君が僕を見つけるまで。

いちの瀬

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15話

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「映画、いきましょ」

喫茶店から出てすぐ、なぜか前を向いたまま隼人くんが手を出してきた。

ん?なに?あ、チケット渡せってことか。

「はい、どーぞ!」

隼人くんの分のチケットを手のひらに乗せると、え?というなんとも間抜けな声が聞こえる。
え?ちがった?

「志乃、さん?あの、手繋ぎたいです…」

前を向いたまま隼人くんが、そう呟いた。

あぁ!!!手か!手ね!!

勘違いして恥ずかしい…

よくみると、隼人くんの耳は真っ赤に染まっていた。

隼人くんも恥ずかしいよねぇ、バカでごめんね、、、

心の中で謝りながら、もう一度差し出された手のひらに、自分の手のひらを乗せる。

隼人くんの手は僕より全然大きくて、今日は随分あったかいのにちょっとひやっとしていた。

「隼人くん、手、大きいねぇ~、あ、冷たい。手が冷たい人はほかの冷たい手の人をあっためてあげるから手が冷たいんだって。だから優しいんだって。隼人くんは心があったかいんだね」

「そしたら僕はほかの冷たい手の人で、志乃さんが心の優しい人じゃないですか?現に、今こうやってあっためてくれてるし。」

「そんなことないよ。隼人くんはすっごい優しいよ。」

そうかな。ありがとうございます。

ちっちゃい声で恥ずかしそうにまた耳を赤らめて答える姿に、微笑ましくなる。

かわいいなぁ、

そのまま疑問も覚えずに映画館まで手を繋いだまま歩いた。

映画館でチケットを交換するために隼人くんが左のポケットからさっき渡したチケットを出すときに、さりげなくするっと離れた手がなぜか名残惜しくて、つい追いかけてしまう。

って俺、なにやってんだ。
恥ずかし。

でもチケットを交換した後になにか食べ物を買うかと話しながら、自然と隼人くんが手を繋ぎなおしてくれたことにちょっとほっとする。

って俺、なに考えてんだ。

よく考えてみたら、恋人同士でもないいい年したおっさんと大学生くらいの男の子が手を繋いで歩いてたら普通に変だよな。
さっきまで見てなかったけどキョロキョロと周りを見渡すと、結構通り過ぎるたびに俺たちを凝視している人たちが何人かいた。

するっと、今度は俺の方から隼人くんの手を離すと、また自然に繋がれていた。

あれ?気づかないうちに俺、手繋いでる。なんでだ?

もう一度するっと手を離すと、気づいたらまた自然に繋がれていた。

隼人くん???

なんだか狐に包まれたような気持ちで数センチ高い隼人くんの顔を見上げると、にっこりと爽やかな笑顔を返されてしまった。

まぁいっか。

結局手は映画が始まっても、映画が終わっても繋いだままだった。

お陰で映画には集中できなかったけど、たいして面白くなさそうだったしいっか。
漫画から実写化されたらしい映画は、やたらとキスシーンが多くて、ついキスシーンのたびに繋いだ手に力が入ってしまった。
キスシーンのとこで反応してるのバレてたかな。童貞みたいではずかしいな。

もしかしてこれ、トイレに行くときまで手を繋いどくつもりかな。

ちょっと不安だなーなんて考えてると、するっと手を離されて、

「次、嶺くんの誕生日プレゼント、どこにいきますか?」

ってにっこりした笑顔で聞かれた。

解かれた手に神経が向いてしまうが、それを必死に抑えて

「んー、取り敢えずおもちゃ屋さんかな!最近嶺レンジャーものにハマっててさ、」

なんてまともなことを答えた。

「レンジャーものって仮面○イダーとかですか?あとはウル○ラマンとか、懐かしいなぁ…」

「それがちがうんだよ。なんだっけな、ヒーローが9人いてさ、確かキュ○レンジャーっていうらしいんだけど、中でも金色の天秤○ールドっていうのがお気に入りみたいでさ。最近あげぽようぇーいってずっと言ってるんだよね。」 

ちょっと将来が心配だよ…と苦笑いで返すと、隼人くん、あげぽようぇーい、ですか…と苦笑いをした。

イケメンってどんな表情でもかっこいいんだ。へー。まぁ高嶺の時から知ってるけどね。
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