アヴァロンの宝刀は勇者の夢を見るのか?

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第4章

ウルフベイン・シャイアーでの一日

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☆異世界九日目

打武流 (エグチ・ランスロット)の日記から

標準歴1813年○月×日

久しぶりのやわらかいベッドは本当に気持ちよかった。

窓から朝日が差し込み、部屋の中を照らしてくれる。

ベッドから体を起こすと、窓の外からにぎやかな音が聞こえてきたので窓を開けてみると、宿屋の前の広場が店や人でにぎわっていた。

広場の中心には噴水があり、こちらから見て左側には肉、魚、野菜、乳製品などので店が並んでいた。反対側には調理された食べ物を出している屋台が出ており、揚げパンやドーナツに似た香りが部屋の中まで香って来ている。

広場の奥には鍛冶屋があるようで「カチーン、カッカチーン。カチーン、カッカチーン」とリズムよく鉄をハンマーで均している音が聞こえてくる。

このウルフベイン・シャイアーは農家が多いため、朝はほとんどの住民が日の出とともに農作業に出て、教会の鐘が三度鳴るのと同時に仕事を終え、町の中心でご飯を食べ、夜の献立の素材の買い物をしたりするそうだ。

[因みに、この村の名前「ウルフベイン・シャイアー」はターシャから聞いたのだが、訳すとウルフベイン村を意味している。つまり、ミドル・アースでは村の事を「○○シャイヤー」と呼んでいる。また、中・大規模の街を「○○ブルグ」と呼んでいるようだ。]

そんな中、アーサーがロープを手に散歩に行きたいとせがんできた。

獣人化している以上、リードをつけて歩く必要がないとアーサーに伝えたものの、本人はなかなか納得がいかないようだが、まだ犬の時の癖が抜けていないんだろうね。

そのうち慣れるだろう、いや、慣れてもらわないと、他の三人に殺される…。



せっかくなので、朝飯食べに行くついでにシャイヤーを見て回ることになった。ヴェーダやシルバー爺さんを誘ったのだが、二人とも明け方まで飲んでいたようで、起きる気配もない。

ターシャの部屋に立ち寄って、誘ったところ、アーサーの護衛も兼ねて付いて行ってくれると言うので、三人シャイヤーに繰り出した。

お腹が空いていた事もあり、早速食べ物を売っている屋台へと行った。

お金は、ヴェーダの父親のハイエルフの王から貰っていた試験とは別に、道中倒してきたモンスターの部位を売った資金があると言われ、それで朝を食べることになった。

シャイヤーの朝市

最初に立ち寄ったのが、あの香ばしいドーナッツの香りのした食べ物を売っていた屋台だ。

屋台には「ポーフ」と言う、甘いナッツの味がするチーズを包んだソフトバール大の揚げパンが売られていたのだが、ターシャ曰くこの世界では一般的な朝食として食べられているそうだ。付け合わせとして、燻製肉を薄ーくスライスした「トーア」が出た。

このポーフ、ドーナッツのような甘い香りが特徴で、中のチーズがトロ―りとしているのだが、味は甘いピーナッツバター? 甘いがとにかく旨い!

付け合わせとして出されたト-アなのだが、生ハムのような燻製肉で、塩気が効いている。

[旅立つときには絶対予備を買い込んでおこう]

ポーフとトーアを食べ終え、広場を更に進むと、露店には見たことのない肉や魚、野菜などが並んでいた。部屋からは見えなかったのだが、フルーツ等を売っている露店もあった。

ターシャが言うには、ミドル・アースのフルーツの多くは体力の回復を始め、麻痺や毒などの異常状態からの回復などに使われている。このため、モンスターや野獣に出くわす事の多い旅には欠かせないそうだ。また、村人にとっても農業で毒虫や蛇などに襲われることもあるため、いつも数種類のフルーツを携帯しているという。

この先の旅のために数種類買うことになった。

肉や魚の屋台には、旅の料理に欠かせない日持ちするスモーク肉や魚が売られていたため、それらを購入した。

シャイヤーの住人

広場では、子供たちが「だるまさんが転んだ」と「鬼ごっこ」を足して二で割ったような遊びに没頭しており、露店の間を走り抜けるたびに大人に怒られていた。途中からアーサーの姿が見えないと思ったら、いつの間にか子供たちと仲良くなって、一緒に遊んでいた。

[探す身にもなってくれよ、アーサー]

そう言えば、ウルフベイン・シャイヤーの住民についてだが、見た感じでは基本的にはホビット族とヒューマン族で構成されている。

ホビット族(地方によってはハーフリングとも呼ばれている)は人間に比べて頭一つ背が低く、手と足が人間に比べて一回り大きい。性格は温厚で多種族に対しては好意的、我慢強い反面、生まれ育った地域から離れることはとんどないと言う。足の裏から自然に宿る魔素を吸収し、作物の成長を促したり、火を起こしたりと非戦闘用の魔法がいくつも使えると言う。

ヒューマン族は元の世界でいう「人間」とほぼ同で、ホビット族とは対照的に一か所に共住することにはこだわりがないため、行商人などにはヒューマン族が多いとされている。また、ヒューマン族の中にはターシャのようなワルキューレやバーバリアン等の戦闘を中心としたヒューマン族がいるようだ。自前で使える魔法はなく、政令などとの契約と呪文の演唱で初めて魔法が使えるそうだ。

[自分も頑張ったら魔法使えるのかな?]

シャイヤーにはホビット族やヒューマン族に交じって、獣人やドワーフなども数人住んでいるようだ。とは言え、獣人たちの多くは各々の種族でシャイヤーやブルグを構成し、住んでいるようだ。

ターシャに始め、ミドル・アースのヒューマン族の女性には綺麗な女性ひとが多く、どうしても目移りしてしまう。なんにかに声をかけたものの、軽くあしらわれてしまった(涙)。

ホビット族の女性は綺麗と言うよりも「かわいい」という感覚が近いのだが、温厚なホビットの男性とは対照的に、ヒューマン系の男性には敵意はないものの、全く興味が無いようだ。店で話しても、事務的な受けごたえしかせず、まったく世間話などには乗らなかった。

獣人系の女性(メス?)はホビットの女性よりは人間の男性には理解があるようで、世間話には乗ってくれて、シャイヤーの名物料理などを教えてくれた。

広場をさらに進むと、朝聞こえていた鍛冶屋を見つけたので覗いてみると、中には真っ赤になった蹄鉄を整形している鍛冶屋の赤紙のドワーフが作業していた。ターシャはドワーフの鍛冶屋と話し、一行の馬の蹄鉄の交換と、自分の剣の整備を頼んだ。

その後、シャイヤーを見回り、子供たちと遊んでいたアーサーを回収、宿に戻った頃には、すでに鐘が7回鳴っていたため、ヴェーダとシルバー爺さんと合流した。

ヴェーダは地図を部屋のテーブルに広げ、知識の書があると言う「時の塔」のルートを示した。ヴェーダ曰く約1週間かかるとのだと言う。

そこで翌日の朝一に出発することを決め、5人で食事をするため酒場へ行くことがきまった。

ミドル・アースの酒場

夕食にはあっさりとした鳥の丸焼きが出た。香辛料は多少きつめだが、肉自体はあっさりとしており、七面鳥に近い味がした。

シャイヤー等では水源が主に川や井戸からくみ上げている水を使用するため「生水」は飲めず、一度沸かしてから浄化作用のある柑橘系のフルーツの汁を混ぜ店などでは出している。味はレモネードに近いの。この他、ヨーグルト飲料に蜂蜜を入れたも「ヨード」も人気が高いそうだ。

生水が飲めないとなると、飲める物は酒類になるのが世の常。特にシャイヤー等では、祭りやたまの吟遊詩人以外の娯楽もないため、酒類などが飲まれている。

飲まれている酒は、主にビールに似た「エール」と蜂蜜酒の「ミード」、フルーツを発行して作った「サイダー」の3種類だ。シャイヤーなどでは冷蔵技術がないため、これらの酒はすべて常温で飲むそうだ。

ヴェーダは主にミードを飲んでいたが、シルバー爺さんはエールを浴びるように飲んでいた。

(明日本当に大丈夫なのかな)

ターシャはリンゴに似た「ナップル」を使ったナップル・サイダーを飲んでおり。アーサーと俺はヨードでご飯を流し込んだ。

明日からはまた野宿だと考えると、気が重いが、アヴァロンの剣を見つけないと元の世界に帰れない。

考えても仕方がないので、このまま寝るとしよう。
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