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ディアンの耳飾り

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アーノルドは、先天性の魔力欠乏症だったらしい。
子供は元から魔力が0の状態で生まれてくる。
生まれてきて初めて母親の魔力に触れて、魔力を吸い上げることによって生まれてすぐでも生きられる。
成長すればするだけ魔力を体に溜め込むことが可能になるし、自分の体で自己発電的に魔力を生み出すこともできる。そもそも人から魔力を貰うのは、生まれた時だけなくらいだそうだ。

でも、アーノルドはそれができない。
いくら魔力量が多くても、これは流石に…と思ったらしい魔術師さん達が調べると、アーノルドの体の中には吸い上げたはずの魔力が少し残っている程度だったらしい。

だから、生きるためには一生王宮で魔力を貰ってでないと生きられない。と言われた。

俺が、魔力量が少ないから。
こんな風に産んでしまった。
俺のせいだ。

ひたすら自己責任で自分を責める俺に、ルイスは複雑そうな顔で、ノアのせいじゃない。と言ってきた。

「魔力欠乏症は、誰にでも起こることだ。未だに原因なんてわからない。いくら両親の魔力が多くても生まれるし、少なくても生まれる。だから、ノアのせいじゃない。」

アーノルドは王宮で生まれたから助かったけど、普通に暮らしているひとたちの間で魔力欠乏症が生まれると、魔力を永遠に吸われ続ける母親と、魔力を母親から受け取る子供。両方死んでしまうことが多いらしい。

魔力が尽きた母親は子供を残して死んで、母親から魔力を受け取れなくなった子供も死ぬ。運良ければ母親は助かっても、子供は魔力をくれる人がいないとすぐに死んでしまう。

だから魔力欠乏症の子供は、生まれて少し経ったら殺されてしまうことが多い。
そう、本に書いてあったとルイスが話した。

だから俺たちはまだ運が良い方だ。

アーノルドは不幸な子供なんかじゃないよ。

泣き続ける俺を抱えながら、ルイスはひたすら背中を撫で続けた。

泣き止んだ俺の目を見て、
「俺に考えがある。」
とルイスが話した。




次の日、二人で王様のところへ行った。
この前とは違って、そこは王様の部屋みたいだった。
赤のベルベットと金色のソファの上で王様がふんぞり返ってる。

「こちらからお話しすることをお許し下さい。陛下、願いがあるのです。どうか聞き入れて下さいませんか。」

「お願いします」

ルイスが真面目な顔で王様にお願いした。
だから俺もお願いした。

「話してみなさい。」

王様が真面目な顔で話すから、アーノルドのことを話した。

「陛下、こんなこと許されるとは思っていません。しかし、お願いです。アーノルドに、アーノルドにあのディアンの耳飾りを下賜いただけないでしょうか…」

ルイスの顔が強張っている。

昨日、話してくれた。
ディアンの耳飾りは王家に伝わるものであり、多量の魔力を補ってくれる耳飾りなのだという。
これなら、アーノルドも救えるかもしれない。

王様は、少し黙ったあと、息を吐いて
「いいだろう。」と言った。

王様はアーノルドの魔力欠乏について話す前から知っていたみたいだった。

「私も、老いたものだな。昔であったらそなたらなんぞ切り殺してたわ。
アーノルドのことを聞いた瞬間、すぐにディアンの耳飾りのことが思い浮かんだ。は特殊だからな。
宿主に寄生して、なんとしてでも生かそうとするから、少々厄介なのだがな。
そなたらにくれてやる。そもそもが国宝なのは、王族の血縁者しか使えないからであって、はそんな代物でもない。まぁ欲しがる奴は五万といるがな。」

これも可愛い孫のためだ。
なんて、笑いながら言ってくれた。

これでアーノルドが助かるんだ。と思ったら俺は、涙が止まらなくて、
ルイスを見上げると、ルイスの瞳も潤んでいた。


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