異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

文字の大きさ
上 下
92 / 101
健全黒字経営目指します!

ほう れん そう

しおりを挟む

第92話 ほう れん そう



 なんでこんな事に…。そんな溜まっていたのか?…いや、不本意ながらそんな溜まってはいなかったよ、こっちにきてからさ…。アーッ、な事ありましたよ。アーッ…。

 しかし今はそれは置いといて、ムズつく下半身とうるさい心臓におさまれー! おさまれー! とひたすら念じる。
 素数だ、素数を感じろ…、2、3、5…、…7、って素数なんだっけ…1余るヤツ…? あ、違う。ダメだ、数で無になれない。
 ええと麺の種類は、蕎麦、うどん、素麺、中華麺、スパゲッティ、パスタ、…あ、とんこつラーメン食いたいな。住んでるトコの駅近くにあるほうすけ亭のみそとんこつ。ランチはライスつけると自家製キムチ食い放題になんだよね、あそこ。
 最初は純粋にとんこつラーメンを楽しんで、後半戦にラーメンへキムチインすると二度美味しいんだわ。あの自家製キムチ、こってり濃厚とんこつとめっちゃ相性いいんだよね。はー、食いたい…。
 せめて俺が料理上手だったら食チートして再現がんばっちゃうんだけどなあ。さすがに素人にラーメンなんて作り方わかりません!


コンコンコンッ

「ふえっ?!」

 突然ドアがノックされた。
 えっ、何?! これって返事した方がいいヤツ?! …うう、レオさんいないし、返事するしかない??

「……は、はいっ、ど、どうぞっ、」

 ドアが少しだけ開き、チラリと執事さんっぽい男の人が見えた。あ、あの人がアルフさんかな?

「おくつろぎの所大変申し訳ございません。私、使用人のアルフと申します。お館様からコウ様へタオルをお持ちするようにと申しつかっております。そちらへお運びしてよろしいでしょうか?」

 はわああ、話し方丁寧すぎ! めっちゃ執事さんっぽい!

「あっ、はいっ! 大丈夫ですっ!」

  ハッ?! 勢いでオッケーしてしまったが、俺めっちゃだらしない格好だぞ?! しかもお布団の住人だぞ?!
 慌てて隠れるように布団の中に潜り込む。
 その気配を合図に、アルフさんがワゴンを押して部屋に入ってきた音がした。

「ああコウ様、どうかお気になさらず…。すぐおいとまさせていただきますので。ベッドの横にタオルをご準備しております。どうぞこちらでお身体をお清め下さい。程よく温めておりますが、お体に障るようであればすぐかわりをご準備いたしますのでお呼びくださいませ。では、失礼いたします。」

 言葉通りアルフさんはすぐ部屋を出て行った。
 ドアが閉まる音が聞こえたので、モゾリと布団から顔出す。ベッドの横につけられたワゴンには、濡れタオルがおしぼり状に丸められて3本程乗っていた。勿論、乾いたタオルも準備されている。
 ベッドの端まで移動してよっこいせと座り、おしぼりタオルを取る。こ、これは!

「あー、これお店で出てくるあったかいおしぼりだー。」

 オッさんが喜んで顔拭くレベルのほっかほかおしぼり…。リアル執事さん気遣いのプロだ…。
 広げたおしぼりで顔を拭く。思わず、はー、きもちいー、とか声が出てしまうぜ…。あったかいおしぼりはオッさん殺しだな…。最高…。
 顔や首筋を拭き、体も拭こうと片袖を脱いだ。

「…え? なんだコレ?」

 体に赤い斑点がパラパラと出ているんだが…!
 え? 何これ蕁麻疹じんましん? 

 起きてから今まで全然気づかなかったけど胸と内股に4、5個は出てる。触った感じ、水膨れや吹き出物的な腫れはないし、痒みや痛みがあるわけでもない。
 …病気? いや、待てよ…?
 確か山川田の山田が飲み過ぎで蕁麻疹が出たって言ってた気がするな。ヤバい病気かと思って慌てて医者に行ったら、お酒はほどほどにって言われましたとかで笑った記憶があるような、無いような…。

「…うん、やっぱ酒控えよう…。」

 蕁麻疹をあんまり擦らないように体を拭いて、タオルを片付けた…。
 よく見ると乾いたタオルの下に白い服が畳まれてあった。どうやら着替えもご準備頂いておりました。おもてなし、しゅごい。
 白い服をハラリと広げると、襟に緩めのフリルがあしらわれた裾の長いワンピースだった。ちなみに下はない。つまりだな、簡単に言うと可愛い女子御用達ネグリジェだ…。

 …これを着ろと? 
 可愛い女子ネグリジェをオッさんに着ろと?

