10 / 20
10話
しおりを挟む
餌付け
やばいやばい!
マジで遅れる!
嶺が通っている保育園は職場からも家からも結構遠い。
高嶺の家も俺の家周辺も高級住宅街だから、幼稚園はたくさんあるけど、お受験?とかしないといけないようなところばっかりだったし、母親が分からないって言うのもあって、家周辺の保育園とか幼稚園には預けさせて貰えなかった。
せめて嶺が3歳になるまでは自分で育てよう。と思っていたから、随分中途半端に保育園に入ることになってしまった。
そんなこんなで保育園不足なんかも相まって、空いていた保育園が今通っているところしかなかった。
俺は今、車を持っていない。
ついでに免許ももってない。昔は高嶺がずっと運転してたから、任せっきりだった。
だけど、そろそろ必要かな。
保育園は遠いし。
でも、今の保育園は先生もいい人達だし、嶺のことを母親が居なくても大丈夫って言ってくれたし、担任の先生はよく相談に乗ってくれるし、それに、なによりも嶺が楽しそうだ。
昔、断られた幼稚園に最初の見学に行ったときに見せた表情と、今の保育園に見学に行った時の表情とでは全く違った。
今の保育園の方が、楽しそうだった。
保育園には瞬君っていうお友達も出来たみたいで、毎日保育園に行きたがる。
土日はないよっていっても、瞬君に早く会いたいみたい。
それって…………まさかね。
瞬君のお母さんは、とても良い人だ。響子さんって言って、真莉さんみたいに、すっごく美人って訳じゃないけど(あれ、失礼だったかな。)なんていうの、内側から滲み出るオーラってやつ?がすっごく澄んでいる気がする。
優しい人で、この前一緒にご飯を食べに行った。響子さんも俺と一緒で母子家庭らしい。
去り際に、「片親だけど、一緒に助け合って行きましょうね。」って言ってくれた。
でも、響子さんには彼氏がいて、一緒に住んでるんだって。
瞬が言ってたって嶺が言ってた。
その人も響子さんみたいに優しい人らしい。
でも、お酒を飲むと怒鳴るんだって。
ある日瞬君が泣いてたから聞いたら、新しいお父さんに怒られたって言ってたみたいだ。
心配だな。
とにかく今は早く、そして無事に嶺を迎えなければ……!
そう思って急いだら結構早く着いた。
よかったぁ。
「嶺!」
「あれ?お父さん?もっと遅くても良かったのに。」
あれ?あれれ?
せっかく急いで来たのに、もっと遅くても良かったのにってどういうことだよ!
「へ?なんで?」
「今ね、瞬と結婚の約束してたんだよ!お父さん邪魔だからまってて!」
ん?結婚の約束?やっぱり…嶺は瞬君のことが好きなのかな???
って邪魔って言われた。
酷い。
一人でうなだれている俺を尻目に嶺は告白?を続けている。
そんな嶺を見ていると、急に後ろからポンポンっと肩を叩かれた。
「んぎゃっ」
うわ、変な声でた。
後ろを振り返らなくてもわかる。絶対笑ってる。
こんなことなら、昨日の夜の読み聞かせを怖いもの特集にしなければ良かった。
結局嶺はケタケタ笑って、んなことあるわけないじゃん!パパなんで信じてんのー?って俺のことをバカにしてくるし…。
振り返ると、案の定爆笑している担任の先生の望月さんがいた。
「あの?」
「……っ!」
「先生?」
「あっはははは!」
「先生!?」
なかなか笑い止んでくれない先生を見て、悲しくなる。
「すっすいませ…っ!笑いがっ止まらない!んぎゃってんぎゃって!!」
「先生?そろそろ笑い止んでください。」
「す、すいませんでした。ごめんなさい、秋城さん。」
保育園で秋城さんって言われる理由は、高嶺のせいだ。なかなか離婚届けを出してくれないから、まだ俺と嶺は秋城のままだ。
「……。いいですよ。僕は向こうで待ってるんで。」
「そっそんな怒んないでくださいよぉ!ごめんなさいってばぁ~!」
「嘘です。怒ってませんよ。」
「そうですか。よかった…。
嶺くーん!パパ迎えに来たから、早く用意してー!」
「はーい!」
うむうむ。きちんと返事は出来てるの。上出来じゃ。流石俺の息子。
「パパ!用意出来たよー!帰ろ!」
「うん。帰ろっか。今日は嶺の好きな油揚げの味噌汁にしようと思うんだけど…。」
「ほんと!?やったー!!ありがとパパ!大好き!」
うむ。これで良いのじゃ。
息子の餌付けに成功したことを密かに嬉しく思う父であった。
やばいやばい!
マジで遅れる!
