アヴァロンの宝刀は勇者の夢を見るのか?

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第三章

勇者御一行&おまけ旅立つ?

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☆ミドル・アース 二日目

散々ヴェーダたちとやり取りした挙句、どうあがいても自分だけでは元の世界に戻れないことを諭したランス。結局は勇者豪一行と共に旅立つ決心をした。

一行は大勢の国民に見守られ、木と煌びやかな建物で構成されるエルフの王国を陸路で後にした。

エルフの王国は深い森に囲まれており、見たことのない鳥や小動物が垣間見れ、樹々の間から太陽の光が柔らかく差し込んでいた。

ミドルアースの期待を抱えた三人は意気揚々とこの先の困難をものともしない勢いで、みつを進。

 「ランス、ランスゥ-。さっきの人たちすごかったね!多かったね!」
「ねー、ねー、一緒に行けて楽しいね!」

不安なランスをよそに無邪気なアーサーがはしゃぐ。

 「そのアヴァロンの剣を捕りに行くのはよくわかった。で、そのアヴァロンの剣って言うのは何処にあるんだ?」
 「うむ、実は細かい場所はわからないのでまず知恵の書を参照して探そうと思う。

 (おお、やっとそれらしくなってきた)

 「で、その知恵の書が貯蔵されている場所は近くにあるのか?
 「私も初めてだからあまり知らないが、地図に書かれている…。」

と、ヴェーダはカバンに手を入れる。

 「いや、昨日確かにもらったはずだが…シルバー持っていないか?」

オレンジシルバーは首を振り、

 「ヴェーダ様、儂は地図を一切持っておらんぞ。ターシャがお持ちでは?

ターシャも自分はないと首を振った。

三人はランスを見るも、

 「いや、だからなんで今朝まで部外者の俺が持っていることになるの?」

いきなり難関に突き当たった一行。
三人は必死に荷物の中を探していたところ、アーサーの容赦ないボケが飛んできた。

 「ねー、ねー、何探しているの?おやつ? チーズっておやつのことでしょ?」
 「お前はいいの。じゃなくて。あいつら地図を探しているだけだ。」

チーズじゃないことだとわかると、アーサーが落ち着く。

 「ねぇ、ねぇ、ランス。地図って、昨日ヴェーダが酔払って腰に巻いていた、あのへんな絵が描いてある布のこと?」

それまで必死に荷物を探していた三人の手が止まった。
思い起こすと、確かに昨夜の決起会でヴェーダが地図をまとってた。
…となると、もしや…?

 「その地図だったら、今日宮殿を出る時、浴場に干していたよ。」

アーサーのその一言で三人の顔が真っ青になった。

それもそのはず、あんなに盛大に国から送り出されたのにもかかわらず、肝心の地図を忘れてきたのである。一体どの面下げて王国に戻ればよいのか?

激しい議論の末、ヴェーダが王族の間でしか知られていない秘密の通路を使って取りに行くことに決定した。

 (本当にこいつら大丈夫かな?)
ランスの不安は募るばかりだ。







地図を取りに戻ったヴェーダを待つ間、ランスは残っている3人を観察していた。

―――獣人化しているとはいえ、行動は依然と変わらないアーサーは相変わらずの性格だ。周りが盛り上がると、首を突っ込みたくなったり、時折街道横の森で音がすると威嚇する。
まあ、威嚇するのはいいが相手が少しでも立ち向かおうとすると、アーサーはすぐに隠れる。
  最初は勇者として真っ青で由緒正しい「勇者の鎧」を渡されたものの、それ着たアーサーが全く動けないため、鎖帷子とドラゴンの鱗で形成された鎧を渡された。アヴァロンの剣を見つけるまで武器を持たせないわけにはいかないため、鋭い爪のような刃が収納できる手甲を使うこととなった。

―――ドワーフのオレンジシルバー爺さんは身長が約140㎝で樽のような体系だ。全身は鋼のように固い毛がびっしりと生えており、見事までのオレンジの髪と髭が特徴だ。「シルバー爺」とは言われているものの、年は95歳とドワーフとしてはまた若い。
  オレンジシルバーは一行のタンク的存在で、巨大なバトルアックスを片手で振り回し、もう一方の手には自分の身長とほぼ同じ高さのタワー・シールドを装備している。頭にはドワーフの象徴ともいえる左右に角のあるヘルメットをかぶっている、
  今回の冒険に加わったのは、父親から「もっと男らしくなって来い!」と言われて参加しているのだという。まあ、男らしさを多少勘違いしているようだが、そこはあえて突っ込まないようにしよう。

―――紅一点のターシャだが、彼女は女系で知られるワルキューレ一族の出身で、子供のころからヴェーダの許嫁として育てられてきた。身長は170㎝と高く、スタイルも申し分ない。褐色の肌に緑の目、おろすとお尻の先まである黄金の髪の毛は外ではさすがにポニーテールにまとめられている。基本アタッカー系の彼女の武器は150㎝ほどあると思われるロングソードを構える。鎧は相も変わらず、漆黒のプレート・アーマーの上に動きを妨げないように硬質の皮で作られた膝までのスカート、何か呪文が彫り込まれている黒色の小手と膝までのブーツだ。
  ターシャは許嫁としてこの旅に同行し、ミドル・アースを救ったのち正式にヴェーダと婚姻を議を執り行うことになっているようだ。しかし、許嫁とは言え、ワルキューレー一族は元来女性上位の一族。男性はあくまで飾りとして見られているようだ。ターシャ曰く、ヴェーダとの結婚はあくまで戦略結婚であり、結婚しても夜を共にすることはほとんどないそうだ。さすがのヴェーダも気の毒に思えた。

―――地図を忘れて取りに帰ったヴェーダはハイエルフで身長は190㎝と高い。実はエルフの身長に関して元の世界では諸説があり、トールキンの「指輪物語」のように長身だとする説もあれば、J.K.ローリングの「ハリーポッター」シリーズのように背が低いという説、はたまた人間とあまり変わらない、と様々な意見があるが、少なくともここではトールキン系のエルフで正しいようだ。オレンジシルバーによると、森にはさらに自然と共に生きる森の民のウッド・エルフや人間に近い身長のダーク・エルフなどもいるという。
  年はわからないと言われたのだが、見た目は20代の若造だが、オレンジシルバーによればすでに200歳を超えているという。ハイエルフは2000年以上の生きると言われており、ハイエルフ族の間ではまだ若造として扱われているという。
  ハイ・エルフ族は相手を剣やナイフで殺すことは良しとしないため、基本的には魔法を使った魔法での攻撃や支援を主にしている。また、周りの精霊の力を使った治癒などをも得意としているそうだ。着ている服はオリハルコンが編み込まれており、風の保護を受け真っ白のローブをまとっている。

―――そんな勇者の一行の中、ランスはと言うと…。拉致されたときに来ていた服は再生できなかったようで、結局唯一ランスに合う服がちょっと大きめの面のシャツに、麻製のズボン。防具には名ばかりの「革の鎧」、武器には「木の棒」…って、これRPGの初期装備じゃないの!?
  しかし、そんなランスにも救いの神が…。なんと、拉致られたときに持ってた鞄が無事だったようだ。
  数年前の大地震の後、打ち合わせのためにたまたま立ち寄っていた都内の出版社に取り残されたランスは、自宅までの20キロを5時間かけて帰った経験から、いつも鞄には仕事道具のスマホやタブレット、ソーラー対応の充電バッテリーが入っていた。さすがにネットは繋がらなかったようだが、購入済みの電子書籍は読めるほか、スマホのライトや方位磁石、カメラ等、後で役に立つかもしれない。

そう考えているところにようやくヴェーダが帰ってきた。

またなくされてはたまらないと、ランスは手持ちのタブレットで地図の写真を撮り、保存したのは言うまでもない。





一行は出足を少々くじかれたものの、ようやくアヴァロンの剣を探す旅に出たのである。

最初に一行が向かったのが知識の書があると言われる「時の塔」であった。

旅の途中、一行は様々な野獣や魔獣に出くわした。

3メートルあるとも思える大型のクマ「シルバーバック」に緑の肌をして数で攻め込むゴブリン、橋を渡ろうとすると襲い掛かるトロールなど、多種多彩であったが、そこはさすがに選ばれた者たちだけあって、オレンジシルバーとターシャの攻撃とヴェーダの援護射撃によってあっさりと打ち砕かれたのである。

アーサーも微量ながら小型のゴブリンなどを手甲の爪で応戦した。

そんな中、ランスはと言うと…、何にも役に立たないため、後方での荷物係を買って出た。

当然ながら夜ともなると、魔獣の出現率が増えるため、夜は後退でテントを守らなければいけなかったため、当然ながら疲れは蓄積する一行だった。


☆ミドル・アース八日目

そんな中、心の支えとなったのが、要所要所の村や町だった、

村や町の住人のほとんどはヒューマンと獣人が共に暮らしていて、宿屋をはじめとし、料理や、武器や、万事屋などがあった。

村に到着早々、ターシャとヴェーダは戦った野獣や魔獣からはぎ取った部位を売りに行き、オレンジシルバーとランス、アーサーは町中心部の宿で部屋を確保した。

部屋は当然ながらターシャの一人部屋と、ヴィーダ、オレンジシルバー、ランスとアーサーの4人部屋となった。

旅につかれた一行は、宿屋の一家にある食堂でご飯をとり、久しぶりの静かな夜を満喫した。

ランスは宿屋でのお風呂を期待していたものの、ミドル・アースでは一般市民には風呂に入る習慣がなく、体は川や湖などの行水で済ませるという。しかもドワーフ同様、エルダードワーフは元来水を嫌うため、多くとも月に一回ほどしか水浴びをしないようだ。

 (仕方がない。明日は「時の塔」の登頂に向けて体を休めよう…。)

そう思ったランスは、あくびをしたと思ったら、いつの間にか眠っていたのである。
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