を通さないと──。

「…………あれ?」
「? どうかしたか」

 魔女の騎士。
 それは、大魔女が特殊な方法で魔力を奪い、契約をする者。従者。

 大魔女が、責務に心をつぶされないように。
 また、膨大な魔力が暴走した場合、自身を止めれる唯一の者であるように。
 大魔女が役目を終えるその時まで、側に仕え、守る者。

 主が命を落とせば共に果てるが、彼らが命を失ったとしても、大魔女には影響がない。
 それ故、よほどの覚悟や理由がないと騎士の契約は結べない。

 大魔女側もまた、相手を縛ってしまう契約は本来したくない。
 契約を終えれば魔力は返還されるとはいえ、人生の大部分を主と過ごす。

 ふつうに考えれば絶対強者の魔女に、守り役なんて必要ない。
 ……なんでそんな存在が必要かというと。 

「……こう魔力って、有効なの?」
「こう……?」
「あ、いや。こっちの話」

 騎士たちは魔力を奪われるかわりに、魔法の力が及ばない存在になる。
 その力は操ることもでき、抗魔力とも呼ばれる。
 もしも大魔女が、暴走した時。
 その力を、抑えれるように。

 ってことは、だ。
 呪い……消えるのでは?

(いや……、でも。既にある呪いに対しては、どうなんだろう……。未確定なこと言うのはなぁ)

 それに、そもそも呪術の仕組みが、こっちの魔法と違うなら意味ないかもしれない。
 あぁ、誰か分かる人はいませんか。
 なにせ、呪いのことなんて詳しくありませんよ。

「とにかく、わたしも分からないことが多いから。関係がある大魔女に、グランローズ様に直接聞いて?」
「……分かった」

 しぶしぶといった様子。
 申し訳ないけど、大事なことで誤った情報は伝えたくない。


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