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番外編その1
闇にうごめく黒い影
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勇者ご一行が旅に出た頃、ミドル・アースに隣接する魔族の領域ロワー・アースの奥にそびえ立つ暗黒の城。
この城には数千年に一度、魔族を束ねる闇の王となるものが闇から現れるとされている。
ハイエルフの文献によると、闇の王の君臨により、それまで深い眠りに入っていた暗黒の城の中に火がともり、その脅威を知らしめるという。
「クリーチャーよ、此処へ」
長く漆黒の闇のようなローブを着た闇の王「ダーク・ロード」が小間使いの小鬼、クリーチャーを呼ぶ。
「我が闇の覇王、漆黒の破邪、ロワー・アース最強のクレーマー、ダーク・ロード様」
部屋の奥の闇から背丈130㎝、全身固い茶色の直毛で覆われた小鬼が姿を阿多わした。
「クリーチャーよ、その後例の一行は様子はいかがか?」
「ご報告します。ハイエルフのヴェーダ率いる一行は異世界から勇者とその同伴者をミドル・アースに連れ帰ったそうです、はい」
「なに!? ヴェーダを止められなかったのか?」
「申し訳ございません。邪魔をしようと 扉を抜ける時に魔法を放ったのですが、なぜか魔法が同伴者の男に当たり、彼の衣服が砕け散るほか、何の効果もありませんでした。」
「お願いします、怒らないでください!理不尽なまでに私を攻めたてないでください!炎上させないでください!」
「ちょっと最後のは今一意味が分からないが、とにかく落ち着け。彼らは今どこにいる?」
「ありがたき幸せ、ありがたき言葉!嗚呼、この下賤なクリーチャーになんとお優しい言葉。クリーチャーは心からダーク・ロード様に感謝いたします。」
クリーチャーはダークロードの足元にすり寄り一生懸命に媚びる。
「痛い!その毛は痛いって! いや、だからヴェーダ一行はどこかと聞いておる。」
「私めの様なヘドロにも劣る存在に対して御慈悲をかけていただけるとは、このクリーチャー・・・」
クリーチャーは更にダーク・ロードに媚びようとする。
かわいい小動物なら「スーリ、スーリ」となるところ、クリーチャー自慢の剛毛はもはやたわしで擦られているように、ゴーシ、ゴーシとダーク・ロードにすり寄る。
勿論、いくら闇の王とはいえ、この攻撃は地味に痛かったようで…
「ええい、鬱陶しい!しかも痛いと言っているだろうが!」
ダーク・ロードが手おあげると、クリーチャーの体に電気が走り、真っ黒に焦げた体を痙攣させながら床に倒れこむ。
「いい加減にせい!お前はたわしかっ!」
部屋の中にはゴミを焼いたような嫌なにおいが漂う。
クリーチャーに話の腰を折られ、いい加減疲れたダーク・ロードはクリーチャーが復帰するまでの間、部屋の窓を開け換気した後、魔岩石を覗き込んだ。
魔岩石とは小玉スイカ程の大きさの宝石で、目のような模様を施した魔法具。地球でいえばキャッツアイを大きくしたようなもので、魔法を注ぎ込むと魔力に関する知識を閲覧共有することができるものだ。もちろん、利用するものの魔法属性や注ぎ込まれる魔力や集中力によってみられる情報に差異が生じるため、決して万能とは言えない。
ダーク・ロードが魔岩石を見ていると、それまで床の上で丸焦げになっていたクリーチャーから黒焦げ部分が崩れ落ち、まるで脱皮したかのように小奇麗なクリーチャーが体制を整えていた。
「ダーク様、ひどいですよ~。死ぬかと思いました」
(いや、そこまでされて死なないほうが怖いわ)
と、ダーク・ロードがボソッと言う・
「兎に角、その後はどうした?」
「えっ? 誰がですか?」
ダーク・ロードがまた手を上げると、クリーチャーが慌てて答える。
「あっ、ヴェーダたちの事ですね。」
「そうだ。」
「えーとですね、実はですね…」
クリーチャーの声が急に聴き取れなくなる位になる。
「聞こえんぞ!」
「いえ、ですから…、実はですね…見失って…」
明らかに聞こえないようにクリーチャーの声がホソホソ声になる。
「もしや、ヴェーダ一行を見失ったと言うのではないだろうな?」
「…。」
クリーチャーはダーク・ロードの目から自分の目を離す。
ダーク・ロードがまたまた手を上げようとすると…
「持っ、申し訳ございません。ウルフベイン・シャイヤーに入ったところまでは突き止めたのですが、その後の消息がまだ分かったおりません。」
手を下げるダーク・ロード、魔岩石に戻り覗き込む。
「ウルフベイン・シャイヤーと言えば、『時の塔』が近くにあるようだ。その上途中には『闇の道しるべ』と『試練の壁』を超えぬと、先に進めない。ヴェーダの頭なら当分は大丈夫だろう。」
「ダーク様、『闇の道しるべ』と『試練の壁』とは一体何でしょうか?」
ダーク・ロードは魔岩石から二つの樹木の画像と巨大な壁の映像を壁に映し出す。
まず樹木の映像が拡大すると、ダーク・ロードが説明を始める。
「『闇の道しるべ』とは谷底にあるY路地に待ち構えている二本の老トリーアント(人語を介する樹木型の生物)の事を言い、谷底の道を旅するものを迷わすのだ。そのトリーアントは双子で、片方が必ず嘘をつく代わりにもう片方は必ず本当のことを言う。その上、見た目が全く同じなので、どちらが本当のことを言い、どちらが嘘を言うのかが全く分からない。旅人はここで読み誤り、誤った道に入ると、ミノタウロスが管理する迷宮に入り込んでしまう極悪な場所だ。」
「うわぁ~、えげつない!でも、結局当たり/外れは50%/50%だったら、強運で乗り越えられるのでは?」
ダーク・ロードは闇の道しるべの画像を閉じ、次に壁の映像を拡大する。
「その通りだ。しかし、その先に待ち構えているのがこの『試練の壁』だ。試練の壁とは、あのそびえたつタイタン族さえも越えない高さで、谷の出口に建てられているため、回り込んで回避することができないように作られている。」
「では、どのように抜けることができるのでしょうか、我が漆黒の伝道師様?」
「どうでもよいが、そんな中二病的な呼び方いい加減にやめろ!言われてている身にもなってくれ!」
「ハイ・・・ダーク様」
「分かればよい。試練の山には旅人の数だけ試練が用意され、その試練を各自すべて超えないと、先に進めないように設計されている。」
「兎に角、軍勢を引き連れ、闇の道しるべに行くぞクリーチャー!」
「御意!早速アイス・ベヒーモス軍を集めます。」
「集まったら出陣だ。報告を待つ。」
「あ、あの~ダーク様?」
「うむ?なんだ?」
「行く前に確認したいのですが、ちょっとお腹空いたので、おやつを持って行って良いでしょうか?」
「おやつって、別に遠足じゃないが、良いだろう。ちなみに何を持っていく予定だ?」
「ハイ、ゴキブリと便所興梠の佃煮があるので、それを持っていこうかと…。ダーク様ももしよかったら食べてもいいですよ?」
「いや、遠慮しておこう」
「別にいいですよ、ダーク様なら。これなんですが、おいしいですよ!」
クリーチャーは何処からか袋を出し、中のゴキブリと便所興梠を甘く煮詰めて作った佃煮を出してダーク・ロードに見せる。
「ええい!いらんと言ったおろうが!とにかく準備せい!」
――――――――――――――――――――――――――――――――
今回はちょっと毛色の違う番外編を書かせていただきました。
仕事が忙しく、前回の投稿からかなり時間がかかりましたが、今後はまたペースを上げて投稿していく予定ですので、ご期待ください!
この城には数千年に一度、魔族を束ねる闇の王となるものが闇から現れるとされている。
ハイエルフの文献によると、闇の王の君臨により、それまで深い眠りに入っていた暗黒の城の中に火がともり、その脅威を知らしめるという。
「クリーチャーよ、此処へ」
長く漆黒の闇のようなローブを着た闇の王「ダーク・ロード」が小間使いの小鬼、クリーチャーを呼ぶ。
「我が闇の覇王、漆黒の破邪、ロワー・アース最強のクレーマー、ダーク・ロード様」
部屋の奥の闇から背丈130㎝、全身固い茶色の直毛で覆われた小鬼が姿を阿多わした。
「クリーチャーよ、その後例の一行は様子はいかがか?」
「ご報告します。ハイエルフのヴェーダ率いる一行は異世界から勇者とその同伴者をミドル・アースに連れ帰ったそうです、はい」
「なに!? ヴェーダを止められなかったのか?」
「申し訳ございません。邪魔をしようと 扉を抜ける時に魔法を放ったのですが、なぜか魔法が同伴者の男に当たり、彼の衣服が砕け散るほか、何の効果もありませんでした。」
「お願いします、怒らないでください!理不尽なまでに私を攻めたてないでください!炎上させないでください!」
「ちょっと最後のは今一意味が分からないが、とにかく落ち着け。彼らは今どこにいる?」
「ありがたき幸せ、ありがたき言葉!嗚呼、この下賤なクリーチャーになんとお優しい言葉。クリーチャーは心からダーク・ロード様に感謝いたします。」
クリーチャーはダークロードの足元にすり寄り一生懸命に媚びる。
「痛い!その毛は痛いって! いや、だからヴェーダ一行はどこかと聞いておる。」
「私めの様なヘドロにも劣る存在に対して御慈悲をかけていただけるとは、このクリーチャー・・・」
クリーチャーは更にダーク・ロードに媚びようとする。
かわいい小動物なら「スーリ、スーリ」となるところ、クリーチャー自慢の剛毛はもはやたわしで擦られているように、ゴーシ、ゴーシとダーク・ロードにすり寄る。
勿論、いくら闇の王とはいえ、この攻撃は地味に痛かったようで…
「ええい、鬱陶しい!しかも痛いと言っているだろうが!」
ダーク・ロードが手おあげると、クリーチャーの体に電気が走り、真っ黒に焦げた体を痙攣させながら床に倒れこむ。
「いい加減にせい!お前はたわしかっ!」
部屋の中にはゴミを焼いたような嫌なにおいが漂う。
クリーチャーに話の腰を折られ、いい加減疲れたダーク・ロードはクリーチャーが復帰するまでの間、部屋の窓を開け換気した後、魔岩石を覗き込んだ。
魔岩石とは小玉スイカ程の大きさの宝石で、目のような模様を施した魔法具。地球でいえばキャッツアイを大きくしたようなもので、魔法を注ぎ込むと魔力に関する知識を閲覧共有することができるものだ。もちろん、利用するものの魔法属性や注ぎ込まれる魔力や集中力によってみられる情報に差異が生じるため、決して万能とは言えない。
ダーク・ロードが魔岩石を見ていると、それまで床の上で丸焦げになっていたクリーチャーから黒焦げ部分が崩れ落ち、まるで脱皮したかのように小奇麗なクリーチャーが体制を整えていた。
「ダーク様、ひどいですよ~。死ぬかと思いました」
(いや、そこまでされて死なないほうが怖いわ)
と、ダーク・ロードがボソッと言う・
「兎に角、その後はどうした?」
「えっ? 誰がですか?」
ダーク・ロードがまた手を上げると、クリーチャーが慌てて答える。
「あっ、ヴェーダたちの事ですね。」
「そうだ。」
「えーとですね、実はですね…」
クリーチャーの声が急に聴き取れなくなる位になる。
「聞こえんぞ!」
「いえ、ですから…、実はですね…見失って…」
明らかに聞こえないようにクリーチャーの声がホソホソ声になる。
「もしや、ヴェーダ一行を見失ったと言うのではないだろうな?」
「…。」
クリーチャーはダーク・ロードの目から自分の目を離す。
ダーク・ロードがまたまた手を上げようとすると…
「持っ、申し訳ございません。ウルフベイン・シャイヤーに入ったところまでは突き止めたのですが、その後の消息がまだ分かったおりません。」
手を下げるダーク・ロード、魔岩石に戻り覗き込む。
「ウルフベイン・シャイヤーと言えば、『時の塔』が近くにあるようだ。その上途中には『闇の道しるべ』と『試練の壁』を超えぬと、先に進めない。ヴェーダの頭なら当分は大丈夫だろう。」
「ダーク様、『闇の道しるべ』と『試練の壁』とは一体何でしょうか?」
ダーク・ロードは魔岩石から二つの樹木の画像と巨大な壁の映像を壁に映し出す。
まず樹木の映像が拡大すると、ダーク・ロードが説明を始める。
「『闇の道しるべ』とは谷底にあるY路地に待ち構えている二本の老トリーアント(人語を介する樹木型の生物)の事を言い、谷底の道を旅するものを迷わすのだ。そのトリーアントは双子で、片方が必ず嘘をつく代わりにもう片方は必ず本当のことを言う。その上、見た目が全く同じなので、どちらが本当のことを言い、どちらが嘘を言うのかが全く分からない。旅人はここで読み誤り、誤った道に入ると、ミノタウロスが管理する迷宮に入り込んでしまう極悪な場所だ。」
「うわぁ~、えげつない!でも、結局当たり/外れは50%/50%だったら、強運で乗り越えられるのでは?」
ダーク・ロードは闇の道しるべの画像を閉じ、次に壁の映像を拡大する。
「その通りだ。しかし、その先に待ち構えているのがこの『試練の壁』だ。試練の壁とは、あのそびえたつタイタン族さえも越えない高さで、谷の出口に建てられているため、回り込んで回避することができないように作られている。」
「では、どのように抜けることができるのでしょうか、我が漆黒の伝道師様?」
「どうでもよいが、そんな中二病的な呼び方いい加減にやめろ!言われてている身にもなってくれ!」
「ハイ・・・ダーク様」
「分かればよい。試練の山には旅人の数だけ試練が用意され、その試練を各自すべて超えないと、先に進めないように設計されている。」
「兎に角、軍勢を引き連れ、闇の道しるべに行くぞクリーチャー!」
「御意!早速アイス・ベヒーモス軍を集めます。」
「集まったら出陣だ。報告を待つ。」
「あ、あの~ダーク様?」
「うむ?なんだ?」
「行く前に確認したいのですが、ちょっとお腹空いたので、おやつを持って行って良いでしょうか?」
「おやつって、別に遠足じゃないが、良いだろう。ちなみに何を持っていく予定だ?」
「ハイ、ゴキブリと便所興梠の佃煮があるので、それを持っていこうかと…。ダーク様ももしよかったら食べてもいいですよ?」
「いや、遠慮しておこう」
「別にいいですよ、ダーク様なら。これなんですが、おいしいですよ!」
クリーチャーは何処からか袋を出し、中のゴキブリと便所興梠を甘く煮詰めて作った佃煮を出してダーク・ロードに見せる。
「ええい!いらんと言ったおろうが!とにかく準備せい!」
――――――――――――――――――――――――――――――――
今回はちょっと毛色の違う番外編を書かせていただきました。
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