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第1章
7話、怪しい訪問者2
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ロビーの方に赴くと、まだ悶着は続いているようだった。
何とかして止めなければっ!
そう思い、いつも張りあげることの無い声をロビーに震わせた。
「おやめ下さい!!何事ですか!!」
私が張り上げた声に反応して、その場にいた皆の注目が集まる。
「お嬢様!!お部屋から出てはいけませんと坊ちゃんも我々も申したではありませんか!」
侍女達がドタバタと駆け寄り、焦った様子で私を諌めた。
(ううっ、、お許し下さいお兄様…。)
罪悪感に駆られるが、今はそれどころでは無いだろうと心を入れ替え、その様に言わせる原因を作らせたであろう訪問者に目を向ける。
そこには、目麗しい黒髪の身綺麗な青年が立っていた。彼は私を見ては目を丸くし硬直が解けない様子であった。
私はメデューサかと独りツッコミをいれるが、そんな事はどうでもいい。
何の用が誰にあって侯爵邸に訪ねたのか問いたださねばならない。
怪しい人物であれば速攻警備員につき出さねばと周りであたふたする使用人を気に留めずコツコツと訪問者に近寄った。
その時である。
「門の方にゴテゴテの装飾品がついた趣味の悪い馬車が止まってると思えば、やはりお前か!何の了見があってここに足を踏み入れた、早々にお引き取り願おう!」
兄が帰って来た!!突然の救世主さながらの登場に安堵する。
「ヴィンセントお兄様!!」
「シルフィ!?何故部屋から出て来てるんだい!?」
いい反応です…。
御免なさいお兄様、お約束破ってしまいましたわ。
兄はシュンとする私の顔色から何かを察したのか、ため溜息をつくと、こちらに駆け寄った。
「シル、いいかい?今見た事は忘れるんだ。辛い思いが蘇るだろ?さぁ、部屋に戻ろう。」
優しく話しかける兄の言葉の意味が理解できず私は足を止める。
「辛い思い?ですか?」
そう問えば兄はおかしな顔をする。
「シル、もしかしてあいつが誰か分からない?」
「私がわかるお方なのですか?」
ぶふっ!!!!
兄と使用人達が一斉に吹き出した。
なぜ笑うのですか!?
「はは、お前が分からないんだったら、きっと彼とは初対面だろう。」
若干、腑に落ちない気もするが気にせまい。
「ちょっと待て!!!何が初対面なものか!!お、おい、お前!!僕が誰なのか分からないのか!?」
突然会話に入り込む訪問者に多少驚き、彼を下から上までじっくりと見た。
初対面では無い?でも、私の記憶に彼はいない。
それにしても初対面でお前とは少し失礼ではなくて?
「人違いをなさっているのでは?」
きっとそうに違いない。
兄も私に続けて彼の帰宅を促した。
「はは、そういう事だ。さぁ、早く帰った帰った。お呼びじゃ無いよ。」
呆然と立ち尽くして動かない彼の綺麗な顔はどうしてか生気のない死んだ魚の様な目になった。
「嘘だろ、し、シルフィ、、」
見知らぬ彼が私の名前を呼んだ。それと同時に身体を何かが巡る。
「何でしょう…。この懐かしい感じ…。今、身体中に鳥肌と悪寒が走りましたわ…。」
私の発言に兄は笑い転げ、使用人は気まずそうに目をそらし、目の先の訪問者は遂にいつ倒れてもおかしくはない様なひどい顔色でしゃがみ込んだ。
どうやらこの自体、収集がつかられなくなりそうです。
何とかして止めなければっ!
そう思い、いつも張りあげることの無い声をロビーに震わせた。
「おやめ下さい!!何事ですか!!」
私が張り上げた声に反応して、その場にいた皆の注目が集まる。
「お嬢様!!お部屋から出てはいけませんと坊ちゃんも我々も申したではありませんか!」
侍女達がドタバタと駆け寄り、焦った様子で私を諌めた。
(ううっ、、お許し下さいお兄様…。)
罪悪感に駆られるが、今はそれどころでは無いだろうと心を入れ替え、その様に言わせる原因を作らせたであろう訪問者に目を向ける。
そこには、目麗しい黒髪の身綺麗な青年が立っていた。彼は私を見ては目を丸くし硬直が解けない様子であった。
私はメデューサかと独りツッコミをいれるが、そんな事はどうでもいい。
何の用が誰にあって侯爵邸に訪ねたのか問いたださねばならない。
怪しい人物であれば速攻警備員につき出さねばと周りであたふたする使用人を気に留めずコツコツと訪問者に近寄った。
その時である。
「門の方にゴテゴテの装飾品がついた趣味の悪い馬車が止まってると思えば、やはりお前か!何の了見があってここに足を踏み入れた、早々にお引き取り願おう!」
兄が帰って来た!!突然の救世主さながらの登場に安堵する。
「ヴィンセントお兄様!!」
「シルフィ!?何故部屋から出て来てるんだい!?」
いい反応です…。
御免なさいお兄様、お約束破ってしまいましたわ。
兄はシュンとする私の顔色から何かを察したのか、ため溜息をつくと、こちらに駆け寄った。
「シル、いいかい?今見た事は忘れるんだ。辛い思いが蘇るだろ?さぁ、部屋に戻ろう。」
優しく話しかける兄の言葉の意味が理解できず私は足を止める。
「辛い思い?ですか?」
そう問えば兄はおかしな顔をする。
「シル、もしかしてあいつが誰か分からない?」
「私がわかるお方なのですか?」
ぶふっ!!!!
兄と使用人達が一斉に吹き出した。
なぜ笑うのですか!?
「はは、お前が分からないんだったら、きっと彼とは初対面だろう。」
若干、腑に落ちない気もするが気にせまい。
「ちょっと待て!!!何が初対面なものか!!お、おい、お前!!僕が誰なのか分からないのか!?」
突然会話に入り込む訪問者に多少驚き、彼を下から上までじっくりと見た。
初対面では無い?でも、私の記憶に彼はいない。
それにしても初対面でお前とは少し失礼ではなくて?
「人違いをなさっているのでは?」
きっとそうに違いない。
兄も私に続けて彼の帰宅を促した。
「はは、そういう事だ。さぁ、早く帰った帰った。お呼びじゃ無いよ。」
呆然と立ち尽くして動かない彼の綺麗な顔はどうしてか生気のない死んだ魚の様な目になった。
「嘘だろ、し、シルフィ、、」
見知らぬ彼が私の名前を呼んだ。それと同時に身体を何かが巡る。
「何でしょう…。この懐かしい感じ…。今、身体中に鳥肌と悪寒が走りましたわ…。」
私の発言に兄は笑い転げ、使用人は気まずそうに目をそらし、目の先の訪問者は遂にいつ倒れてもおかしくはない様なひどい顔色でしゃがみ込んだ。
どうやらこの自体、収集がつかられなくなりそうです。
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