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健全黒字経営目指します!
洋書なんだ…
しおりを挟む第99話 洋書なんだ…
「じゃ、片付けはメシ食ったらな。」
そう言ってレオさんは俺を横抱きにしました…。
自然すぎて止められなかったぁ!
そのまま客間に抱っこ連行され、体調を慮った軽めの昼食を美味しく頂き、食後の優しい香りのお茶でまったり優雅な寛ぎのひと時…、なんて、おわー! めっちゃ絵に描いたようなオモテナシの休日すぎるぅ!! を堪能した後、昼寝へと寝かしつけられそうになったが、そこはキッパリお断りしてまた屋根裏へ戻った。一応腹ごなしと言う理由をつけて、2階までは自力(歩行介助付き)で。屋根裏までは…、うん、運ばれました。アーッ。
屋根裏でちょっと残ってた仕事、本棚に本を入れる為コンソールで本を作成するがすご~く困った事になった。
「…これはマズイわ。」
「…なんの本なんだ、これは。」
出来上がった本は英語で書かれてた。所謂洋書である。
「…レオさん、これ読める?」
「読めん。字も見た事がない形だ。」
「デスヨネー! これ俺の世界の本なんだけど、本棚に並べたら…?」
「あまり良くはねえな…。」
「デスヨネ…。」
ちなみに洋書はゲームの歴史(The history of the game)と言う本だった。内容は…、英語力高校生レベルの俺には全く読めないシロモノだったぜ…。マジ海外ゲーだよ、箱庭!
地球産の本が完全再現されてしまい、ボクは、ワタシは状態である。
「…もしかして、アレならイケるか?」
コンソールに指を走らせ、さっきとはレア度が格段に上がった特殊素材をポチポチ合成する。
箱庭に本は2種類存在する。普通の本と…、
「…いやアカン、これはアカン。」
「コウ、これは本なのか…?」
魔法アイテムを作る為の素材のひとつ、魔法書だ。尚、魔法と言ってもコッチみたいに魔法使いが魔力でオリャ~みたいな魔法じゃなくて、アイテムで物に属性や状態異常、もしくは異常回復の不思議ステータスをつける事を魔法扱いしている。その媒介となるのがこの魔法書だ。例とすれば火属性の魔法書と矢の合成で火矢。矢が当たると火がでる魔法の矢となる。
で、その媒介である魔法書なんだが…、
「微妙に光ってるけど一応、本ダヨ。魔法書なんだ。中は…、俺の世界の言葉。」
「ダメだろ。」
デスヨネ…。まさかボンヤリ発光する洋書とは、…いや魔法付与台に乗ってた魔法書光ってたわ。知ってたな、遠い記憶で。
「はあ、そんないかにもな魔法書なんて普通は魔法士団が管理するような門外不出のお宝だからな? 一応その辺の木箱に本なんかが入ってた気がするから、それを詰めよう。棚全部は埋まらんが物置の本棚ならスカスカでもおかしくはない。」
だからソイツはしまってくれ、とレオさんに諭された。はい、勿論です。ヤバ本はストックにナイナイしました。
そこからレオさんは木箱を漁って本を引っ張り出してきてくれた。昔流行った娯楽小説や子供向けの本などで、ご家族も読まないから置いていったそう。
最初は全部レオさんがやると言って俺に触らせない気満々だったが、横で椅子に座り本を読むフリしながら本棚に入れる手伝いをこっそりしてやった。途中までバレなかったぜ 笑。
ちなみにお子様向けのドラゴン討伐の本がページ数少ない割に面白くラノベ感覚で一気読みしたのはヒミツだ!
邪悪なドラゴンが棲みついてしまった遺跡で、チート気味な王子と近くの村の少女が手を取り合い討伐し最後は幸せな結婚する、まさに王道の冒険記。だが途中の謎解きがなかなか凝ってて、オチまでワクワクした。まさか、ドラゴンの弱点に…、おっと、閑話休題。
2台ある本棚のダミー側は半分くらい、もう片方は三分の一くらいに埋めて、いい感じに物置感を出してみた。
「うん、バッチリ。ありがとうね、レオさん。」
「コレくらいお安いご用さ。…それにしても懐かしい本ばかりだな。俺がガキの頃の本もある。」
レオさんは懐かしさか本の背表紙をそっと撫でていた。
「レオさんはどんな本が好きだった? 俺、この中だと『ドラゴニア物語』って話が面白かった。」
「ああ、それな。俺もガキの頃好きだったな。ハルトナ王子は強いんだが謎解きが滅法苦手で全然ドラゴンまで辿り着けないんだが、頭がいいアイシャがカバーするんだよな。最後は2人の知恵と勇気でドラゴンを倒す。当時この本はすごく流行ってな。本以外にも庶民向けに語り芝居なんかもされて、その当時のガキはみんな好きだったと思うぞ。」
そう言ってドラゴニア物語の背表紙まで指を滑らせトントンと叩いた。記憶の中のストーリーを思い浮かべているのかほんのり口角が上がっている。
「へえ、そんな流行ったんだ。でも確かに面白いもんね。」
ほあ~! なんと書籍以外に舞台(?)化も! これは俗に言うメディアミックスってヤツだな!
ドラゴニア物語、コッチの超ベストセラーラノベなのかもしれない。もし地球だったら絶対アニメ化してたよ。見たかった。惜しい。
「何処かの国であった話を元にしてるらしいから、余計人気が出たみたいだ。」
「えっ、実話? これ実話なの?」
「まあな。こんな子供が簡単に倒せるドラゴンはいねえと思うが。」
「ドラゴンいるんだ…。」
剣と魔法の世界だもんな。やっぱドラゴンもテンプレ通りいるんだなぁ。
「ん? …ああ、そうか、ひょっとしてコウの世界にはドラゴンいないってヤツか?」
「お察しのとおり。あっちじゃドラゴンは空想上の生き物。」
「なるほどね。コッチは話みたいに遺跡にいる邪悪なドラゴンなんてそうはいねえが、人が近寄れねえ秘境にはドラゴンってデカいトカゲみたいなのがいるんだ。」
挿絵のドラゴンは恐竜型ドラゴンだったが、やはりトカゲ扱いなんだな、ドラゴン。
「コイツら普段は姿見せねえんだが、突然ひょっこりやってき大暴れするヤツはいるな。龍人らの話によると、傍迷惑な事に腕試しで降りてくるらしいぞ。龍人がうまく説得して帰ってくれりゃいいが、ダメな時は軍やマーシナリーで討伐だ。」
…腕試し。コッチのドラゴン、一体何者…。
「…ドラゴンって魔獣の一種じゃないの?」
「うーむ、難しいとこだな。ドラゴンは賢くて種族的には龍人の仲間っちゃ仲間だが、龍人以外の人型じゃ話は通じねえし、野生の生き物とおんなじように野で暮らしてっからなぁ…。」
「えっと、普段は人は襲わない?」
「どうだろう…。だいたい遭遇する時は腕試しの最中らしいから、武装してればすぐ襲ってくるしかわからねえ…。ぶっ殺されたヤツはいるが食われたヤツはいねえから、餌ではないのは確かだと思うが。」
おうふ、コッチのドラゴン戦闘民族かな…。
「へ、へえ、そっか。餌じゃないってわかっても遭遇したくないね…。」
「そうだな。まあこの国でドラゴンが出たなんてとんと聞かないから、ここいらで会うことはないだろう。安心しな。」
なら良いけど!
本棚が完成したのでコンソールなどの片付けをし、屋根裏を後にした。
夜までは大分時間が余っているので、客間で箱庭内のリオガ探索やらリオガマップを作ったり、昨日買った荷物の整理をしたりした。
「…ねえ、レオさん。今更なんだけど、…俺さ、寝間着じゃなく、こっち着ればよかったんじゃない?」
ペロンと荷物からお出かけ用に買った服が出てきたワケだが。
「…あー、ソレすっかり忘れてたな。うん、すっぱり忘れてた。ソイツは明日着ればいいさ。あ、そうそう! 例の魔法錠頼んでくるから、ちょっとアルフのとこに行ってくるな? あの石を貸してくれ。かたどりに必要なんだ。」
「あ、うん。おんなじのいっぱいあるから、コレそのまま使って貰ってもいいよ。」
レオさんはダイヤを受け取ると、苦笑いでそそくさと客間を出て行った。
なんだかはぐらかされた気がするが、半日以上このヒラヒラネグリジェで過ごしちゃったから今更脱いでも洗濯なのは変わらんもんな…。脱いで、また新しいネグリジェ出てきても困るし!
荷物整理ついでにライターの魔道具やマントを弄ったり、明日の移動用の水を準備したりしたが、とうとうやる事が無くなりソファーに突っ伏した。
手持ち無沙汰にスマフォを見ると充電がかなり減っていて弄るのは戸惑われた。もしやタブレットもと思ってタブレットを見ると、スマフォよりは充電が残っているものの、明日を考えるとやはりこれ以上は弄れない感じだ。
「…あー、やる事ない。どうしよう。」
ソファーでゴロゴロしながらぼんやり暇つぶしの方法を探る。
漫画も小説もほぼ電子書籍にしてるから、現代日本人、隙間時間にデジタル機器ないと意外に困るでござるの巻だ。
「箱庭の本は洋書で読めないし…。モバイルバッテリー充電しとけばよかったなー。」
一泊旅行のつもりだったから、モバイルバッテリーまで気が回らなかったよ。次は準備しよ…。
なんて考えてたら、いつの間かスコンと寝落ちしてしまった…。
応援ありがとうございます!
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