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14 忘れかけていた収入源①

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「げ」

 本日も庭で作業。
 うちのシンボルツリーのひとつである、オリーブの樹に魔力を与え、精霊化してもらい一緒に作業していた。
 わたしのオリーブさんへのイメージからか、大人しいけど芯が強い、お姉さんって感じの精霊。

「──、ハーニティー!」

 その精霊がちょいちょいと肩をたたくので、構って欲しいのか? かわいいやつめ……。
 などと甘いことを考えていたら。
 違った。
 そうだ、すっかり忘れていたんだ。

「──や、ヤァ! ゲンキダッタカナ!」
「? どうしたの? 変な話し方して」

 この家に一番近い魔法使いの集落から来た魔女──エボニー。
 ダオにも話した、地の魔女の修行として、薬草から薬をつくる薬師だ。
 薬……、漢方薬に近いのかな?
 薬草とか動物とかたまに鉱物とか、切ったり乾燥させたり火を入れたりで加工した生薬しょうやくを組み合わせて薬をつくる。

 一緒に効能よりも香り付けとして有名どころのハーブも卸してる。
 エボニーとやりとりする時は、もう全部『薬草』って言っちゃう。
 今となってはこっちの世界と前世の記憶が合わさると、もう何がなんだか分からないし。
 省エネ。

 薬膳料理は色んなところにゆるく効果が期待できますように、って感じだけど。
 彼女は例えば、どこどこの具合がわるい時に、とか。
 足が痛む時に、とか。
 もっと症状に特化して、薬草の最適な組み合わせを日々探している。
 正直、知り合い目線でなくても腕がいい。

 茶色の髪は、わたしと違ってふわふわ。きれいな水色の瞳。
 やさしい声色で、女の子って感じの、かわいらしい魔女だ。
 歳も同じ。

「ナ、ナンデモナイヨ!」
「……あ。わかった! 納品のこと、忘れてたんでしょ」
「ま、まっさかーアハハ」

 その、まさかです。
 
 暦や時間の感覚は前世とほぼ同じで、わたしはダオを拾った日。
 納品のために、どの薬草にしようかしら~と見本にする薬草を摘んでいたところ、腰をやってしまったのだ。
 いや、正確にはやりそうになって、なんとか耐えた。
 耐えました、えらい。

 それで転生したことに気付いたり、ダオのことがあったりですっかり忘れていた。
 いやー、失態。

「この際、生のやつじゃなくていい?」
「なぁんだ、やっぱり忘れてたんじゃない」

 くすくすと笑う彼女は、女のわたしから見ても可愛い。
 いや、推せる。

「薬草オススメ展示会はできないんだけど、エボニーはなにが必要?」
「てんじかい? ……えっと。エルダーフラワーと、マジョラムかな」
「お、いいね。それならすぐ持ってこれるよ」
「うん、お願いね。あとの物は家の中よね? 中で待ってていい?」
「どうぞ~」
「ありがと!」

 癒し。

 この取引がわたしの主な収入源のひとつ。
 まぁ、基本的に魔法使いは自給自足ができるしそんなにお金必要ではないんだけどね。
 魔法使い同士の売買も、物々交換でなければ一般の人と同じ通貨をつかう。

 魔力をもたない人の中で魔法使いを恐れていても、商売人根性で集落に商いに来る人もたまーに居る。
 魔法使いほどハッキリとした色合いを持つ人はいないけど、ほんのり色付く髪色を持つ人は一般の人にもいるし、街に目立たないように行けば買い物くらいはできる。
 ……バレたら、めっちゃ嫌そうな顔されるとは思うけども。

 わたしはリスク管理で行かないけどね。
 お金は、まぁあるに越したことはない。

「──キャー!」
「……あ」

 どうぞ~。
 ……じゃなかった! 今は家に人が居るのを忘れてた。





 オリーブさんにあとは任せ、急いで家に戻る。

「ちょ、ちょっと待ってダオ!」

 中に入れば、エボニーに刃を向け身動きを封じたダオ。

「! ハニティ。……知り合い、か?」
「は、はにてぃ~」
「ご、ごめんごめん、言うの忘れてた。その子はエボニー、うちの近くの集落で薬師をしてるの。離してあげて」

 そう言えば、剣を持った手をおろしてくれた。

「……悪い、手荒な真似をした」
「い、いえ。び……びっくりはしたけど、ええと……」
「ん?」

 潤んだ目がかわいいぜ……なんて不謹慎なことを考えていたら、めちゃくちゃ意味深な目を向けられる。

「もしかして……! もう、騎士の契約者を見付けたの!?」

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