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え?現実?

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「……ぃ…けい……慧?」

目を覚ますと最初に出迎えたのは真っ白な天井。ってわけでもなくて、王宮か?って思うほどに無駄に豪華な天井だった。

「どこ……ここ。ルイ…ス?」

「慧!意識が戻ったのか!?」

誰だっけ。こいつ。


あぁ、綾か。


さっきまで隣にいた愛しい人の名前を呼んでも、聞こえてくる声は紛れもなく俺の"元"恋人のもので、正直ルイスと一緒にいた約何カ月かの間、さっぱり綾のことは忘れてた。なんて言えない。

「りょ……ぉ?なんで……ここに?てか、ここ…どこ。」

「ここは…その…俺の……家。」

は?なんかめっちゃ歯切れ悪いんですけど。どうしたお前。そんなキャラだったっけ?

てか、綾の家ってこんなに広かった?なにがなんでも豪華過ぎない?

思っていたことが全部口に出ていたようで、すぐさまその答えは綾の口から直接返ってきた。

「その…俺の実家。ここなら医療設備も整ってるし…。あの、さ。慧。」


「なに?」

「俺、隠してたけど、ってか嘘ついた。俺実は結婚するなんて嘘なんだよ…。」

急に放った綾の言葉に耳を疑う。

は?は???
いや、こいつ何急に言っちゃってんの?意味わかんないんですけど。

え?なんで嘘ついた?

「は?ちょっと状況理解できないんだけど、俺と別れたかったんなら直接言えばよくないか?なんであんな周りくどいことしたんだよ。」

問い詰めると、綾が下唇を噛んで耐えるような表情をした。

「なに?俺に言えない事?」

ルイスもそうだったけど、こいつも隠し事かよ。俺男の趣味悪いなぁ。

「なぁ綾。約束、覚えてる?」

「……あぁ。」

「じゃあ言ってみて。」

「嘘はつかない。相手の為を思ったとしても。絶対。」

「じゃあ話して。嘘つかないで。」

「いや……。」

「早く!」

まだ渋ってる綾にムカついてつい大声を出してしまった。

「わ、わかったよ。頼…まれたんだ。お前の親に。土下座して、これ以上慧を俺の遊びに巻き込まないでくれ。って。そろそろ解放してやってくれって。」

「は…?なにそれ……。」

たしかに俺の親は綾との付き合いを面白く思ってなかったけど、それはない。ありえない。酷すぎだろ。

「俺、親父と母さんに一言行ってくる。」

体を起こそうとすると、ズキっと全身に痛みが走る。

「いって……。」

「当たり前だろ。お前車に轢かれたんだぞ。」

「誰のせいだよ。」

じろっと綾を睨むと、バツの悪そうな顔で目線を逸らす。

「俺のせい……だよな。」

「違うだろ。俺の両親のせいだろ。お前は悪くないなんて言えないけど、お前なりに俺のこと考えてくれてたってことだろ。違うのか?」

「違わ…ない。」

綾の方を見上げると、耳と首が真っ赤に染まっていて、やっぱり綾だな。と心の中でこっそり笑った。

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