 アルフさんおもてなしぃぃぃ! 間違ってるぅぅぅ!!うああああと叫びならクシャっと丸めて投げつけ

 …られん…。これ、絶対お高いシルク的ネグリジェだ…。手触りスルスルだし、めっちゃツヤツヤ感すごい。

 ああ、そうだ、畳み直してそっとタオルの下に戻そう…。見なかった事に…。触らなかった事に…。ソウシヨウ。
 ツルツルなネグリジェを丁寧に畳みタオルの下に戻してみたが、どう見てもネグリジェがタオルから色々とはみ出して原状回復出来ておりません。
 …ちょ、ネグリジェって特別な畳み方でもあるんか?! もう一度折り方を変えて畳んでみたが、今度は小さく折りすぎたらしくやたら高さが出てるぅ!

 あ、あかん、どうやっても触れなかった事にできん…。つんだ…。



 体感30分くらいでレオさんが戻ってきた。

「すまんな、ちょっと足止め食っちまった。…どうした? 具合悪いのか?」

 レオさんが布団団子の俺に寄ってきた。

「…ううっ、レオさん、恨む!」

「…なっ? どうした、突然。俺がいねえ間に何があったんだ?」

 布団団子を前にオロオロしてるレオさんに怒りをぶつける!

「なんでこんなん頼んだよーっ!」

 ガバッと布団を剥いだ。

「…かわ…、」

 は? かわ、ってなんだ!?

「…ああ、その寝間着丁度良いみたいだな。」

 可愛いネグリジェを纏ったオッさんこと俺に驚く事もなくレオさんはニッコリだ。

「じゃなくて! コレ、どう見ても女性用でしょ?! 俺のことちゃんと男って説明しなきゃダメじゃん?! 」

 胸元を飾るひらひらのフリルをつまみ抗議する。

 こんな女装状態のオッさん、アルフさんに見られたら変態のお客さんだって認知されちゃうからね?! そんなの俺居た堪れないからね?! 報連相ほうれんそう、しっかり!!

「…いや、一応伝え…てないな、そう言えば。すまん、ソレはこちらの手違いだ。着替えをすぐ手配するようアルフに伝えておく。そんな寝間着不快だろ? 脱ぐの手伝う。」

 レオさんはへにょりと眉を下げ申し訳なさそうにベッドに腰掛け、ネグリジェを脱がそうと手を伸ばしてきた。おっと、いかんいかん。胸の蕁麻疹が見られてしまう。さすがに腰悪くして寝込んでる上にさらに蕁麻疹とかバッドステータス上乗せしたなんて知られたら大事おおごとに…!

「…あ、いや、着替えは大丈夫。ええと…、今日はこれでいいから、もし次回お世話になる時は普通の男性用でね?」

「ああ、わかった。」

 …レオさんや、なんでそんな残念そうな顔する?
  布団を元に戻しコロリと横になる。うん、横向きがやっぱ楽だな。

「そう言えば、足止め食ったってなんかしたの?」

「ああ、無駄な足止めな。さっき教会からの客だって言われて行ってみたら、エイトールの弟子が来てたんだわ…。」

「えっ? お弟子さんってマテウスさん?」

「それな。勿論覆面で来てたから、取り次いだアルフもブルっててよ…。」

 …朝っぱらからあの覆面に遭遇か。そんなんガチ怖いわ。強盗襲来イベントかよ。

「…あー、アルフさんご愁傷様…。で、マテウスさん何の用だったの? まさか師匠探し?」

「いんや、エイトールにはすぐ会えたそうだ。」

「そっか、よかった。」

 痛いのはすぐ終わったんだな。いくら罰でも死ぬより痛いはないよね…。

「まあそれはいいんだがな…。何故か弟子から迷える師匠に一晩の宿を与えた慈悲深い行いを感謝され盛大に祈られたわ…。」

「え? なんて?」

 …ええと? どう言う事?

「まんまだ。そのまんまさ。あの弟子、エイトールを泊めた所に必ず感謝の祈りを捧げに行ってるそうだ。律儀と言うか傍迷惑と言うか…。ああ、そうそう、あの弟子がコレ置いて言ったぞ。」

 小さな紙袋を手渡される。

「なんだろう? 」

 カサリと紙袋を開けて中を覗く。

「あ、クッキーだ。」

 中には小さな丸いクッキーが入ってた。

「ああ、それは教会名物のだな。バザーの日に感謝のしるしで孤児院のガキが作るんだ。…まあ、それは弟子が作ったヤツだがな。ご家族様にどうぞってな。」

 マテウスさん作か。あの覆面姿でこの可愛いらしい小っちゃいクッキー作ったのかな…。覆面クッキング…、なんか材料とか聞くの怖いんだが…。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...