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メンバーは、見た!
その①・・・リーダーが、見た!
しおりを挟むなーんか2人の空気感がおかしいなーって思ってて、なんとなーく『付き合ってんのかな?』なんて思ってた。
ふたりが付き合ってたらどんな感じなのかなんて、想像したことなんてなかったけど、偶然見てしまった。
見たも見た、ガン見。
なぜってあんまりバレやすい場所でイチャイチャしてたから。
その時俺は飲み物でも買おうと自販機の前で悩んでた。
ペットボトル系からボタンを押すとカップに注がれるタイプ、カップ麺やお菓子なんかの自販機も揃えてるミニコーナーのようになってる場所。
何個もの機種が並んで奥まってて、暗くて妙な隙間がある。
夜中に来るとちょっと怖い場所だけど昼はそんなに嫌な気はしない。
何にしよっかなーって悩みつつ数分。
なんだか音が聞こえる気がする。
奥まってる例の隙間から人の気配を感じて、そこで誰か話してんの?と覗き込むと見慣れた背中、一瞬なにしてるのか見えなくて眉をしかめる。
奥にいるのはサトルで、2人が一生懸命になってキスしてるという事態を把握して声を失った。
そういえば最近2人は喋ることが増えた気がするし妙な空気感があったのだ。
その原因がコレだったんだと理解したら急に納得してしまって今度は頬があがる。
ん、ん、んっ、
夢中になってキスする2人を、思わずしっかり見てしまった。
あららーこんなとこでこんなサカっちゃって、この2人って燃え上がっちゃうとこんななっちゃうんだ~~~、ってゴシップ好きのオバちゃんみたいな気分になる。
にしても俺こんなガッツリ見てんのに気づかないんだな~~めっちゃサカっちゃってるんだけど、これほっといたらほっといたで、他の人に見られたら絶対ヤバいな~~
そんな事を思いつつ見てたら、奥にいるトロけた表情のサトルと目があった。
ボンヤリした目のまま数秒、それから我に返ったように目を見開いて凍ったように固まった。
動かなくなったサトルの目線に智太が気づいてこっちを見る。一瞬オスの目をしてた智太と目が合った。そして驚いて「っわわわ!!!なにっしてんのっ?!」と我に返った智太が慌てて振り返る。
サトルを隠そうとしてるらしくぎこちなく両手を振って。
「いやいや~そっちこそ、こんなとこで何してんの?」思わず俺はニヤケる。
「っ、あーーーー、っうん、ああ、見た?見たよね?見たか、見たかーーーあーー、そっかそっか」
動揺して妙な動きになる智太と、恥ずかしいらしく両手で顔を隠してるサトル。
「付き合ってんの?」
2人の関係がちゃんと『恋人』なのか、確認しないといけない気がして聞いた。
「………、まぁ、」と智太のぶっきらぼうな言い方は照れ隠ししてる空気感がリアルで。これはガチなんだなぁ~と思った。
「いつから?」ニヤケながら聞くと「……最近」と智太が短く答える。
「ふーん」
「内緒にしといて」
「うん、いいけど」
「っっあーーまじで、まじかー、あーーーー、ごめん、サトル」
奥にいたサトルはもう両手を外してて、「まあいずれバレるしね……」と赤い顔で言った。
「俺はいーんだけど、場所考えてね。俺結構長いこと見れちゃったし」
ちょっと意地悪してニヤケて言うと
「あーーーまじかーーーーーー」ってまた挙動不審な智太。
照れる2人は交際がバレちゃった中学生みたいで「なんかさぁ、かわいいね」ってついからかってしまう。
智太はもう黙っちゃって、かわりにサトルが「なんだよそれ」って赤い顔のまま困ったように笑った。
「2人がそんなにラブラブだったとはなぁ」
「も~、いいから」
「いやーーなんか可愛くって」
「あのさ飲み物買いに来たんじゃないのぉ?」
ツヤのあるサトルの声はもういつもの声で、「俺さき行ってるわ~」って若干落ち込んでるっぽい智太の声。
サトルは追いかけずに俺の隣で飲み物を買うのを待ってる。
コーヒーとカフェオレを買って、カフェオレはサトルにあげた。
「どうぞ」
「え、俺の分?」
「お祝い」
「はは、まじかぁ」
「良かったねー、実って」
「え?」
「けっこう前から好きだったでしょ」
そう言ったら、「……バレてた?」とまた照れ笑い。
「おめでと」
「……………………、ありがと」
そう言って、恥ずかしそうに下を向いたサトルはふわりと笑ったみたいだった。
ポンポン、思わず頭を撫でて、(こーゆーのも、これから気をつけなきゃかなー)なんて考えてまた頬が上がる。
智太もサトルも、本気で恋愛したらどんな風になるんだろう。
ハッキリは知らないけれど、きっと本気の相手には、嫉妬も独占欲も沸くタイプだろうなぁ、と予想が付く。
恋してるって感じでなんかカワイイな~
付き合いたてのカップルって良いな~~
なんだか応援したい身近な恋。
夏が終わって、秋のそよ風がひやりと駆け抜ける。
それは全然イヤなものじゃなくて、
爽やかな大人の、秘密の恋の始まりを見た気分になった。
end.
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