君が僕を見つけるまで。

いちの瀬

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18話。

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少し小走りでこっちに向かってくるのは、多分確実に隼人くんだ。
なんか、白い紙袋を手に持ってる。
誰かへのプレゼントかなぁ。

「志乃さん!お待たせしてすみません…。」

はぁ、はぁ、と膝に手を当てて肩で息している。

あの隼人くんが息切れしてる。
そんなに急がなくてもいいのに。

つい、くすっと笑いが漏れた。

「し、志乃さん?なに笑ってるんです?」

戸惑ったような顔でこっちを見つめる隼人くんに、また笑いがもれてしまった。

「くふふっ、だって、隼人くんめっちゃ走ってくるから。そんなに急がなくてもいいんだよ。」

「いや、えっと、志乃さん待たせてると思ったらつい…あ!これ、志乃さんに!」

「ん?」

隼人くんが俺に渡してきたのは、紛れもなくさっき隼人くんが持っていた小さな紙袋で、ちょっと外装だけでもなんだか高そう。

「え、これ、俺に?」

「えっと、はい、すみません勝手に」

隼人くんは照れてるのか、一向に目線が合わないまま、俺はプレゼントを受け取った。

「あの、これ志乃さんに似合うと思ってたんですけど、ちょうどこの前来た時には店頭になくて、注文してもらってたんです。」

なんだろう。高そうだけど

「これ、今ここで開けてもいいやつ?」

「あ!ぜんぜん!開けてください!気にいるといいけど…気に入らなかったら返してくれてもいいですからね!」

そんなことできないよ。

近くのベンチに座って、ガサガサとなるべく綺麗に包装を取って蓋を開けると、綺麗な時計が出てきた。

「え…これ…」

「あ、志乃さん結構前に、時計壊れちゃったって言ってたじゃないですか、だから、俺からプレゼントです!」

確かに言った。ほんとは壊れてないけど、あの時計は高嶺からプレゼントされたものだったから、つけるのが嫌になって外したんだ。
高嶺は自分のモノを自分が好きなブランドだけで着飾らせるのが大好きだったから。
うん。それで俺の時計が浮気相手の子と同じ時計だってことにようやく気付いて、それで外したんだった。

「これ、俺の…?」

「あ、ええと、気に入ってくれました?」

「うん。気に入った。うれしい。隼人くん、ありがとう!」

つい勢いで隼人くんに抱きついてしまった。
膝の上にあった包装紙と箱と紙袋はガサッと一気に落ちてしまった。

「え、志乃さん、泣いて…る?ど、どうしたんです?」

「ううん。うれしくて、俺、こういうの欲しかったんだよ。隼人くん、ありがとう」

高嶺からもらった時計をつけなくなってから、自分で時計を買うのも、なんだか高嶺を思い出しそうで買うに買えなかった。
なのに、隼人くんがプレゼントしてくれた。
こんなうれしいことない。
隼人くんが、高嶺の記憶を上書きしてくれた。
俺ほんとに、こんないい後輩持って幸せだ。

「俺、この時計を見るたびに隼人くんのこと思い出しそう。ほんとにありがとう」

「いえ、喜んでもらえたならうれしいです」

ボソッと呟く隼人くんの耳は、なぜか真っ赤だった。



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