異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

セバスチャン問題

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第90話 セバスチャン問題



 アルフさんってセバスチャン的な感じなのかなぁなどと考えながら、ぼんやりミルクティーをすする。そういや執事といえばセバスチャン、ってどっからきてんのかなぁ…。映画…?

「セバスチャン…。」

「…セバスチャン? 知り合いの名か?」

 レオさんが戻ってきた。

「あ、いや、執事の名前はセバスチャンって言うネタがあってね…。知り合いじゃないよ。」

 ネタなんだよ、ネタ。

「そうなのか。名前で職業が決まるとは随分変わってんだな。」

「うーん、ちょっと違うなあ。…執事の二つ名的な? いや、なんか違うな…。まあ、セバスチャンは執事っぽい名前って感じ。イメージだよ、イメージ。」

「そう言うモンなのか。」

「そう言うモンで…。」

 セバスチャン問題、難しいな!

「まあいいか。コウ、メシが出来たから隣りの客間に移動するぞ。ベッドだと食べ辛いからな。」

「あ、りょーかい。」

 レオさんがティーセットを片付けて、また介護士さんになってくれた。横抱き移動…。申し訳無さすぎて車椅子的なモノが切実に欲しい…。いっそ台車でもいい…。
 客間のソファーに下ろしてもらう。レオさんも俺を支えるよう密着気味に隣りに座った。すまないねえ、レオさんや…。

「あ、いい匂い。」

 飲み過ぎの次の日は胃もたれであんまり食べないのだが、テーブルに並べられた料理達が食欲をほどよく刺激する良い香りをたてていた。

「コウにはこのスープだ。パンを鳥のスープで煮崩してあるから食べやすいぞ。」

 ソファーからテーブルまで少し遠かったので、レオさんが気を遣ってスープを手渡してくれた。カフェオレボールくらいの器にパンのスープが盛られている。少し白い感じのスープだ。

「美味しそう~。いただきま~す。」

 コレうまっ! 鶏白湯ぱいたんみたいだけどあっさりしてるし、鳥の旨みって言うか、お出汁のお吸い物みたいな感じだ。
 日本で言うなれば、有名メーカーのインスタントまつたけのお吸い物。あれに鳥の気配を感じるみたいな。
 …めっちゃアリです、これ。

 煮崩したパンも味が染み染みトロトロで、飲んだ次の日とは思えない勢いで完食した!

「口に合ったようで良かった。まだ食べるか?」

 レオさんがまだ手をつけていないほうの料理をスッと出してきた。…あ、あれ、出汁巻きか?

「…レオさん、その玉子料理は?」

「これか? これは巣場すばどりのオムレツだ。ちょっと濃い目の味だが食べてみるか?」

 おしい~! 出汁巻きならぬオムレツか~!
 うーん、コッチの料理は和洋中混じってるなあ!

「えへ、一切れだけ食べたいです。」

「ああ、遠慮すんな。食べれる分だけ食べてくれ。」

 レオさんは取り皿にオムレツと付け合わせのニンジン?を乗せてくれた。

「味が濃いから、キャルットも食べるといい。キャルットは甘めだからちょうどいい筈。」

「ありがとう~。…お、確かに玉子濃いめだ。でも美味しい! 好きな味!」

 オムレツは玉子が濃厚で、キッシュみたいな味だった。塩味があるので付け合わせのキャルット、これはまんまキャロット(ニンジン)のグラッセでちょうど良い。
 異世界メシ、美味いな! …ダンジョンには絶対食堂誘致しよう。俺が通う。

「ははは、ヘレナのメシはウチの自慢の味だ。コウに褒められてヘレナも鼻が高いだろう。」

 にこにこしながらレオさんもモリモリ料理を食べている。
 …おや、皿の端に緑色な細切りお野菜が残っておりますが??

「レオさ~ん、好き嫌いはダメだよ~?」

「…いや、このペペロは少し…、火の通りがあまくてな。避けたんだ、うん。ヘレナもたまには失敗するから…。」

 ペペロ…、名前はペペロンチーノ風だが見た目はまんまアレだな。

「それってどう言う野菜? 辛い野菜?」

「…ペペロか?辛くはねえな。どっちかって言うと苦味がある野菜だ。」

 はい、ピーマン確定です。その細切りになってる緑の苦味がある野菜と言えばピーマンですね!

 …コヤツ、ピーマンが嫌いだな? 子供か 笑。

「ふっ、レオさんお子様だね。」

「お、お子様…だと…、」

 チラリと皿のすみに残されたペペロから気まずそうな顔のレオさんを見る。

「ふふ、大人な俺が食べてあげようか? そのペペロぉ。」

「…大丈夫だ。火の通りが少しあまいからコウに食わす訳にはいかねえよ。勿体ねえから俺が食う。」

 掻っ込むようにペペロを口に押し込めたレオさんはめっちゃ苦虫を噛み潰したよう顔になった 笑。

「えらい、えらい。多分ヘレナさんも喜ぶよ。」

 レオさんはその後口直しとばかりに肉を炒めた料理をモリモリしてました 笑。

 朝食を終えまたベッドへ抱っこで運ばれてゴロ寝。

「レオさん、本日俺都合によりお仕事はお休みです。せっかく地元に帰ってきたんだし、レオさん羽伸ばしておいでよ。俺は素直に寝てます~。」

 寝てます。確実に寝てます。無理アカン。

「いや、俺もここで休むさ。と言うか便所まで運ぶヤツいねえとコウが大変だろ? アルフにも出来ねえ事もねえが…、勝手知ったる俺の方が気兼ねなく頼めるんじゃねえか?」

「うっ!…ソウデスネ…。」

 レオさん、なかなか痛いとこ抉ってきますな…。
 いくら使用人と言ってもアルフさんには頼めないです…、はい。

「なあに、留守の間に溜まった仕事の片付けもあるから丁度良かったのさ。」

「仕事?」

「つまらん書類にサインってヤツさ。」

「あー、貴族あるあるね。」

「…貴族じゃねえよ。アルフのサインじゃダメなのがあるんだ。税金の報告とかな。」

「税金…。お疲れ様です…。」

 おうふ、税金。コッチも確定?申告とかあるんだな…。まああるか、普通は。税収って財源なきゃ街なんか成り立たないもんな。そう言うトコはやっぱここはファンタジーゲームの世界へ転生とかじゃなく、しっかり実在の世界へ転勤なんだよなぁ。
 …もしかしたらダンジョンも認知されたら税金払わないといけないのかもしれん。やだ、世知辛せちがらい。俺、法人の手続きとかわからんよ…?

「一度2階に行ってくる。すぐ戻るが便所は大丈夫か?」

「まだ大丈夫だよ~。」

「もし何かあったら、そこに下がってる紐を引いてくれ。それは使用人を呼ぶ仕掛けなんだ。」

 仕掛けの紐はヘッドボードのサイドでオシャレな飾りの様に下がっていた。飾りじゃないのか、このカーテン留めるような紐…。お金持ちベッドすごい…。

「オッケー。なんかあったら呼ぶ。」

 いってらっしゃ~い、とベッドからレオさんにヒラヒラ手を振った。何故か嬉しそうにへにゃっと笑いレオさんがティーセットのワゴンと共に部屋から出て行った。

 さて、寝っころがってますが…、俺もちょっと仕事しちゃおーっと。そろぉ~と腰に気を使いゆっくり横向きに転がる。うん、腰ポジションよぉし!枕をスタンドにタブレットもポジションよぉし!
 タブレットの充電は余裕ありまくりなので、タブレットで箱庭を開く。
 熊討伐でダンジョン外でも箱庭が機能するのは確認済み。多分レオさんちも見えるはず。

「おー、レオさんち表示された。ちょっと今だけ視点連動切って…、ふむ、これでよし。…あ、ベッドの上に俺とタブレットは表示されないんだ。なんか不思議だな。」

 寝っころがり中なので視点はコントローラー移動に切り替えた。ダンジョンにいる時は今まで気にした事なかったこの別視点、ハタから見たらなんかカメラやドローン的な物が浮いてるかと思ったけど…、なんもなかったね!
 あと俺は映らないみたいだ。
 あの時レオさんを掴んだように、俺も自分を掴んで浮いてみたかったんだけどネ!残念!

 さて、何で箱庭を起動したかって言うと!
 リオガのマップ作成と箱庭での探索、あとまだ決めかねてるけどアストラポータルの設置。
 マップと探索はダンジョンの参考。もしバレないならこっそり素材収納して素材リストにいれたい。勿論すぐ元に戻すよ!
 そしてアストラポータルね。これ、所謂いわゆるポータル同士をランダムで繋ぐワープゲートなんだけど…。ランダムはいいんだ。こことダンジョンしか繋がらないからランダムだろうがなんだろうが関係なく、なので。

 ーーー大事な事は、果たしてワープがリアルで出来るかって話…。

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