98 / 101
健全黒字経営目指します!
秘密の屋根裏
しおりを挟む第98話 秘密の屋根裏
「なるほど~! セキュリティ面に配慮ね! それじゃ、外側はプロにお願いしようかな。かかった料金は払うので後で領収書付きで請求して。」
勿論経費でね!
ダンジョンに関わるネタだから落ちる気はするが、自腹はあんまりしたくないっすわ。落ちてくれ下さいイケオジ様経理様サマ~(経理課あるかわからんけど…)
心の中でかしわ手をパンパン打って祈りを捧げた。
現地産の魔法錠(偽)を設置できそうとなると中々いい感じに纏まりそうだ。やはり箱庭産のオブジェクトはコッチの世界のモノとは微妙にティストがズレてるから、木を隠す森になりきれないような気がする。広葉樹の森かと思ったらジャングルみたいな、おい森が目立ちすぎてんじゃん! のティストずれ。…なんとか自然な広葉樹に寄せてくぞ。
さあ、ここからは仕掛けの詳細設計だ。
違和感ない屋根裏に仕立ててつつ、しっかり隠し部屋。頭の中の図面を落とし込む。と、その前に…、
「レオさん、レオさん。」
「なんだ?」
「これから1時間…、1タトくらい部屋の改造するから、もしやる事あるならソッチ優先してね。俺、箱庭に集中しちゃうと周りに配慮できないからさ。」
さすがに1時間もお構いできないのは悪いと思いまして…。周りが見えないタイプ(箱庭限定)なのでね…。
「あー…、確かこの前もそんな感じだったな。そうだな、俺もこっちに仕事持ってくるか。」
「是非そうして。あ、机と椅子はワタクシがご準備いたします~。」
「ははは、サービスいいな。」
じゃあ、書類とってくるとレオさんは屋根裏から出て行った。
では始めますか。
改造しない側にレオさん用の机と椅子を出し、俺用に作業台を設置する。コンソールで地図(小)を作り、部屋に割られたマス目数を確認する。ふむふむ、壁面用家具は本棚2台とタンス2棹くらいが違和感ないな。物置だからあんまり隙間なくぴっちりは不自然…あ、少し隙間が空きすぎか…。元からある木箱を挟んでかな。
ダミーの仕掛けは部屋に入ってすぐ目が行く対角線上側ではなく、わざと真横側奥。何かあると思わせぶりが大事。ここは本棚2台並べてしまおう。一番端がダミー魔法錠付きで隣は普通のね。念の為力技で本棚が動かされた時用に、ダミーの後ろに空の小部屋を作っておく。はっはっはー、超思わせぶり部屋だ。ガッカリしてね!
さて、ダミーはこんなもんで次は本命だ。対角線上の角に空のキャスター付きタンス。多分、ダミーに引っかかってるヤツなら魔法錠がなければタンスの戸を開けて中身を見る程度で終わると予想。
なので敢えてその入口には小賢しい仕掛けは作らない。シンプルに空のタンスの後ろにドアだ。もし上手い事それに気づいてタンスの仕掛けを抜けるとポータルの部屋になるが、ここでひと罠。
ポータルはドアと同じ壁につける。ポイントはドアの戸板。閉めて振り向かないと見えないように押し戸の死角を利用する。これは単純な仕組みだが、急いでいる者にはよくキく。
それっ、キーボードカタカタッターンッ! ならぬ、コンソールシュパパパパーンッだ!!
「フハハハ! さすが箱庭人気配信者の俺ちゃん、天才的ナイス隠し部屋!」
「ははは、楽しそうで何より。」
「はひっ?!」
レオさんがニコニコと机で頬杖をつきながら、俺のコンソールシュパパパパーンッを見守っていた…。熱中しすぎて存在忘れてた…。
「…忘れて、全て忘れて。」
自称人気配信者天才俺ちゃんは記憶から消してくれい…。この歳で黒歴史ページ更新はしんどい…。
「無理だな。コウのそう言うトコ、俺は気に入ってるからな。で、今だいたい1タトくらいだが、隠し部屋は出来たのか?」
…うっ、どんなお気にだよ、ソレぇ。ちょっとレオさんのお気にのツボわかりませんけど?!
「…ぐぬぅ。…ええと、配置はこんなモンで。後は現物確認して、調整するかどうかかな。」
「そうか。じゃあ、その渾身の仕掛け見に行くか。ホラ、掴まれ。」
ずいっとレオさんが手を差し出して、多分抱っこの構えだ。
「…いや、この椅子押してくれればいいから。」
抱っこ拒否です!
ふふふ、何故ならこのコンソールについてる椅子はゲーミングチェア…、即ちキャスター付きだ!
