恋人が本命の相手と結婚するので自殺したら、いつの間にか異世界にいました。

いちの瀬

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引越し。

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とにかく俺は一刻も早くここを出た方がいい。

ルイスの為にも、この子のためにも。

荷造りをしよう。

あと、ルイスに手紙を書いて、なんてかこう。

書くことがあり過ぎるな。

そう思ったのに、いざ便箋を前にしてペンを持ってみると、何を書けばいいのかわからない。

急に居なくなってごめん。
俺なんかがルイスのこと好きになってごめん。
何も知らなくてごめん。
くだらないことで意地張ってごめん。

色々考えたけど、全部ごめん。の一言しか出てこない。

結局、便箋に書かれたのは

ごめんな。

のひとことだけだった。

ルイスと過ごせた日々は楽しかったよ。

すると、外から声が聞こえる。

「すみません。あの、ルイス様の従者のものです。手紙を忘れてきてしまって。」

戻ってきたのか。

「あー、ちょっと待っててくれませんか。ルイスに渡したいものがあって。」

「分かりました。」

従者の方は、快く受け取ってくれた。

「あの、ルイスには、家に着いてから読んでくれ。と言ってくれませんか。俺の頼みだ。と言えば分かってくれると思うので。」

「はい。では、」

これで最後だ。ルイスの名前を聞くのも。

今日出発かな。

取り敢えずありったけの金と服とかを持っていこう。

この国を出るわけだから、どうしよう。隣のリルとレイルに手伝ってもらおう。

隣んちのリルとレイルは、俺と同い年の双子だ。リルが姉で、レイルが弟。
俺に良くしてくれる。

コンコン

訪ねると中から
「はぁ~い。」

と、リルの可愛らしい声が聞こえる。

「あら、ノア!?どうしたのよ。」

ひと通り事情を話すと、手伝ってくれる事になった。

「ルイスに秘密があることは知ってたけど。まさかねぇ。」

「うん。ノア、今日出発するんだろ?
ならさ、取り敢えず2つ隣のシャルへト国まで送ってくよ。どうせそこに行くつもりだったんだろう?」

「あー、うん。ありがと」

「俺たちさ、母さんがこの前死んじまってさ、ノアは知らないだろ?具合悪かったから。」

「知らなかった。ごめん。」

「いやいや、ノアが謝ることじゃないのよ。何も悪くないでしょう?」

「そうそう。それでさ、父さんももう居ないし、引っ越そうと思ってたんだ。だからさ、俺たちと一緒にこないか?」

「え、いいのか?」

「いいも何も、ノアなら大歓迎よ!私達、ノアのこと大好きだもの!」

「うん、ありがとう。」

「だからさ、もう家は決まってるんだ。今日にでも出発しよう。な?いいだろ?」

2人が心配そうな顔で覗き込んでくる。

「うん。もう荷物は用意できてるから。本当にありがとう。」

子供の父親は、レイルが代わりになってくれるという。

こうして俺は、ルイスから離れる事になった。
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