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最後の晩餐
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師匠である大賢者マーリンはダイニングに見たこともない豪華な料理を用意して歓迎してくれた。
「豪華な食事ですね」
「折角のお祝いなので、コックの精霊に頑張ってもらって作ってもらったんじゃ。遠慮なく食べてくれ」
僕は生まれて初めて見た豪勢な料理に舌鼓を打つ。
ちょっと前までは一日二食の粗末な料理しか食べていなかったとは思えないほどの幸運続き。
もう、これ以上食べられないところまでお腹を膨らませた僕に師匠が聞いてくる。
「エリクサーを何本も作ったと聞いたんじゃが、どうやって錬成してるんじゃ?」
僕は包み隠さず、エリクサーの作り方を師匠に伝える。
「あれはエリクサーとして作ったものじゃなくて、ハイポーションとして錬成したときに出来たハイクオリティー品なんですよ」
「なんと!」
あまりに衝撃的な作り方だったのか、師匠の口が開いたまま動かなくなった。
あまりの衝撃にショック死したんじゃないかと心配になる。
しばらくすると、息を吹き返したかのように動き始める師匠。
「でも、ハイポーションのハイクオリティー品は『ハイポーション:上』じゃろ?」
「エリクサーは『ハイポーション:上』のさらに上のハイクオリティー品ですね」
「わしはハイポーション:上のさらに上のハイクオリティー品なぞ錬成したことがないんじゃが、そんなことになってたんじゃの」
「一度お見せしましょうか?」
「是非に!」
師匠の錬金部屋に行き、エリクサー作りを披露。
普通であれば一年を掛けて作るエリクサーが一瞬で出来上がって、師匠は目を白黒させていた。
「こんな簡単に作り上げるとは……目の前で見たことなのに信じられん」
「僕もエリクサーが出来たと聞いて最初は信じられませんでした。どうなってるんですかね?」
「うーむ……」
師匠は白く立派な髭を撫でつけながら考え込む。
「アーキよ。きっとこのエリクサーのレシピは裏レシピとして元々存在してたんじゃと思う。むしろわしでも作れない隠しレシピで錬金するアーキの方に秘密があると思うんじゃ。そこでアーキのステータスを調べさせてもらえないかの?」
ということで僕のステータスを調べることになった。
調べるのは鑑定の石板。
ここに手を置けば僕のステータスが浮かび上がるとのことだ。
早速手を置き計測すると……。
「なんと! これがアーキがエリクサーを作れる理由じゃったか」
僕も石板に浮かび上がったステータスを見てみる。
----------
名前:アーキ
職業:錬金術師
LV:14
年齢:14
HP:32/32(F)
MP:28/28(F)
腕力:32(E)
体力:34(E)
知性:224(B)
幸運:24330(SSS)
スキル:【錬金術:超】LV433
----------
アーキの幸運度は幸運の実を食べてからも上がり続けていたのだ。
しかもその幸運度により錬金術スキルもマーリンさえも敵わないぐらいまで成長していた。
「錬金術スキルも凄いが、幸運の数値が凄まじいレベルで飛びぬけておる」
「そんなにすごいんですか?」
「見たことのない限度を超えた幸運度じゃな。これは神にも匹敵する幸運度かもしれない」
この幸運度ならハイポーションからエリクサーが作れても当然とのことだった。
知性は錬金術のスキルが上がる過程で引っ張られて上がったんだとも。
「なんとなく、アーキのことが見えてきたぞ。凄まじい幸運で本来は成功しない隠しレシピでの錬金を成功しまくる。こういうのとじゃろう」
「そうだったんだ。錬金術士の父さんの血を引いて錬金術士として優れていると思っていたんだけど、僕は幸運以外はなんのとりえもなかったんですね」
僕がガックリと肩を落としていると、師匠が優しく声を掛けてくれる。
「いや、そんなことはない! 幸運は全てのことに良い結果をもたらす最強のステータスじゃ。その幸運が最高ということはアーキも最高ということじゃ」
落ち込んでいる僕を励ましていると思うんだけど、師匠が僕を慰めてくれているのがちょっとうれしかった。
「その証拠に、知性のステータスと錬金術のスキルが高いじゃろ? これは錬金をする度に類稀《たぐいまれ》なる幸運度に引っ張られて上昇したんじゃ」
じゃあ、元々の僕は知性も錬金術も低いなんのとりえもない子どもだったのかな?
師匠が言いづらそうにして僕から視線を逸らすと、ホムが遠慮なしに言い放った。
「そう、アーキは幸運以外なにも取り柄がなかった」
ぐはっ!