つまり車椅子ですね(ニッコリ)
「…(チッ)」
…今ちっさく舌打ちしたぞ、この人。
「あ、無理に押さなくても大丈夫。これ、めっちゃ軽く進むからね。っえい!」
軽く床を蹴ってチェアでススーッと進む。俺、結構この椅子移動好きなんだよな。会社でよくやってた 笑。
「…なんだ、そのおもしろ椅子。椅子のクセに車みたいに移動できるのか。コウの世界の物はよくわからない方向に進化してるな。」
追いついたレオさんは微妙な顔で、チェアの背もたれを持ってゆっくり押してくれた。
…うん、そうだね。俺も地球の椅子の進化の方向、ちょっとおかしい方向だと思うわ。
「ははは、ホントにね。んじゃあ、まずダミーのほうから見よっか。あっちの棚側に移動お願いしまーす。」
「ん、わかった。」
カラカラとチェアを本棚側に押してもらう。
「これがダミー。今は本が入ってないけど、こちらの定番隠し扉に則り本棚。後で適当な本をいれます。で、こっちの壁に魔法錠をつける予定ね。えーと、ここはダミーなので動かす仕掛けじゃないが前提だけど…、」
ポチりとタブレットで本棚を動かす。
「念の為、騙し用に裏に何もない小部屋をご用意致しました~。」
本棚の裏はドア無しでバーンと小部屋です。いかにもここがお宝部屋ですよって言う俺のイメージで。
「…全然ダミーじゃねえ。」
ぼそっとレオさんが呆れた顔で呟いた。
「なんなら宝箱くらい置いてみる?」
空の宝箱とかね。開けた瞬間ガッカリ間違いない 笑。
「コウ、わざわざそんなの置いて何の意味があるんだ…。」
「意味は、…ないなあ。コホン。えーと、気を取り直して次行ってみよー!」
本棚を戻して、今度はアチラとタンスにチェアを押してもらう。
「ここが本命か?」
「うん、そう。コッチは空のタンスと木箱で使ってない感を出してみました。で、レオさん、そこのタンスを前に引っ張りだして。下に車輪が付いてるから、そんな力いれなくていいよ。」
「わかった。…ん? 確かに見た目より軽く動くな。これは普通にあっても便利じゃないか。おっ、なるほど後ろにドアか!」
さっきよりワクワクしながらレオさんがタンスの戸を持って引っ張り出すと、裏から上手い具合にタンスと同じ高さのドアが現れた。うんうん、箱庭の表示どおり。まさにシンデレラサイズってヤツだネ。
「たまたまタンスの後ろにドアがありましたみたいな方がいいかなって。…よっこいせ。じゃあ、このドア開けてみてよ。」
レオさんにドアを開けさせる。
開けるとさっきより広めの何もない小部屋が見えた。
「…あのグニャグニャは?」
よし! 思惑どーり!
「んっふっふっふっ、ドアの横~。」
ドヤ顔であっちあっちと死角側を指差す。
レオさんはドアから死角側を覗いた。
「おおっ、そう言う事か! 死角を利用とは…。凄いな、コウ。」
コチラに向き直ったレオさんはいい笑顔でサムズアップしてくれた。
「単純だけどいいでしょ? 下手に弄るよりはシンプルな方が目立たないと思って。自信作です(ニッコリ)」
レオさんを小部屋の中に促して、俺も内覧会だ。
うんうん、ドアの所しっかり死角が働いてる。簡単にはアストラポータルは見えない。配信してもいいレベルに仕上がってる。
「この部屋には何か置くのか?」
レオさんがポータルしかない小部屋を見まわし聞いてきた。
「敢えて何も置かないかな。俺視点の話だけど、ザッと見て何もないって思わせる方が中に侵入されるリスクが減るかなって思った。」
「なるほど。確かにそうかも知れない。下手に荷物があると、それを漁りに行こうとするアホが沸くかもしれんな…。コウは本当に凄いんだな。神に呼ばれるだけある。」
「いやぁ、そんな褒めないで~。褒めても水晶玉しか出ないからね~?」
「…それは出さなくていい。しかし、これだけの仕掛けをものの1タトで考えて作るとは…。帝都の設計士も裸足で逃げ出すな。」
レオさんがめっちゃ褒めてくるぅ!
ヤバい、デレちゃうぞ俺ぇ 笑。
「ははは、マジ? 俺、帝都の設計士になれちゃう? って言って、コレくらいしか俺に自慢出来る事ないからね。あとだいたいは神様パワーで何とかしてるから、本物の設計士さんには敵わないよ。」
悔しいが俺はただの箱庭職人だから、きちんと図面ひいてちゃんとした建物は作れない。もし本職の設計士さんに勝てるなら…、思いつきだけだなぁ。面白おかしくするタイプの。
「コウは本当に控えめだな。そう言う謙虚な所もいい。」
ポンポンと頭を撫でられる。
…ほんと、ポンポンするの好きだな! もう!
「…謙虚さは日本人の気質ですから。」
「ははは、コウの国はみんなそうなのか。なかなか平和そうだ。さて、そろそろ昼メシの時間だ。特にやる事ないなら下に降りよう。」
「あ、もうそんな時間なの。特にここでやる事はないからオッケー。」
「じゃ、片付けはメシ食ったらな。」
そう言ってレオさんは俺を横抱きにしました…。
自然すぎて止められなかったぁ!
0
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで
伊月乃鏡
BL
俺の名は田中宗介!
どこに出しても恥ずかしい隠れコミュ障だ!
そんな俺だが、隠れコミュ障ゆえの初手ハイテンションでチャラ男認定されてまぁ大変! 今更コミュ障なのがバレるのもチンケなプライドが傷つくのでチャラ男のフリをしている!
友達が著しく少ない以外は平凡な日常を送っていたはずの俺だけど、何故かあの、憧れの生徒会長と同室になっちゃって……!?
しかも転校生が何故か俺に懐いてきて、同じ委員会にまで入ってきて!?
懐いてきてくれてるのかなコレ!? わかんないコミュ障だから!! 後輩に懐かれた経験、“無”だから!
薄い二年間を送ってきた俺の最後の一年。
憧れの会長と急接近、とまではいかないけど友達くらいになれちゃったりするかな!?
俺一体、どうなっちゃうの〜!?
※
副題 コミュ障と愉快な仲間たち
【追記】
現実の方が忙しくなったため、一日一話以上更新になります。

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる