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謝罪と贖罪

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「アーキさん、本当にすいませんでした!」

 シルバー空挺団のメンバー全員が地面に座り頭を下げ、地面に額が付くほどの深いお辞儀をする。
 後から聞いた話では彼らの出身国の謝罪のスタイルであり最敬礼に当たるそうだ。

「女王に蒼天丸の修理依頼を頼んだはずなのですが、修理の対価のフォレストグリズリーの討伐から戻ってみたらアーキさんに修理を任せたというじゃないですか。本当にご迷惑を掛け通しですいません」
「いや、僕も今回の修理は結構楽しめたからあんまり気にしないで欲しい」

 それにしてもあの女王、修理の対価としてシルバーを使っておきながら、飛竜船の修理を俺に丸投げしただと?
 一度痛い目に遭えばいいのに!
 
「俺たちにできることといえば戦うことだけでなにも礼をすることは出来ないんですが、出来ることがあれば何でもします。させてください」

 とりあえず、飛竜船を理想の形に仕上げたかったので最終調整を手伝ってもらうことにし、シルバーたちにはしばらく滞在して貰うことにした。
 早速試運転だ。
 早速乗ってもらった感想を聞いてみる。

「これはすごい! 今までとは比べ物にならないぐらい動きが機敏ですね」

 ただ、言葉は喜んでいても表情は冴えない。

「なにか気になることでもありますか?」
「こいつらが仕事を失って、暇そうにしているのが……」

 飛竜の頭を撫でるシルバー。
 今まで一緒に戦ってきた仲間だという。
 あれ?
 もしかして余計なことしちゃった?
 ヤバイ!
 僕がどう謝ろうかと言葉を探ししどろもどろになっていると、ホムがいいアイデアを出した。
 
「今までの飛竜たちは飛竜船の一部で単なる道具。でも、今日からはシルバーの仲間」
「仲間か……」

 いままで一緒にやってきたんだから、本当の仲間として認めてもいいんじゃないかとシルバーは思った。

「それ、いいわね」

 操舵長のバイオレットもホムの案に賛成のようだ。
 こうして、シルバーたちに新しい仲間が出来たのであった。
 
 *
 
 夕食時、僕は前々から蒼天丸について不思議に思っていたことを聞いてみた。

「今までの蒼天丸は防御力がかなり低かったようですが、どうやって運用していたんですか?」
「そのことですか。飛竜も含め飛竜船の外に多重結界という無数の小さな防御壁を張っていたんです」
「そうだったんですか」

 飛竜船自体じゃなく、その外に防御壁を張っていたのか。
 それなら船体の防御力が低くとも安全に運用出来そうだ。
 それにしても、飛竜に続きまたしも余計なことをしてしまったみたいだ。
 
「もしかして、船体強化もいりませんでした?」
「いや、とてもありがたいです。多重結界も万能じゃなく、極稀に攻撃が貫通することがありますので今回の強化は非常に助かっています」
「でも、多重結界が無駄になってしまいましたよね?」
「確かに……」

 役割を失った多重結界担当の魔導士キリカが悲しそうな眼を見せる。

「それなら問題ない」

 ホムだった。

「多重結界が敵を防ぐ壁ならば、ホムは多重結界を武器に使えばいいと思う」
「武器に?」

 キリカが不思議そうな顔でホムを見つめる。

「そう。今まで通り多重結界を張って体当たりすれば、近づいてきた敵は木っ端微塵」

 多重結界を武器にするってそんな使い方なの?
 すごい使い方だな。
 ホムの発想力は少し怖い。

 *

 アーキに痛い目に遭えばいいと呪いの言葉をかけられた精霊女王シルフィー。
 だが、精霊女王ともなれば類まれなる幸運の持ち主であり、アーキの幸運という最強の刃もそのまま食らうことはなかった。
 でも……。
 
「見たか? タダで飛竜船を修理させて、フォレストグリズリーもタダで退治。わらわの交渉力を見たか!」
「さすが、シルフィー様」
「おーっほほほほ!」

 玉座にふんぞり返って笑いが止まらないシルフィー。
 その時、玉座の背もたれが外れて、シルフィーは床に激しく頭を打ち付けた。

「ぐぎゃー! 痛ったー!」

 痛みのあまり、頭を押さえて床を転げまわる。
 その勢いで壁に小指の先をぶつけ……。

「うぎゃー!」

 さらに転げまわった。
 もちろんこうなったのはアーキの幸運のせいだ。

「あたたた……なんで背もたれが取れるのよ! ありえないわ!」

 よろよろと立ち上がるセルフィー。
 今度は靴底の縫い目が解れつんのめる。
 顔面から倒れこみ、床にたたきつけた。
 綺麗に整っていた顔は見るも無残な感じだ。

「靴底がもげるなんてありえない!」

 更によろよろと起き上がったシルフィーに不幸が襲い掛かる。
 こけた振動で天井のシャンデリアが落ちて、背中に直撃。
 再び、床に叩きつけられる。
 シルフィーの幸運では、アーキの牙を剥いた幸運を完全に退けることは出来なかったのだ。
 三日三晩ひどい目に遭い続けた。
 その数120回。
 誰もアーキの幸運が起こした災難とはわからなかった。
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