嶺が通っている保育園は職場からも家からも結構遠い。
高嶺の家も俺の家周辺も高級住宅街だから、幼稚園はたくさんあるけど、お受験?とかしないといけないようなところばっかりだったし、母親が分からないって言うのもあって、家周辺の保育園とか幼稚園には預けさせて貰えなかった。
せめて嶺が3歳になるまでは自分で育てよう。と思っていたから、随分中途半端に保育園に入ることになってしまった。
そんなこんなで保育園不足なんかも相まって、空いていた保育園が今通っているところしかなかった。
俺は今、車を持っていない。
ついでに免許ももってない。昔は高嶺がずっと運転してたから、任せっきりだった。
だけど、そろそろ必要かな。
保育園は遠いし。
でも、今の保育園は先生もいい人達だし、嶺のことを母親が居なくても大丈夫って言ってくれたし、担任の先生はよく相談に乗ってくれるし、それに、なによりも嶺が楽しそうだ。
昔、断られた幼稚園に最初の見学に行ったときに見せた表情と、今の保育園に見学に行った時の表情とでは全く違った。
今の保育園の方が、楽しそうだった。
保育園には瞬君っていうお友達も出来たみたいで、毎日保育園に行きたがる。
土日はないよっていっても、瞬君に早く会いたいみたい。
それって…………まさかね。
瞬君のお母さんは、とても良い人だ。響子さんって言って、真莉さんみたいに、すっごく美人って訳じゃないけど(あれ、失礼だったかな。)なんていうの、内側から滲み出るオーラってやつ?がすっごく澄んでいる気がする。
優しい人で、この前一緒にご飯を食べに行った。響子さんも俺と一緒で母子家庭らしい。
去り際に、「片親だけど、一緒に助け合って行きましょうね。」って言ってくれた。
でも、響子さんには彼氏がいて、一緒に住んでるんだって。
瞬が言ってたって嶺が言ってた。
その人も響子さんみたいに優しい人らしい。
でも、お酒を飲むと怒鳴るんだって。
ある日瞬君が泣いてたから聞いたら、新しいお父さんに怒られたって言ってたみたいだ。
心配だな。
とにかく今は早く、そして無事に嶺を迎えなければ……!
そう思って急いだら結構早く着いた。
よかったぁ。
「嶺!」
「あれ?お父さん?もっと遅くても良かったのに。」
あれ?あれれ?
せっかく急いで来たのに、もっと遅くても良かったのにってどういうことだよ!
「へ?なんで?」
「今ね、瞬と結婚の約束してたんだよ!お父さん邪魔だからまってて!」
ん?結婚の約束?やっぱり…嶺は瞬君のことが好きなのかな???
って邪魔って言われた。
酷い。
一人でうなだれている俺を尻目に嶺は告白?を続けている。
そんな嶺を見ていると、急に後ろからポンポンっと肩を叩かれた。
「んぎゃっ」
うわ、変な声でた。
後ろを振り返らなくてもわかる。絶対笑ってる。
こんなことなら、昨日の夜の読み聞かせを怖いもの特集にしなければ良かった。
結局嶺はケタケタ笑って、んなことあるわけないじゃん!パパなんで信じてんのー?って俺のことをバカにしてくるし…。
振り返ると、案の定爆笑している担任の先生の望月さんがいた。
「あの?」
「……っ!」
「先生?」
「あっはははは!」
「先生!?」
なかなか笑い止んでくれない先生を見て、悲しくなる。
「すっすいませ…っ!笑いがっ止まらない!んぎゃってんぎゃって!!」
「先生?そろそろ笑い止んでください。」
「す、すいませんでした。ごめんなさい、秋城さん。」
保育園で秋城さんって言われる理由は、高嶺のせいだ。なかなか離婚届けを出してくれないから、まだ俺と嶺は秋城のままだ。
「……。いいですよ。僕は向こうで待ってるんで。」
「そっそんな怒んないでくださいよぉ!ごめんなさいってばぁ~!」
「嘘です。怒ってませんよ。」
「そうですか。よかった…。
嶺くーん!パパ迎えに来たから、早く用意してー!」
「はーい!」
うむうむ。きちんと返事は出来てるの。上出来じゃ。流石俺の息子。
「パパ!用意出来たよー!帰ろ!」
「うん。帰ろっか。今日は嶺の好きな油揚げの味噌汁にしようと思うんだけど…。」
「ほんと!?やったー!!ありがとパパ!大好き!」
うむ。これで良いのじゃ。
息子の餌付けに成功したことを密かに嬉しく思う父であった。
30
お気に入りに追加
597
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
可愛くない僕は愛されない…はず
おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
【完】俺の嫁はどうも悪役令息にしては優し過ぎる。
福の島
BL
日本でのびのび大学生やってたはずの俺が、異世界に産まれて早16年、ついに婚約者(笑)が出来た。
そこそこ有名貴族の実家だからか、婚約者になりたいっていう輩は居たんだが…俺の意見的には絶対NO。
理由としては…まぁ前世の記憶を思い返しても女の人に良いイメージがねぇから。
だが人生そう甘くない、長男の為にも早く家を出て欲しい両親VS婚約者ヤダー俺の勝負は、俺がちゃんと学校に行って婚約者を探すことで落ち着いた。
なんかいい人居ねぇかなとか思ってたら婚約者に虐められちゃってる悪役令息がいるじゃんと…
俺はソイツを貰うことにした。
怠慢だけど実はハイスペックスパダリ×フハハハ系美人悪役令息
弱ざまぁ(?)
1万字短編完結済み
いつか愛してると言える日まで
なの
BL
幼馴染が大好きだった。
いつか愛してると言えると告白できると思ってた…
でも彼には大好きな人がいた。
だから僕は君たち2人の幸せを祈ってる。いつまでも…
親に捨てられ施設で育った純平、大好きな彼には思い人がいた。
そんな中、問題が起こり…
2人の両片想い…純平は愛してるとちゃんと言葉で言える日は来るのか?
オメガバースの世界観に独自の設定を加えています。
予告なしに暴力表現等があります。R18には※をつけます。ご自身の判断でお読み頂きたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
本編は完結いたしましたが、番外編に突入いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる