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頼れる兄が弟キャラとデキてて悔しい!
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頼れる兄(サトル)が弟キャラ(智太)と付き合ってるらしくて悔しい!(アオバ視点)
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バスでの移動中、大人の事情で出て行ったスタッフのおかげで 珍しく車内はメンバーだけになった。パーキングエリアに駐車したついでにトイレ休憩だと言われた。
車内に残ったのは、智太、サトル、アオバの3人。
智太とサトルは付き合っている。メンバーならもう解ってることだ。2人は付き合ってるけど目に見える場所でイチャイチャすることはない。どうやらメンバーに遠慮しているらしい。
(遠慮って言うか・・・配慮?)
智太とアオバに挟まれサトルは真ん中の席でスースー寝息を立てている。移動する時サトルが寝ているのはいつものことだ。
しかも一度眠るとサトルはそう簡単に起きない。そうとう大きい音を出しても寝続ける。
智太とサトルが付き合う前は、メンバー皆がもっと仲良い気がしてた。だけど今は、なんだかギクシャクしてる気がする。
2人のせいって言いたい訳じゃないけれど、アオバは2人のことを祝福できずにいる。
(俺の方が、サトル兄と仲良かったハズなのに。)
アオバが祝福できないのはヤキモチのせいだった。〝みんなで仲良く過ごせたらもっとずっと楽しいのに。〟そんなふうに怨み節に思ってしまう。グループ内に恋愛なんて持ち込まれたらやりづらい。
サトルを挟んだ向こうからゲーム音が聞こえてくる。智太がスマホでゲームを始めたらしい。
アオバにとって、サトルは頼れる兄のような存在だ。智太はと言えばゴールデンレトリバー。頼れる兄とゴールデンレトリバーがなぜ恋人になるのか。おかしい。へんだ。信じがたい。
車内という狭い空間でメンバーだけになるとつい気が緩む。
アオバは真ん中で眠るサトルを眺めながらつぶやいた。
「サト兄ってなんでトモと付き合ってんだろ」
・・・・・。
不意に、あまりよろしくない雰囲気で呼ばれて智太がアオバを見た。
アオバはあからさまに『やべ』って顔をする。その表情が智太のスイッチを押してしまったらしい。
「あ?なんつった今」
智太は大型犬の威嚇のごとく、強めの声を出す。
(げえ!!智太を怒らせた・・・!)「サトルってなんでトモ・・・友達好きなのかなって」
とりあえず誤魔化すアオバだが、智太は逃してくれなかった。
「は?さっき智太っつったろ」
「っなんだよ!聞こえてるなら聞き返すなよぉ!」
どうやら本格的に智太は怒り始めている。
「アオバもっかい言ってみろおまえ」
「だからー!なんでサトルはゴールデンレトリバーの智太と付き合ってんのか解んないって言ってるの!」
下手に言い訳すると更に怒らせてしまうだろう。アオバは素直に本音を打ち明けることにする。
「ハ?サトルが俺のこと好きだからに決まってるじゃん」
「はあ??サトルが智太のこと好きなわけ無いじゃん!」
「いやいや好きでしょ。俺の顔も好みらしいし?」
「あんなのテレビ向けの嘘だ!」
「嘘じゃありません~!」
大型犬ゴールデンレトリバーの智太がガルルと言い返す。
アオバはチワワのように見える。さながら大型犬と小型犬のケンカのようだ。
「なんで嘘じゃないってわかるんだよっ」
「俺に甘々だしぃ~」
「そんなこと言うなら、俺にだって甘いし!」
サトルがアオバに甘いのはメンバー全員が解っている。サトルは厳しい時もあるけれど、いちど心を許すと急にコロッと優しくなる。懐いてきた人に甘くなるチョロい兄なのだ。
兄であるサトルを同じ手法でコロッと甘くさせて、それをペロリと頂いた智太にとっては耳が痛い話である。
ゴールデンレトリバーと呼ばれる智太ですらサトル兄を恋に落とすことが出来ちゃうんだから、アオバだってサトル兄を恋に落とすことが出来るかも。サトルというのは、まったく心配になるほどチョロい兄なのだ。だから智太はいつも心配が絶えない。
「もううるさい!!殴るぞ!」
相手が誰であろうと油断できないけれど。油断できないからと言って本気で殴ることはできない。殴るなんて言うのはただの威嚇である。口だけのケンカ。それはアオバも解っている。
「そんな暴力的な考え方、サトルは嫌いだからね?!」
「はーはーはー!それはどうかなぁ~~!」
「どうゆう意味だよ!」
「うるせぇおまえも抱くぞ!!!!」
・・・つい。つい、そんなことを言ってしまった。
アオバが一瞬固まって、泣きそうな顔をした。
「・・・お、お前もって・・・」
無意識に言ってしまった『おまえ・も』という言葉は、つまり『サトルは 抱いた』という意味だ。智太がヤベッ、と思ったがもう遅い。
「うわぁぁあ『お前も』って言うなぁああ馬鹿ああ」
「あー!!うるせーっっ!!!」
「わかんねえ!!なんでゴールデンレトリバーなんかに!おかしいだろぉぉ!!!」
人間のことをゴールデンレトリバーと連呼するのはさすがに失礼すぎないか?!のんびり自由人の智太もさすがにちょっと落ち込み始める。でも言われっぱなしは悔しいから、奥義を使うことにした。
「ゴールデンとか言うけど。俺はサトルの夜の顔知ってるし」
「ひっ・・・・・・!」
再び泣きそうになるアオバを見て、智太は『勝った』という表情をした。
「お、おれだって・・・知ってるし」
「…あ?」
「サトルの夜の顔ぐらい知ってるし!」
「あーもーはいはい、わかった!いいよもう!」
「おれだって知ってるから!」
「うるさい!添い寝の顔だろ!?俺はサトルのえろいとこも知ってるから!!」
「お、おれだってエロいとこくらい知ってるし!!」
「はああ!?」
「サトルは俺にちゅーまでなら許すから!」
「はーはーはー!!っ俺には・・・」
・・・・・っむぐっ・・・
言いかけた瞬間、2人の真ん中で寝てたハズのサトルが智太の口を抑えていた。
智太はサトルが起きてた事に驚きつつ、顔を見る。
サトルの眼は『お前それ以上言ったら殺す』と言っている。
若干顔が紅い気もする。それを見て『あ、照れてる』と思わずニヤける智太。
逆サイドには『サトル兄起きてたの?!』とこちらも驚きの表情をしているアオバ。
サトルは智太の口を塞ぎつつ、振り返りアオバを見た。
こちらも『お前殺すぞ』という目をしている。しかし頬が紅いのでアオバも『サト兄、カワイイっ!!!』と思った。
「おまえら…、殺すぞ」
その眼光と声は、マジだった。先程まで紅かった頬もすっかり冷え切って、顔全体が青く見えるほどだ。かわいいサトル兄のガチなトーンのやつ。怒ってるときの声だ。
「「・・・はい・・・」」
これで智太とアオバのケンカは終わった。
暫くすると、再び眠りについたサトルの寝息が穏やかに車内に響き始める。スタッフはまだ話し込んでいるのか帰ってこない。
サトルの男っぽいところを見れば見るほど、智太は不思議で仕方がない。
窓の外を見ながら、ぽつり、今度は智太が呟いた。
「サトルはなんで俺と付き合ってくれてんのかなぁ」
「好きだからだよ」
寝息だったハズのサトルが微動だにせず即答して驚く。そして智太は、『あぁやっぱかっこいいなぁ』と見直した。かっこいい兄のサトル。だけどチョロくて甘くて可愛いサトル。格好良さも可愛さも持ってるサトルは智太のお気に入りだ。
「…おれ、煙草吸ってくる・・・」
空気を読んで席を外したアオバに感謝しつつ、2人は長いキスをした。
「あーぁ。なんでトモなんだろ。」
ゴールデンレトリバーのオモチャになっちゃったサトル兄。
可哀想だって思ってたけど、サトル兄もホントに智太のことが好きらしい。アオバは何となくショックを受ける。
ふたりの幸せを願っているけど、やっぱりなんだか受け入れがたくて悔しい。
(悔しいって言うか・・・、、、淋しい)
アオバの吐いた煙は、細長く伸びて行った
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バスでの移動中、大人の事情で出て行ったスタッフのおかげで 珍しく車内はメンバーだけになった。パーキングエリアに駐車したついでにトイレ休憩だと言われた。
車内に残ったのは、智太、サトル、アオバの3人。
智太とサトルは付き合っている。メンバーならもう解ってることだ。2人は付き合ってるけど目に見える場所でイチャイチャすることはない。どうやらメンバーに遠慮しているらしい。
(遠慮って言うか・・・配慮?)
智太とアオバに挟まれサトルは真ん中の席でスースー寝息を立てている。移動する時サトルが寝ているのはいつものことだ。
しかも一度眠るとサトルはそう簡単に起きない。そうとう大きい音を出しても寝続ける。
智太とサトルが付き合う前は、メンバー皆がもっと仲良い気がしてた。だけど今は、なんだかギクシャクしてる気がする。
2人のせいって言いたい訳じゃないけれど、アオバは2人のことを祝福できずにいる。
(俺の方が、サトル兄と仲良かったハズなのに。)
アオバが祝福できないのはヤキモチのせいだった。〝みんなで仲良く過ごせたらもっとずっと楽しいのに。〟そんなふうに怨み節に思ってしまう。グループ内に恋愛なんて持ち込まれたらやりづらい。
サトルを挟んだ向こうからゲーム音が聞こえてくる。智太がスマホでゲームを始めたらしい。
アオバにとって、サトルは頼れる兄のような存在だ。智太はと言えばゴールデンレトリバー。頼れる兄とゴールデンレトリバーがなぜ恋人になるのか。おかしい。へんだ。信じがたい。
車内という狭い空間でメンバーだけになるとつい気が緩む。
アオバは真ん中で眠るサトルを眺めながらつぶやいた。
「サト兄ってなんでトモと付き合ってんだろ」
・・・・・。
不意に、あまりよろしくない雰囲気で呼ばれて智太がアオバを見た。
アオバはあからさまに『やべ』って顔をする。その表情が智太のスイッチを押してしまったらしい。
「あ?なんつった今」
智太は大型犬の威嚇のごとく、強めの声を出す。
(げえ!!智太を怒らせた・・・!)「サトルってなんでトモ・・・友達好きなのかなって」
とりあえず誤魔化すアオバだが、智太は逃してくれなかった。
「は?さっき智太っつったろ」
「っなんだよ!聞こえてるなら聞き返すなよぉ!」
どうやら本格的に智太は怒り始めている。
「アオバもっかい言ってみろおまえ」
「だからー!なんでサトルはゴールデンレトリバーの智太と付き合ってんのか解んないって言ってるの!」
下手に言い訳すると更に怒らせてしまうだろう。アオバは素直に本音を打ち明けることにする。
「ハ?サトルが俺のこと好きだからに決まってるじゃん」
「はあ??サトルが智太のこと好きなわけ無いじゃん!」
「いやいや好きでしょ。俺の顔も好みらしいし?」
「あんなのテレビ向けの嘘だ!」
「嘘じゃありません~!」
大型犬ゴールデンレトリバーの智太がガルルと言い返す。
アオバはチワワのように見える。さながら大型犬と小型犬のケンカのようだ。
「なんで嘘じゃないってわかるんだよっ」
「俺に甘々だしぃ~」
「そんなこと言うなら、俺にだって甘いし!」
サトルがアオバに甘いのはメンバー全員が解っている。サトルは厳しい時もあるけれど、いちど心を許すと急にコロッと優しくなる。懐いてきた人に甘くなるチョロい兄なのだ。
兄であるサトルを同じ手法でコロッと甘くさせて、それをペロリと頂いた智太にとっては耳が痛い話である。
ゴールデンレトリバーと呼ばれる智太ですらサトル兄を恋に落とすことが出来ちゃうんだから、アオバだってサトル兄を恋に落とすことが出来るかも。サトルというのは、まったく心配になるほどチョロい兄なのだ。だから智太はいつも心配が絶えない。
「もううるさい!!殴るぞ!」
相手が誰であろうと油断できないけれど。油断できないからと言って本気で殴ることはできない。殴るなんて言うのはただの威嚇である。口だけのケンカ。それはアオバも解っている。
「そんな暴力的な考え方、サトルは嫌いだからね?!」
「はーはーはー!それはどうかなぁ~~!」
「どうゆう意味だよ!」
