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10 おかしな魔女【ダオ視点】

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 変な魔女だな、と思った。

 行き倒れていた俺を拾うのはきまぐれだろうが、魔力がなくても……。
 例えふつうの人間であっても、同じことをしていたと。

 テオレムに居た頃は、魔法使いという存在はほぼ王城に居住させ管理された。
 寝るまで他の者の目があるところで過ごさねばならないし、王の愛人の魔女の力で城の中では場所が把握された。

 そして、一たび魔物の討伐や他国との戦争。
 戦いともなれば、最前線に配置される。

 生きることに必死で、生まれた時から王城にいて。
 他国の魔法使いの現状も分からない状態だった。

 果たしてこれが異常なのか。それとも正常なのか。
 ……そんなことを、考える暇もなかった。

 俺の知る魔女、というのは俺と同様生きるのに必死だった。
 具体的には、王に媚びるのに必死。

 美しく着飾り、王以外へは横柄な態度をとり優位性を見せる。
 男の魔法使いよりは、いくらか待遇はマシだったかもしれないが……。
 彼女らとて、仮面を被って生きていたのかもしれない。

 ──でも、ハニティは違った。

 ゆるやかな口調に、他者を思いやる態度。
 着飾った訳でもないのに、素朴ながらも感じる不思議な美しさ。
 見たことのない魔法の使い方。

 俺の知る、『魔女』という存在からはかけ離れていて。

 自尊心の高い魔女ならばすぐに本性を現すだろうとふざけてはみたが。
 ……怒って追い出すどころか、俺の体のことを考えたであろう料理まで提供してくれた。

 分からない。
 彼女の考えが、分からない。

 仮に裏があったとしても。なかったとしても。

 力以外で、自分の存在を示したことがなかったのに。
 ……彼女は、いや。他の国の魔法使いもだろうか。
 俺が誰でも、呪いがあっても。

 ただの『ダオレン』として、見てくれる。

 俺には、それが分からない。
 理由なんてない、と言われるんだろうが……頭と心が追いつかない。

 公平、平等。
 そんなもの、力の名の下でしか知らない。

 普通。
 ふつうって、何だろうか。

 ……やめよう。
 堂々めぐりで、考えがまとまらない。

 今はとにかく、体を休めよう。
 そして、どんな意図があるにせよ。世話になった者への恩に報いる。

 呪いを解く可能性にかけ、グランローズ殿のお膝元を訪れようとしたが。
 いずれにせよ、この呪いが解かれる保証はない。
 今すぐ、でなくともいいはず。

 ハニティの手助け。手足となる。
 ……それが、今の最優先事項だ。



 それにしたって、不思議だ。

 味も美味いし、魔力もみなぎる。

 だがそれよりも。
 心が満たされる料理。
 ……不思議だ。
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