わかってたけど、同い年の女の子に面と向かって言われるときつい。
「まあ、アーキよ、落ち込むのではない。幸運と努力さえあればあとは訓練するだけで他のステータスも上がりまくりじゃ」
師匠の優しいフォローが暖かい。
「ただ一つだけ忠告じゃ。高過ぎる幸運は本人にとっては最高の武器であっても周りの者にとっては凶器となることもある」
「どういうことです?」
「アーキが幸運を招くとともに、周りに不幸となるものも現れる」
なんとなく師匠が言っていることがわかる。
僕が現れたことで、ギルドを手に入れ順風満帆だったボーゲンの罪が暴かれて奴隷落ち。
同じくワーレンも町長の座から引き擦り降ろされた。
相手が悪いにしても、僕が幸運を呼び寄せたことで不幸になる者も現れたってことだ。
「言動には気を付けるのじゃぞ」
「はい、師匠」
ところがこの限度を超えた幸運は敵意を持たないものに対しても結果的に不幸をもたらすことになるのだ……。
「豪華な食事ですね」
「折角のお祝いなので、コックの精霊に頑張ってもらって作ってもらったんじゃ。遠慮なく食べてくれ」
僕は生まれて初めて見た豪勢な料理に舌鼓を打つ。
ちょっと前までは一日二食の粗末な料理しか食べていなかったとは思えないほどの幸運続き。
もう、これ以上食べられないところまでお腹を膨らませた僕に師匠が聞いてくる。
「エリクサーを何本も作ったと聞いたんじゃが、どうやって錬成してるんじゃ?」
僕は包み隠さず、エリクサーの作り方を師匠に伝える。
「あれはエリクサーとして作ったものじゃなくて、ハイポーションとして錬成したときに出来たハイクオリティー品なんですよ」
「なんと!」
あまりに衝撃的な作り方だったのか、師匠の口が開いたまま動かなくなった。
あまりの衝撃にショック死したんじゃないかと心配になる。
しばらくすると、息を吹き返したかのように動き始める師匠。
「でも、ハイポーションのハイクオリティー品は『ハイポーション:上』じゃろ?」
「エリクサーは『ハイポーション:上』のさらに上のハイクオリティー品ですね」
「わしはハイポーション:上のさらに上のハイクオリティー品なぞ錬成したことがないんじゃが、そんなことになってたんじゃの」
「一度お見せしましょうか?」
「是非に!」
師匠の錬金部屋に行き、エリクサー作りを披露。
普通であれば一年を掛けて作るエリクサーが一瞬で出来上がって、師匠は目を白黒させていた。
「こんな簡単に作り上げるとは……目の前で見たことなのに信じられん」
「僕もエリクサーが出来たと聞いて最初は信じられませんでした。どうなってるんですかね?」
「うーむ……」
師匠は白く立派な髭を撫でつけながら考え込む。
「アーキよ。きっとこのエリクサーのレシピは裏レシピとして元々存在してたんじゃと思う。むしろわしでも作れない隠しレシピで錬金するアーキの方に秘密があると思うんじゃ。そこでアーキのステータスを調べさせてもらえないかの?」
ということで僕のステータスを調べることになった。
調べるのは鑑定の石板。
ここに手を置けば僕のステータスが浮かび上がるとのことだ。
早速手を置き計測すると……。
「なんと! これがアーキがエリクサーを作れる理由じゃったか」
僕も石板に浮かび上がったステータスを見てみる。
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名前:アーキ
職業:錬金術師
LV:14
年齢:14
HP:32/32(F)
MP:28/28(F)
腕力:32(E)
体力:34(E)
知性:224(B)
幸運:24330(SSS)
スキル:【錬金術:超】LV433
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アーキの幸運度は幸運の実を食べてからも上がり続けていたのだ。
しかもその幸運度により錬金術スキルもマーリンさえも敵わないぐらいまで成長していた。
「錬金術スキルも凄いが、幸運の数値が凄まじいレベルで飛びぬけておる」
「そんなにすごいんですか?」
「見たことのない限度を超えた幸運度じゃな。これは神にも匹敵する幸運度かもしれない」
この幸運度ならハイポーションからエリクサーが作れても当然とのことだった。
知性は錬金術のスキルが上がる過程で引っ張られて上がったんだとも。
「なんとなく、アーキのことが見えてきたぞ。凄まじい幸運で本来は成功しない隠しレシピでの錬金を成功しまくる。こういうのとじゃろう」
「そうだったんだ。錬金術士の父さんの血を引いて錬金術士として優れていると思っていたんだけど、僕は幸運以外はなんのとりえもなかったんですね」
僕がガックリと肩を落としていると、師匠が優しく声を掛けてくれる。
「いや、そんなことはない! 幸運は全てのことに良い結果をもたらす最強のステータスじゃ。その幸運が最高ということはアーキも最高ということじゃ」
落ち込んでいる僕を励ましていると思うんだけど、師匠が僕を慰めてくれているのがちょっとうれしかった。
「その証拠に、知性のステータスと錬金術のスキルが高いじゃろ? これは錬金をする度に類稀《たぐいまれ》なる幸運度に引っ張られて上昇したんじゃ」
じゃあ、元々の僕は知性も錬金術も低いなんのとりえもない子どもだったのかな?
師匠が言いづらそうにして僕から視線を逸らすと、ホムが遠慮なしに言い放った。
「そう、アーキは幸運以外なにも取り柄がなかった」
ぐはっ!
わかってたけど、同い年の女の子に面と向かって言われるときつい。
「まあ、アーキよ、落ち込むのではない。幸運と努力さえあればあとは訓練するだけで他のステータスも上がりまくりじゃ」
師匠の優しいフォローが暖かい。
「ただ一つだけ忠告じゃ。高過ぎる幸運は本人にとっては最高の武器であっても周りの者にとっては凶器となることもある」
「どういうことです?」
「アーキが幸運を招くとともに、周りに不幸となるものも現れる」
なんとなく師匠が言っていることがわかる。
僕が現れたことで、ギルドを手に入れ順風満帆だったボーゲンの罪が暴かれて奴隷落ち。
同じくワーレンも町長の座から引き擦り降ろされた。
相手が悪いにしても、僕が幸運を呼び寄せたことで不幸になる者も現れたってことだ。
「言動には気を付けるのじゃぞ」
「はい、師匠」
ところがこの限度を超えた幸運は敵意を持たないものに対しても結果的に不幸をもたらすことになるのだ……。
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