「うるせぇおまえも抱くぞ!!!!」
・・・つい。つい、そんなことを言ってしまった。
アオバが一瞬固まって、泣きそうな顔をした。
「・・・お、お前もって・・・」
無意識に言ってしまった『おまえ・も』という言葉は、つまり『サトルは 抱いた』という意味だ。智太がヤベッ、と思ったがもう遅い。
「うわぁぁあ『お前も』って言うなぁああ馬鹿ああ」
「あー!!うるせーっっ!!!」
「わかんねえ!!なんでゴールデンレトリバーなんかに!おかしいだろぉぉ!!!」
人間のことをゴールデンレトリバーと連呼するのはさすがに失礼すぎないか?!のんびり自由人の智太もさすがにちょっと落ち込み始める。でも言われっぱなしは悔しいから、奥義を使うことにした。
「ゴールデンとか言うけど。俺はサトルの夜の顔知ってるし」
「ひっ・・・・・・!」
再び泣きそうになるアオバを見て、智太は『勝った』という表情をした。
「お、おれだって・・・知ってるし」
「…あ?」
「サトルの夜の顔ぐらい知ってるし!」
「あーもーはいはい、わかった!いいよもう!」
「おれだって知ってるから!」
「うるさい!添い寝の顔だろ!?俺はサトルのえろいとこも知ってるから!!」
「お、おれだってエロいとこくらい知ってるし!!」
「はああ!?」
「サトルは俺にちゅーまでなら許すから!」
「はーはーはー!!っ俺には・・・」
・・・・・っむぐっ・・・
言いかけた瞬間、2人の真ん中で寝てたハズのサトルが智太の口を抑えていた。
智太はサトルが起きてた事に驚きつつ、顔を見る。
サトルの眼は『お前それ以上言ったら殺す』と言っている。
若干顔が紅い気もする。それを見て『あ、照れてる』と思わずニヤける智太。
逆サイドには『サトル兄起きてたの?!』とこちらも驚きの表情をしているアオバ。
サトルは智太の口を塞ぎつつ、振り返りアオバを見た。
こちらも『お前殺すぞ』という目をしている。しかし頬が紅いのでアオバも『サト兄、カワイイっ!!!』と思った。
「おまえら…、殺すぞ」
その眼光と声は、マジだった。先程まで紅かった頬もすっかり冷え切って、顔全体が青く見えるほどだ。かわいいサトル兄のガチなトーンのやつ。怒ってるときの声だ。
「「・・・はい・・・」」
これで智太とアオバのケンカは終わった。
暫くすると、再び眠りについたサトルの寝息が穏やかに車内に響き始める。スタッフはまだ話し込んでいるのか帰ってこない。
サトルの男っぽいところを見れば見るほど、智太は不思議で仕方がない。
窓の外を見ながら、ぽつり、今度は智太が呟いた。
「サトルはなんで俺と付き合ってくれてんのかなぁ」
「好きだからだよ」
寝息だったハズのサトルが微動だにせず即答して驚く。そして智太は、『あぁやっぱかっこいいなぁ』と見直した。かっこいい兄のサトル。だけどチョロくて甘くて可愛いサトル。格好良さも可愛さも持ってるサトルは智太のお気に入りだ。
「…おれ、煙草吸ってくる・・・」
空気を読んで席を外したアオバに感謝しつつ、2人は長いキスをした。
「あーぁ。なんでトモなんだろ。」
ゴールデンレトリバーのオモチャになっちゃったサトル兄。
可哀想だって思ってたけど、サトル兄もホントに智太のことが好きらしい。アオバは何となくショックを受ける。
ふたりの幸せを願っているけど、やっぱりなんだか受け入れがたくて悔しい。
(悔しいって言うか・・・、、、淋しい)
アオバの吐いた煙は、細長く伸びて行った
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