異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

グニャグニャです

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第91話 グニャグニャです



 ーーー大事な事は、果たしてワープがリアルで出来るかって話…。

 悩む…。だが、リオガまで毎回徒歩で行くのは、今回は途中ズル(パンダカー移動)したが、本来徒歩6時間の道のり…、

 しんどいデッス!! 
 足どころか股関節もダメージがやばいデッス!!
 
 クッ、異世界徒歩生活舐めてた。

 …しかし、そんな事よりワープ。ワープですよ。
 箱庭内でアストラポータルの入口をみると、毒々しい紫と緑のグニャグニャエフェクトでいかにも中はザ・異次元空間。ちなみに中に入ると、いまワープしてますよ風に画面がグニャグニャになって別の場所に飛ばされるんだ…。とても、とても、エフェクトわかりやすいんだが…、

「リアルでグニャグニャ怖すぎる…っ!」

「怖いグニャグニャ? 魔物か?」

 いつの間か部屋には不思議そうな顔でこちらを見てるレオさんが。さっきティーセットが乗ってたワゴンに小綺麗な木箱、多分書類箱をのっけて戻ってきてた。ちなみにシャツを着て裸族は卒業してた。

「あ、おかえり。…ええと、グニャグニャは魔物じゃないよ。ええと神様の魔道具の効果? みたいな?」

 アストラポータル、一応作る時に魔法素材使うからな。魔道具だろう、多分。

「…なんで疑問形だ。で、グニャグニャの魔道具がどうかしたのか?」

 ハテナ顔が抜けぬままレオさんはベッドにやってきて、何故か俺の横に肘枕で転がった。…レオさんや、仕事やる気無しオーラ出てますぞ?

「ええとね、レオさんちに設置したいなぁ…、なーんて…。」

「は? 神の魔道具をこの屋敷に?…大丈夫なのか、それは?」

「ちょっと空き部屋を改造して隠し部屋にしても大丈夫なら…。あ、改造は俺のタブレットがやるから材料とか大工さんはなくてオッケー!」

 箱庭パワーですぐです!

「いや、そう言う事じゃなくてだな…。ええと、まずその魔道具、グニャグニャの効果ってなんなんだ?」

 あ、端折りすぎた 笑。

「ごめん、ごめん。設置したい魔道具って言うのは、アストラポータルって言うワープ装置ね。」

「わーぷ?? 何の装置か皆目見当もつかないんだが…。」

 頭上にでっかいハテナマークが見えるようなレオさんの困惑顔。
 ワープ、異世界、通じない。
 いや、通じないのは普通か!

「ワープ…ワープ…、ええと、異世界的な表現…、あ、魔法! 転移魔法か! レオさん、コッチに転移魔法ってある??」

「いや、転移魔法ってのはないな。だが、転移は知ってるぞ。昔ついて行った遺跡に転移装置ってのはあった。シーカーしか詳しい仕掛けはわからん装置なんだが、装置の小部屋に入ると体がフワッと変な感覚になって別な階層、多分真下か真上に転移する装置だった。」

 …ん? 小部屋でフワッとして上下に転移?
 それはエレベーター…、いや、そんな訳ないか。

「オッケー、オッケー、ちょっと違う装置みたいだけど転移装置はあるんだね。俺が設置したい転移装置は、こことダンジョンを繋ぐ物なんだ。一瞬で移動できるからリオガで買い物する時とか便利かなって。」

「…買い物する為に、神の転移装置を…?」

 何故かドン引きのレオさん。…持ち歩き時間1時間以内で生鮮食品とか買えるよ? スープも冷めない距離…、なんてな…、いや、すまん。

「…えっと、何かあったらすぐ人がいるトコに来れるから、…が一番かな。」

「後付けすぎる…。」

 バレてーる。

「しかし、神の魔道具をこんな所に設置していいもんなのか? また変な石像…いや、守護神像とかで聖域化するんじゃ…。」

 ドン引きから遠い目になるレオさん。
 いやいや、ここにはダンジョン守護神像は置かないから! さすがにこちらを聖域化したらレオさんちが神殿にされてしまう…。それアカン。

「アストラポータルは像じゃないから大丈夫(だと思う)。」

「…本当か? まあ屋敷は俺しかいねえから、その魔道具の設置はコウの好きにしていい。が、神に許可を必ず頂いてくれ。あと屋敷聖域化はやめて欲しいと献言けんげんも頼む。」

 肘枕でリラックススタイルとは裏腹に、言葉からは切実なお願い感をヒシヒシと感じる…。

「ありがとー。そこはしっかり確認してから設置します。」

 脳内TODOリスト(優先度高)で登録しましたぞ。グッとサムズアップで答えた。

「よし、じゃあ寝るぞ。」

「ん??」

 パードゥン?

「コウは休みだろ。少し寝ろ。」

 早業でレオさんはほいっとタブレットを目の前から取り上げて後ろに隠した。

「えええ、今からマップ作成しようと…、」

「仕事は起きてからな。」

 ポフポフと布団の上から軽く叩かれる。
 完全に子供の寝かしつけです、ソレぇ。

「まだ眠くないんですけどぉ…。」

「ふっ、コウは子供だな。大人は休める時に休むもんだぜ?」

 クッ、ここでしっぺ返しか~!!

「…じゃあ、レオさんも休みだから仕事禁止。寝て下さーい。」

 書類の山を見ながら何もしないんだぜ~? 目の前の出来る仕事が減らないって意外に堪えるヤツな!

「ははは、煽ってくんなぁ。じゃあせっかくだから添い寝してやろう。」

 悪い顔で笑いながらふざけてガバリと布団の上から覆い被さってきた。

「ぎゃあああ!! 重いいい!! 筋肉に潰されるううう!!」

「ほら、添い寝だからみっちりくっついてやるよ!」

 腰に力が入らない俺は逃げる事叶わず、筋肉と布団の圧に押し潰された。修学旅行の男部屋ノリか!
 しばらく2人でゲラゲラ笑いながら布団団子戦争してたが、ふっと覆い被さるレオさんの首筋から香るいい香りに意識がとられた。

「………。」

「ん? どうした? もしかしてどこか痛かったか?」

 レオさんがハッとして抱きついていた体を離し横にずれた。

「あっ、違う、痛くないから! ちょっとレオさんの香水がいい香りだなって思ってさ。」

「香水…、そんなご大層なモンはつけてねえが、香膏こうこうはつけてるな。あー、香り軟膏ってコウの国にはないか?」

「うーん、香膏こうこうはわかんないけど練り香水はあるね。」

「似たようなモンかな。コッチじゃ男共は髪を整えてから仕上げに軽く髪に揉み込んで使う。んで、ついで耳裏にもちょいと塗るのが流行りってな。」

 香水兼ヘアワックスか!なるほど!

「コッチの人達って結構オシャレに気を使うんだねえ。」

「ははは、そんな事ねえよ。ただムサ男臭えの誤魔化してんだ。」

「えええ、そうなの? でもレオさんはそんなムサ男臭くないよ? 石鹸と花が混ざったいい香り。」

 すんすんと近くにあったレオさんの腕の匂いを嗅ぐ。うん、腕から微かにあのいい香り。残念ながらオッさん臭はしないぞ。チッ、若者め。

 …ハッ! オッさん臭、俺は大丈夫か?!

 慌てて自分の匂いチェック。手首に鼻を近づけてすんすんすると、

 …やべ、地味に汗と酒臭い。

 そう言えば昨日は飲んだくれてそのまま寝落ちたな…。ダメなオッさんか…。

「…ごめん、俺が臭かった。後で濡れタオル貸してくれる? 体拭きたい。」

 モゾモゾとレオさんから少し離れる。

「…は、コウはいい匂いしかしねえ。」

 逃げる俺にレオさんは再び覆い被さり、首筋に顔を埋める。すんすんと首筋を嗅ぐ気配がする。

「や、ちょっと、レオさん、マジいま俺臭いから!」

 ぎゃー! やめてー! 俺のオッさん臭を暴かないでくれー!!

「…はあ、甘い匂いだ。また齧り付きたくなる…。」

 甘いって食料扱いか?!
 おいおい! まだ修学旅行男部屋ノリ続行か?!

「もー! ふざけんなって! 」

 オジサン、高校生じゃないのでそろそろ修学旅行悪ノリ遊びは体力尽きてしまいます!
 ぐいっと両手でレオさんの肩を押す。
 すぐに首筋からレオさんが離れたが、…一瞬掠めたレオさんの香りに何故か腹の奥がムズリとした。

「…コウ、」

 レオさんの大きな手がするりと俺の首の下に入りうなじを撫であげる。
 反射的に顎が上がってしまいレオさんと自然に目線が合った。
 細められた瞼から覗くトロリとした空気を纏った緑の瞳…。

「…レオさ…、」


コンコンコンっ


「ハいい?!」

「チッ…。」

 突然のノックに正気に戻った!!
 お、お、俺、いま、な、な、何を、?!

「今そっちに行く。」

 レオさんはでっかいため息をつきながら、寝室を後にして行った…。

シーン…

 静まり返った部屋の中で、俺の心臓だけが周りに聞こえそうなくらいバクバク大きく鳴っていた。

 な、なんだコレ?! 俺、なんで、なんで、なんで、

 ちんこ勃ってんのーーーッ?!?!
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