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第二章
本当にそれでいいのか?勇者御一行とおまけ
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秋葉原のイベント会場裏で謎のコスプレ三人組に突然襲われたと思ったら、
異世界で目覚めたランス。
(本来のセオリー通りなら、女神が現れて「貴方は転生しました、代わりにチート級の魔法や腕力、特殊能力などを与えよう」などと言われ、異世界無双するのだが…)
「なのに…、勇者は俺じゃなくてアーサーだと!」
納得のいかないランス。そこへ
「ねっ!すごいよね!」
獣人化したアーサーだが、やはり根は柴犬。とにかく新しい環境や人が居ると嬉しくて仕方がないようだ。
「おいら獣人だと、ベッドに上がっても怒られないだって! ランス知ってた?」
そう、まだ犬だったころのアーサーはベッドに上がると、いつもランスに怒られていた。
しかし、ランスにはそんなことはどうでもいい。
「おい、これってまさかドッキリとか?」
「…いや、絶対ドッキリだ。編集部にはそんな依頼があってもやらないって言ってるぞ! 原稿落したろうか!?」
確かにランスはテレビの番組で有名人をだまして嘘の宇宙人と合わせたり、過去に戻ったと思わせたりするようなドッキリなどを見た覚えがある。
大抵の場合は、話に乗らず、適当なドアとかを開けたりすると、その裏にはカメラクルー等が隠れていたりする。
ランスはベッドから立ち上がり、光が差し込むドアに向かった。
「いや、ランス殿、それは待った方が…」
ランスを制止するヴェーダのを押しのけ、ランスがドアに手をかける。
「騙されないぞ、これを開けて外に出ると…」
ランスは勢いよくドアを開ける
<バン!>
「「「うぉ~~~!!!」」」
「「「きゃ~~~!!!」」」
大衆の中の女性数人が間をそらし、子連れの親が自分のこの目を覆っている行為をランスが見逃した。
「…何千人ものエルフ…やドワーフ…、ワルキューレ…、獣人…が歓声をあげている!?」
ランスは言葉を失った。
というのも、ドアの外は数千人ともいえる様々な種族の者たちで埋め尽くされていた広場を一望できるベランダであった。
外には強大な滝の前に広がる巨木の城の街。
空には青い太陽に火星を連想させる月、見たこともない巨大な鳥?が遠くの空を悠々と飛んでいる。
ここはアキバではない。そもそも地球でもない?
そう察したランスはすぐさま中に戻る。
「な、な、なっ、何なんだあれは?」
「外だが?」
実はヴェーダ、エルフ族でもまれにみるほどの「天然」だ。
「じゃなくて、外にいるあの人たち!」
ランスがすかさず突っ込む
「うむ、あの者たちはこの王国と隣国の民だ」
「いや、だから何であんなに集まってるんだ?」
「彼らはお告げの勇者様のアーサーが降臨したことを聞いて、一目見ようとわざわざ来てくれたのよ。私の国の屈強なワルキューレ第一、第二親衛隊が来ているわ。」
「たしか、シルバー爺さんとこのエルダードワーフさん達もわざわざ勇者を一目見ようと来ていたよね、シルバー。」
オレンジシルバーはターシャの問に頷く。
「じゃあ、俺が勇者じゃないんだったら、なんで俺が出ただけでそこまで騒ぐんだ?中には悲鳴も聞こえたような…」
ヴェーダは困った顔をして答える。
「いや、ですからランス殿を止めようとしたのですが、どうしても頑なに素っ裸のまま外に出るというので…」
ヴェーダの言うとおり、ランスは一糸まとわない格好で立っていたことに気が付く。
事の真相を知ったランスは真っ赤な顔ですぐさまベッドのシーツをはぎ取り、腰に巻く。
「な、な、な…」
言葉の出ないランス。対するターシャは相変わらずのマイペース。裸のランスに対して全く興味を示していなかなった。
「…ですから、異次元の扉を通った時、シルバー爺さんが引っ掛かったあなたの服をちょっと強引にひっぱったら、破けてしまったの。今、城の侍女たちに直させているわ。」
「まあ、そういうことじゃ。」
オレンジシルバーはさも当たり前のように頷いていた。
(シルバー爺さん、もうちょっと丁寧に扱ってよぉ~!)
ランスは心の中で叫んだ。
「ねー、ねー、ランス。おいらの着替え、可愛いピクシー達が手伝ってくれたんだよ!
獣人化したアーサーは相変わらず空気が読めないようだ。
と、ランスの脳裏によこしまな考えが…
「じゃあ、もしかして俺にも…?」
ランスは期待で胸(と体の一部)を膨らませたものの、その期待はすぐに打ち砕かれた。
「申し訳ないランス、ピクシーたちはアーサーはもともと犬だったので一人で服を着れないため特別にお願いした。勇者はアーサーなので…」
「いい大人が自分で服も着れんのか?
砕け散る期待に頭をガクッ、と落とすランス
「ですよねぇ~。」
---xxx---
城の大広間
本来は国の儀式を執り行ったり、来賓客が国王に謁見する際に使う場所だ。
壁には様々な家紋を彩った旗で彩られ、ヴェーダの父、つまり現国王が座る王座が部屋の奥に設置されていた。
左右の壁には歴代のエルフの英雄が着たとされる鎧が飾られていた。
オレンジシルバーによると、これらの鎧の多くはエルフしか着用が許されていないオリハルコン制であり、月夜の明かりが当たると、薄らと白く輝くという。
大広間は、来賓客や行事がない時には王族の共有スペースとして利用されており、巨大なテーブルといすが置かれている。
そんな大広間にランス達はいた。ランスはまだ自分の状況に納得していなようだ。
「それにしても、まだ信じられない。」
「ここが異世界…ミッド・ガルドだなんて」
「ミッド・ガルドではない、ミドル・アースじゃ。」
オレンジシルバーがランスを正す。
現実を見つめないランスとの押し問答にしべれを切らしたのか、ターシャがランスの手を自分をとり、そうっとの胸当てに添える。
いきなりのターシャの行動に驚くランス
「えっ!?」
「静かに! ほら、感じるでしょ私の生命の鼓動」
ランスは鼻を膨らまさせる。手のひらはワルキューレ特有の漆黒の胸当てを通してターシャのぬくもりと鼓動を感じた。
「ハイ!感じてます!すっごく感じてます!」
「これが現実以外の何だと言うの?」
ターシャの黒の鎧と長い金髪。ランスはつい…
「メー○ル、僕を9○9に乗せて機械の体をもらえる星に…」
ターシャは困惑した表情でランスを見る
「私はターシャよ、そのメー○ルとは何なの?」
ハット正気を取り戻したランス。
「い、いやこちらの話で…」
「そんなことはどうでもよい! ヴェーダ殿!」
オレンジシルバー和強引に話を戻すと、事の真相をヴェーダが語りだした。
「ここミドル・アースは様々な種族の英知の元、何千年もの間種族間では大した戦争もなく、平和が続いた。」
「もちろん、魔族との小競り合いは何度かあったのだが、統率が取れていない彼らの猛進を我々エルフとワルキューレの軍が幾度も蹴散らせた。」
「しかし、ここ最近になって魔族を統率するものが現れためか、魔族の間での統率が取れるようになったのか、それまで連戦連勝のわがエルフ軍は押し負かされ、ついには境界線近くの町が陥落した。」
「屈強に立たされた我々に女神からの神託が下りた。」
(なんかありがちな話だな。)
「で、その『神託』というのは?」
「ウム、まとめると『かの地にはミドルアースの闇と混沌に誘う闇の大魔王が降臨した。我々は異世界で生を受けた勇者を探し出し、と共にアヴァロンの聖剣を探し出しださなければいけないのだ。』」
「で、その何とかの剣を見つけたらどうなるの?」
「アヴァロンの剣だ。勇者がアヴァロンの剣をとり、その件で大魔王に傷を負わせれば、大魔王はその場で朽ち果て、ミドルアースは平和を取り戻す。」
「しかし、もし勇者より先に闇の大魔王がアヴァロンの剣を手に取れば、ミドルアースは魔族に蹂躙されるだろう。」
「で、なぜアーザーが勇者?飼い主が言うのもなんだけど、こいつかなりどんくさいぞ?…」
「それは儂から説明しよう。」
オレンジシルバーが話を続ける。
「闇の大魔王討伐に選ばれた儂らは神官によって明けられた異次元の扉を抜けた。すると、そこには数々の白い紙を使った経典が惜しげもなく陳列されていたのじゃ。」
「そこで見つけたのが、この聖なる経典だ」
オレンジシルバーはランスに「円卓の騎士」と書かれた薄い本、そう同人誌の束を渡した。
「この経典を解読すると『岩に刺さった男が円卓の騎士を引き連れて、悪の魔術使いを』倒したと書かれている」
ランスが同人誌を手に取り中身を確認すると、
「ちょっと待て!経典って、これはアーサー王伝説の同人誌じゃないの! しかも婦女子御用達のBL系!」
オレンジシルバーは「経典」をランスから取り戻し、懐に戻した。
「うむ、真の男の友情を詳細に描いた『経典』じゃ。」
(ああ、このドワーフまさかそっち系?)
ヴェーダが話を戻す。
「シルバー爺さんが経典を更に調べたところ、勇者の名前は『アーザー』ということが分かった。」
「そんなところに運よくお前がアーサーを連れてこの建物に入るのを見たのだ。」
「これを女神の更なる信託でなければ何なのか?」
話の間、ずっと大広間を嗅ぎまわってたアーサーが自分の名前を聞き皆のところに走り寄った。
「それがおいらってことだね!」
ランスは物語の主人公が自分ではなく、ペットのアーサーだとようやく悟った。つまり、自分は単なる「おまけ」だと…。ランスのプライドはズタズタだった。
「それじゃあ、俺はいらないってことだね」
「まあ、率直な話、そうじゃ」
オレンジシルバーの容赦ない公定がランスのプライドを更にえぐった。
「ランス、そんなこと言わないでよ。おいらランスがいないと寂しい。」
「なんで俺がペットのお前の腰ぎんちゃくにならなきゃあ、いけないんだ!」
「俺は帰る。」
「実は、そうもいかないんだよ」
ヴェーダが申し訳なさそうに言う。
「今のままでは、あなたは自分の世界には戻れないんですよ」
同然ながらランスが困惑する。大広間の中の空気が一気に重くなり、しーんとした。
「いや実はな」
オレンジシルバーが語る
「異次元の扉を通ってこの世界に戻る時、ヴェーダが誤ってお前んところの世界の座標が書かれた羊皮紙を落としてしまったのじゃ。」
「え?」
「そうなの、ヴェーダが途中で取りに戻ろうとしたとき、あなたを抱えて扉を抜けていたシルバー爺さんに当たっちゃって、その勢いであなたの服が扉に挟まったのよ。」
「いやぁ~、ランス殿、面目ない」
ヴェーダは多少申し訳なさそうにランスに誤る。
(って、ヴェーダ、帰れないのも数千人の前でストリーキングしたのも、すべてお前が元凶かい!)
「まあランス殿、「覆面はお盆に帰らない」と言うではないか?」
「はい?」
「ヴェーダ殿、それを言うなら「覆水盆に返らず」じゃぞ」
「服を着たらお盆に帰らず?」
(なんだこの残念エルフ、こんなのが王候補でこの国、本当に大丈夫なのか?)
ランスはさらに不安を感じる。
「兎にも角にも、あなたが自分の世界に帰るためにはアヴァロンの剣が必要なのよ。」
アーザーもすかさずランスを説得しようとする
「ランスぅ~、あいらたちと一緒にアヴァロンの剣探しの冒険に出ようよ!」
アーザーの説得を聞き、それまで掛け合い漫才していたヴェーダ、オレンジシルバーを含めた4人がランスの前に立ちランスの手を取る。
「そうです、ランス殿、我々勇者一行と共にアヴァロンの剣を目指そうではないか!」
「そうよ、一緒に闇の大魔王を倒しましょう!」
「そうじゃ、そして真の男の友情を目指そうではないか!」
(って、シルバー爺さんそれっ、本当に勘弁して…)
何はともあれ、ランスは元ペットのアーサーを筆頭とした勇者御一行の「おまけ」として冒険の旅へと誘うのであった…。
-------------------------------------------------------------------------------
さて、ようやく冒険に出た勇者御一行とおまけ。
彼等は果たしてこの先の困難を乗り越えることができるのか?
アーサーはアヴァロンの剣を発見することができるのか?
ランスは残念エルフのもとで本当にアヴァロンの剣を見つけることができるのか?
隠れ男色ドワーフから貞操を守れるのか?
そしてメー○ルは哲○と共に「機械の体を無料でもらえるという星」にたどり着けるのか?
そしてなんといっても、このミドル・アースでランスは本当の恋を見つけることはできるのか?
今後のストーリ展開に、こうご期待!
そして面白かったら、ぜひコメントください!励みになります!
異世界で目覚めたランス。
(本来のセオリー通りなら、女神が現れて「貴方は転生しました、代わりにチート級の魔法や腕力、特殊能力などを与えよう」などと言われ、異世界無双するのだが…)
「なのに…、勇者は俺じゃなくてアーサーだと!」
納得のいかないランス。そこへ
「ねっ!すごいよね!」
獣人化したアーサーだが、やはり根は柴犬。とにかく新しい環境や人が居ると嬉しくて仕方がないようだ。
「おいら獣人だと、ベッドに上がっても怒られないだって! ランス知ってた?」
そう、まだ犬だったころのアーサーはベッドに上がると、いつもランスに怒られていた。
しかし、ランスにはそんなことはどうでもいい。
「おい、これってまさかドッキリとか?」
「…いや、絶対ドッキリだ。編集部にはそんな依頼があってもやらないって言ってるぞ! 原稿落したろうか!?」
確かにランスはテレビの番組で有名人をだまして嘘の宇宙人と合わせたり、過去に戻ったと思わせたりするようなドッキリなどを見た覚えがある。
大抵の場合は、話に乗らず、適当なドアとかを開けたりすると、その裏にはカメラクルー等が隠れていたりする。
ランスはベッドから立ち上がり、光が差し込むドアに向かった。
「いや、ランス殿、それは待った方が…」
ランスを制止するヴェーダのを押しのけ、ランスがドアに手をかける。
「騙されないぞ、これを開けて外に出ると…」
ランスは勢いよくドアを開ける
<バン!>
「「「うぉ~~~!!!」」」
「「「きゃ~~~!!!」」」
大衆の中の女性数人が間をそらし、子連れの親が自分のこの目を覆っている行為をランスが見逃した。
「…何千人ものエルフ…やドワーフ…、ワルキューレ…、獣人…が歓声をあげている!?」
ランスは言葉を失った。
というのも、ドアの外は数千人ともいえる様々な種族の者たちで埋め尽くされていた広場を一望できるベランダであった。
外には強大な滝の前に広がる巨木の城の街。
空には青い太陽に火星を連想させる月、見たこともない巨大な鳥?が遠くの空を悠々と飛んでいる。
ここはアキバではない。そもそも地球でもない?
そう察したランスはすぐさま中に戻る。
「な、な、なっ、何なんだあれは?」
「外だが?」
実はヴェーダ、エルフ族でもまれにみるほどの「天然」だ。
「じゃなくて、外にいるあの人たち!」
ランスがすかさず突っ込む
「うむ、あの者たちはこの王国と隣国の民だ」
「いや、だから何であんなに集まってるんだ?」
「彼らはお告げの勇者様のアーサーが降臨したことを聞いて、一目見ようとわざわざ来てくれたのよ。私の国の屈強なワルキューレ第一、第二親衛隊が来ているわ。」
「たしか、シルバー爺さんとこのエルダードワーフさん達もわざわざ勇者を一目見ようと来ていたよね、シルバー。」
オレンジシルバーはターシャの問に頷く。
「じゃあ、俺が勇者じゃないんだったら、なんで俺が出ただけでそこまで騒ぐんだ?中には悲鳴も聞こえたような…」
ヴェーダは困った顔をして答える。
「いや、ですからランス殿を止めようとしたのですが、どうしても頑なに素っ裸のまま外に出るというので…」
ヴェーダの言うとおり、ランスは一糸まとわない格好で立っていたことに気が付く。
事の真相を知ったランスは真っ赤な顔ですぐさまベッドのシーツをはぎ取り、腰に巻く。
「な、な、な…」
言葉の出ないランス。対するターシャは相変わらずのマイペース。裸のランスに対して全く興味を示していなかなった。
「…ですから、異次元の扉を通った時、シルバー爺さんが引っ掛かったあなたの服をちょっと強引にひっぱったら、破けてしまったの。今、城の侍女たちに直させているわ。」
「まあ、そういうことじゃ。」
オレンジシルバーはさも当たり前のように頷いていた。
(シルバー爺さん、もうちょっと丁寧に扱ってよぉ~!)
ランスは心の中で叫んだ。
「ねー、ねー、ランス。おいらの着替え、可愛いピクシー達が手伝ってくれたんだよ!
獣人化したアーサーは相変わらず空気が読めないようだ。
と、ランスの脳裏によこしまな考えが…
「じゃあ、もしかして俺にも…?」
ランスは期待で胸(と体の一部)を膨らませたものの、その期待はすぐに打ち砕かれた。
「申し訳ないランス、ピクシーたちはアーサーはもともと犬だったので一人で服を着れないため特別にお願いした。勇者はアーサーなので…」
「いい大人が自分で服も着れんのか?
砕け散る期待に頭をガクッ、と落とすランス
「ですよねぇ~。」
---xxx---
城の大広間
本来は国の儀式を執り行ったり、来賓客が国王に謁見する際に使う場所だ。
壁には様々な家紋を彩った旗で彩られ、ヴェーダの父、つまり現国王が座る王座が部屋の奥に設置されていた。
左右の壁には歴代のエルフの英雄が着たとされる鎧が飾られていた。
オレンジシルバーによると、これらの鎧の多くはエルフしか着用が許されていないオリハルコン制であり、月夜の明かりが当たると、薄らと白く輝くという。
大広間は、来賓客や行事がない時には王族の共有スペースとして利用されており、巨大なテーブルといすが置かれている。
そんな大広間にランス達はいた。ランスはまだ自分の状況に納得していなようだ。
「それにしても、まだ信じられない。」
「ここが異世界…ミッド・ガルドだなんて」
「ミッド・ガルドではない、ミドル・アースじゃ。」
オレンジシルバーがランスを正す。
現実を見つめないランスとの押し問答にしべれを切らしたのか、ターシャがランスの手を自分をとり、そうっとの胸当てに添える。
いきなりのターシャの行動に驚くランス
「えっ!?」
「静かに! ほら、感じるでしょ私の生命の鼓動」
ランスは鼻を膨らまさせる。手のひらはワルキューレ特有の漆黒の胸当てを通してターシャのぬくもりと鼓動を感じた。
「ハイ!感じてます!すっごく感じてます!」
「これが現実以外の何だと言うの?」
ターシャの黒の鎧と長い金髪。ランスはつい…
「メー○ル、僕を9○9に乗せて機械の体をもらえる星に…」
ターシャは困惑した表情でランスを見る
「私はターシャよ、そのメー○ルとは何なの?」
ハット正気を取り戻したランス。
「い、いやこちらの話で…」
「そんなことはどうでもよい! ヴェーダ殿!」
オレンジシルバー和強引に話を戻すと、事の真相をヴェーダが語りだした。
「ここミドル・アースは様々な種族の英知の元、何千年もの間種族間では大した戦争もなく、平和が続いた。」
「もちろん、魔族との小競り合いは何度かあったのだが、統率が取れていない彼らの猛進を我々エルフとワルキューレの軍が幾度も蹴散らせた。」
「しかし、ここ最近になって魔族を統率するものが現れためか、魔族の間での統率が取れるようになったのか、それまで連戦連勝のわがエルフ軍は押し負かされ、ついには境界線近くの町が陥落した。」
「屈強に立たされた我々に女神からの神託が下りた。」
(なんかありがちな話だな。)
「で、その『神託』というのは?」
「ウム、まとめると『かの地にはミドルアースの闇と混沌に誘う闇の大魔王が降臨した。我々は異世界で生を受けた勇者を探し出し、と共にアヴァロンの聖剣を探し出しださなければいけないのだ。』」
「で、その何とかの剣を見つけたらどうなるの?」
「アヴァロンの剣だ。勇者がアヴァロンの剣をとり、その件で大魔王に傷を負わせれば、大魔王はその場で朽ち果て、ミドルアースは平和を取り戻す。」
「しかし、もし勇者より先に闇の大魔王がアヴァロンの剣を手に取れば、ミドルアースは魔族に蹂躙されるだろう。」
「で、なぜアーザーが勇者?飼い主が言うのもなんだけど、こいつかなりどんくさいぞ?…」
「それは儂から説明しよう。」
オレンジシルバーが話を続ける。
「闇の大魔王討伐に選ばれた儂らは神官によって明けられた異次元の扉を抜けた。すると、そこには数々の白い紙を使った経典が惜しげもなく陳列されていたのじゃ。」
「そこで見つけたのが、この聖なる経典だ」
オレンジシルバーはランスに「円卓の騎士」と書かれた薄い本、そう同人誌の束を渡した。
「この経典を解読すると『岩に刺さった男が円卓の騎士を引き連れて、悪の魔術使いを』倒したと書かれている」
ランスが同人誌を手に取り中身を確認すると、
「ちょっと待て!経典って、これはアーサー王伝説の同人誌じゃないの! しかも婦女子御用達のBL系!」
オレンジシルバーは「経典」をランスから取り戻し、懐に戻した。
「うむ、真の男の友情を詳細に描いた『経典』じゃ。」
(ああ、このドワーフまさかそっち系?)
ヴェーダが話を戻す。
「シルバー爺さんが経典を更に調べたところ、勇者の名前は『アーザー』ということが分かった。」
「そんなところに運よくお前がアーサーを連れてこの建物に入るのを見たのだ。」
「これを女神の更なる信託でなければ何なのか?」
話の間、ずっと大広間を嗅ぎまわってたアーサーが自分の名前を聞き皆のところに走り寄った。
「それがおいらってことだね!」
ランスは物語の主人公が自分ではなく、ペットのアーサーだとようやく悟った。つまり、自分は単なる「おまけ」だと…。ランスのプライドはズタズタだった。
「それじゃあ、俺はいらないってことだね」
「まあ、率直な話、そうじゃ」
オレンジシルバーの容赦ない公定がランスのプライドを更にえぐった。
「ランス、そんなこと言わないでよ。おいらランスがいないと寂しい。」
「なんで俺がペットのお前の腰ぎんちゃくにならなきゃあ、いけないんだ!」
「俺は帰る。」
「実は、そうもいかないんだよ」
ヴェーダが申し訳なさそうに言う。
「今のままでは、あなたは自分の世界には戻れないんですよ」
同然ながらランスが困惑する。大広間の中の空気が一気に重くなり、しーんとした。
「いや実はな」
オレンジシルバーが語る
「異次元の扉を通ってこの世界に戻る時、ヴェーダが誤ってお前んところの世界の座標が書かれた羊皮紙を落としてしまったのじゃ。」
「え?」
「そうなの、ヴェーダが途中で取りに戻ろうとしたとき、あなたを抱えて扉を抜けていたシルバー爺さんに当たっちゃって、その勢いであなたの服が扉に挟まったのよ。」
「いやぁ~、ランス殿、面目ない」
ヴェーダは多少申し訳なさそうにランスに誤る。
(って、ヴェーダ、帰れないのも数千人の前でストリーキングしたのも、すべてお前が元凶かい!)
「まあランス殿、「覆面はお盆に帰らない」と言うではないか?」
「はい?」
「ヴェーダ殿、それを言うなら「覆水盆に返らず」じゃぞ」
「服を着たらお盆に帰らず?」
(なんだこの残念エルフ、こんなのが王候補でこの国、本当に大丈夫なのか?)
ランスはさらに不安を感じる。
「兎にも角にも、あなたが自分の世界に帰るためにはアヴァロンの剣が必要なのよ。」
アーザーもすかさずランスを説得しようとする
「ランスぅ~、あいらたちと一緒にアヴァロンの剣探しの冒険に出ようよ!」
アーザーの説得を聞き、それまで掛け合い漫才していたヴェーダ、オレンジシルバーを含めた4人がランスの前に立ちランスの手を取る。
「そうです、ランス殿、我々勇者一行と共にアヴァロンの剣を目指そうではないか!」
「そうよ、一緒に闇の大魔王を倒しましょう!」
「そうじゃ、そして真の男の友情を目指そうではないか!」
(って、シルバー爺さんそれっ、本当に勘弁して…)
何はともあれ、ランスは元ペットのアーサーを筆頭とした勇者御一行の「おまけ」として冒険の旅へと誘うのであった…。
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さて、ようやく冒険に出た勇者御一行とおまけ。
彼等は果たしてこの先の困難を乗り越えることができるのか?
アーサーはアヴァロンの剣を発見することができるのか?
ランスは残念エルフのもとで本当にアヴァロンの剣を見つけることができるのか?
隠れ男色ドワーフから貞操を守れるのか?
そしてメー○ルは哲○と共に「機械の体を無料でもらえるという星」にたどり着けるのか?
そしてなんといっても、このミドル・アースでランスは本当の恋を見つけることはできるのか?
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