50 / 72
選べない…。
しおりを挟む「あのさ、これ。」
俺がこっちの世界に戻ってきてからもう3日も経ってしまった。
ルイスは元気かな。とか、結局子供はどうなったんだろう。とか。綾は仕事があるし、一日中ベッドにいるから暇で仕方がない。
当たり前だけど、以前は集中すれば少しは感じ取れた子供の気配もこの世界には無くて、俺にとってはこの世界が現実なのに。絶対なのに。
どうしてもあっちに戻りたいと思ってしまう。
そんな時に急に綾が差し出したものは、見覚えのある指輪だった。
「これ、事故の時に落ちてたって、もしかして、外してた?」
「当たり前だろ。なんでもうすぐ結婚する予定だった元恋人の指輪をはめなくちゃならないんだよ。そんなの未練タラタラじゃんか。」
「そう…だけど。」
綾が目を伏せる。
「でも!ずっとつけてたよ。お風呂入るときとかは流石に外してたけど、会社でもネックレスにしてつけてた。」
俺の急な言葉に驚きながらも綾の顔が明るくなっていく。
「そうか。」
「何にやにやしてるんだよ。綾最近気持ち悪い。」
「あっ。だって今までこんなに慧と一緒にいれたことなんて初めてで嬉しいんだよ。」
やっぱり綾気持ち悪いよ。なんでそんなに素直なんだ?
あ、そういえば気になってたことあったんだった。
「なぁ綾。正直に答えて。」
「うん。」
俺が真顔で真剣に話し始めると、さっきまでニコニコしてた綾も真剣な顔つきになった。
「俺さ、車に突っ込む前にお前と女が歩いてるの見たんだけどさ、どういうこと?」
息をつめて一気に話し終わると、綾を見た。
さっきまで真剣な顔つきだったはずなのに、もうその顔は破顔していて、めっちゃ笑顔。俺が惚れるくらいには。
なんでだ?
「なんで笑ってるんだよ。」
「俺っ嬉しくてっ!慧、ヤキモチ焼いてくれたってことでしょ!あのね、多分慧が見たのは従兄弟だよ。従兄弟の未亜。慧と別れた俺を慰めてくれたんだ。」
「そう…。」
「でも、ほんとによかったっ!俺、慧がいなくなったら生きてけないよ。」
「何ー?急に。大袈裟だっつーの!」
「もう慧が起きない間、気が気じゃなくて…。」
今まで?
あ。やばい。
なんか幸せすぎて忘れてた。絶対忘れちゃいけないのに。
てか俺死んでなかったんだな。
てっきり死んだと思ってた。
神?も俺死んだみたいなこと言ってなかったっけ?
どうなってんだろ?
俺、綾とルイスどっち選べばいんだろ。てか、まだルイスのもとに帰れるのかな。
「ん?慧、ぼーっとしてるけど、どうした?」
「ううん。なんでもない。」
ルイスに会いたいなぁ。
9
お気に入りに追加
1,660
あなたにおすすめの小説
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる