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健全黒字経営目指します!
ケアします!
しおりを挟む第89話 ケアします!
『総括チーム: コウさん、連絡下さい。」
おっふー! 飲み過ぎ心配されてるー!
しかも薬物反応って、どんだけだよ…。
『リアム: コウさん、お楽しみ中メンゴ~!
なんかルーカス(童貞)が焦ってメッセ入れまくったみたいだけど、俺がバイタルの事説明しといたから気にしないで~。
あ、一応起きたらメッセしてあげて。
ウフフ、男の子だもん。ハメ外しちゃうの仕方ないよね(にやりスマイル絵文字)』
リアムさんのアカウントからも飲み過ぎメッセが入ってたが、ヘルプついでにルーカスさんが童貞って社内ネタバレはやめてほしいです…。総括チーム(童貞)さんって勝手に脳内変換しちゃうでしょ…。
どちらにも飲み過ぎてごめんなさい、今は元気ですとメッセ出しといた。勿論、総括チームさんからは多少のお小言返信を頂いた。マジごめんなさい…。
リアムさんからは、ご自愛ください♡ と返信がきた。優しい。
ストレージから頭痛薬と水を取り出したが、エイドアプリが気になりポチっと開いてみる。
『メディカルエイド、ハッピーボディプラスにようこそ!』
お、なんか女子向けリラクゼーション系のアプリっぽいな。BGMもオルゴールの可愛らしい曲だ。
画面に白い丸餅みたいなゆるふわキャラがプルンプルンしながら解説する簡単なチュートリアルが流れた。
どうやらこのアプリはAI?ドクターの質問に答えると結果に応じてなんらかの治療が始まるらしい。特に何かの器具を用意するとかはないっぽい。
…治療ねえ。タブレットから何か不思議神パワーでも出るんだろうか?
試しにドクターと話すボタンをタップしてみる。
二分割画面が現れ、片側にドクター、もう片側にテキストメッセージがメッセ風に表示された。
『Dr.もち君: はじめまして、あなたの主治医のもち君です。
今日はどうしましたか?』
…おい、おまえ、チュートの丸餅やんけ。リモートじゃないから別に姿の表示いらないだろ…。
『鈴木: 二日酔いと筋肉痛がひどいです。』
もち君は俺が文字入力する度にプルプルと画面で伸びたり縮んだりしている。…ドクター、落ち着つけ。
『Dr.もち君: 二日酔いと筋肉痛ですね。
では二日酔いの痛みは…、
1.頭
2.胃
3.腹部
この他にある場合はその部位を教えてください。』
プルンプルンしてる割には手堅く真面目なもち君の質問にどんどん答えていく。
『Dr.もち君: お疲れ様でした。以上で問診は終了です。
診断結果は、飲酒によるアルコール離脱症状からくる頭痛(二日酔い)、激しい運動による遅発性筋肉痛です。
どちらも水分を小まめにとる事、安静にする事で回復が見込めます。
本アプリ、ハッピーボディプラスでは痛みを緩和するケアを提案します。
ケアを、
1.希望する
2.しない
3.再度診断をする
以上から選択して下さい。』
まあそうよなー。さあ、ケアはどんなもんかな、1をポチっとな。
『Dr.もち君: ではケアを始めます。
枕元に端末を置き、横になりリラックスしましょう。
※ケアスタートをタップすると音声が流れます。ボリュームにお気をつけください。』
指示通りタブレットを枕元に置いて、リラックス~からのスタート!
『Dr.もち君?:
…今、あなたの脳に直接語りかけています…、痛くない…、痛くなぁい…、ほぉら、全然痛くなぁぁぁい…、痛くなぁぁぁいぃぃぃ…。…ハイッ!!
以上でケアは終了です。それではよい1日を!』
…待って、この音声、
リ ア ム さ ん 。
「もち君の中の人、語りかけのプロじゃんかああ!! ケアって洗脳かーいっっっ!!」
タブレットから流れてきたイケボはあのリアムさんであった…。ケアとは…。
だがガチの洗脳ゆえ、痛みがかなり緩和したのであった…。ケアとは…プラシーボ…。
「…コウ、そんな大声出して…どうしたんだ?」
少し小ざっぱりしたレオさん(但し上半身は裸)がティーセットのワゴンを持って戻ってきた。
「あ、いや、ちょっと神パワーがね…。なんでもない。ええと、少し痛みが良くなったから安心して。」
「そうなのか?…楽になったんならいいんだが。もう茶は飲むか? 一応、甘めに淹れてきたが。」
そう言ってベッド脇にワゴンを寄せた。
ミルクティーのいい香りがする。
「ありがとー。今日は水分補給しなきゃだから、ぜひ頂きます。」
よっこいせと横に転がりながら起き上がる。
…あ、腰はまだダメだな。痛みはさっきより全然少ないが座りの安定が悪い。うーむ、歩きすぎもあんのかなぁ。股関節に違和感…。
「そんなひとりで起き上がって…、無理すんなよ。」
少し残念そうな目で見られた。…要介護からは少し脱出したからね?
レオさんはワゴン下から、大きめのお盆に足がついたようなアンティーク調のベッドテーブルを引っ張りだし、お茶をセットしてくれた。おお、なんかすごい貴族っぽいな、これ。
レオさんもベッドに腰掛け茶を傾ける。
「コウ、今日はだんじょんに帰るのは無しな。さすがに馬車でもキツいだろ。明日までここで休んでいこう。」
「そうだねぇ。俺も…腰、ダメだと思う。急ぐ用事もないから今晩もお世話になります。」
「ああ、そうしてくれ。アルフにはコウの事は伝えてあるから、気にせずのんびりしてくれ。ヘレナも久しぶりの客に張り切ってたからな。」
「ちょっ、そんな客なんて! ただ寝てるだけだからそんな扱いしなくていいって!」
「いいんだ。アイツらも普段俺の相手くらいしかしてないから、来客のもてなしが楽しいんだそうだ。」
「…そうなの? でもなんか悪いな。俺、お邪魔してますの挨拶もしてないし…。」
勝手におウチに来て酒盛りして二日酔いで寝込んでる客…。アウトでしょ…。
「いや、アルフ達は別に客が挨拶しなくても気にしねえ。使用人ってのはそういうモンだからな。」
おう、これは貴族あるあるのアレですね?
執事さんとかメイドさんのお仕事に、客が顔突っ込んだらダメってヤツね?
「貴族…。」
「いや、貴族じゃねえからな? とにかくそんなモンだから気にすんな。」
うん、ソレ貴族だよね。
コンコンコンッ
「今、行く。」
レオさんがカップを置いてまた扉に行った。
「食事の準備が整いました。…お館様、こちらへ少し。」
「なんだ、どうかしたか?」
レオさんが部屋の外に呼び出されていった。
上手いこと扉に隠れて姿が見えないアルフさんってどんな方なんだろうか?
「…坊ちゃん、あちらの御姫様はどちらの家門のお方なんですか。いくら坊ちゃんが元アーロ公家筆頭と言えども、今はアーロイス家に下った身。高貴な方に手なんぞ出したら、牢屋行きどころか縛り首ですからね?」
小声で話すパリッとした家令の制服に身を包んだ老人、アルフの額には青筋が立ってる…。
「…いや、御姫様って…。ただの客人だってさっき言っただろ?」
年は食っても元家令、相変わらず主人に厳しい。
「ただのお客人が、あんな仕立ての良いお着物をお召しになる訳ごさません。ヘレナが恐れ多くて洗濯などできないと言っております。…はあ、アーロイス家にどうお話したら良いものか。」
昔より少し広くなった額をハンカチで拭って、またコチラをキッと睨む。
「責任をお取りになれる身分の方にご助力を。」
「だからな、コウは貴族じゃなくて…、ええと、他国からの客人な。あっちの国だと、平民もああいう服なんだと。」
…まあ、外国人って言うか異世界人だがな。
「…が、外交問題、ですと?」
ふらぁと蒼白になったアルフが壁に手をついた。…やべ、アルフ死ぬかもしれん。
「あー、アルフ! 大丈夫だ! コウは俺とマーシナリー契約を結んでるから! ええと、こう言うの込みだから、な?」
慌てて半分魂が抜けかけたアルフに言い訳する。
「………本当に、本当に、お手つきでも問題ではないと?」
「お、おう。問題ない。契約の件はジュード先生に確認してもいいぞ? しっかりと斡旋所を通したからな。」
…コウの素性の契約だが。
クソジジィも巻き込んでるから、アルフが問い合わせても下手な事は言わんだろ…。
「…坊ちゃん。コウ様にソチラの方までお仕えなさるなら、責任を持ってお仕え下さい。他方で種まきなど決してなさらぬよう。もし、何かが起こってしまったら、私が坊ちゃんのシモを責任を持って刈り取ります。」
アルフの目がすわっている…。本気だ…。
股間が少し寒くなった。
「アルフ、そんなくだらねえ心配いらねえよ。俺はコウに名を捧げたからな。」
「?!」
ヤベ、またアルフから魂が半分抜けて…、
「ぼ、ぼ、坊ちゃんにとうとう奥方様が…、ア、アーロイス家に報告を…、「ち、違う! 婚姻の約束じゃねえから! 側に仕えるほうだから! アーロイスには報告はいらねえ!」…、坊ちゃん、不甲斐ないって言葉はご存知ですか…。流石に私、ガッカリでございます…。」
…知ってるわ。もう玉砕したんだよ。
「…とりあえず、大事な客人な事には変わらんから変に騒ぐなよ? あとコウは外国人だからコッチの習慣に慣れてねえんだ。変な事してても見なかった事に。」
「かしこまりました。コウ様の滞在中、誠心誠意お仕えいたします。…はあ、奥方様は…、いつになったら…。」
アルフ、最後のは聞かなかった事にするぞ…。
「あー、ヘレナにもし良かったら夜はリオガの家庭料理を出して欲しいって伝えてくれ。気取ったメシよりそう言うのが好きらしくてな。酒は無しでいい。」
「そのように。ところでコウ様のお着物はいかがいたしますか? 替えのお着物は?」
「…そうだな、寝間着だけ準備してくれ。確か替えの服はあるから準備は不用だ。洗濯はしなくていい。」
「では、そちらもそのように。何かございましたらお呼び下さい。あと坊ちゃん、服を着なさい。」
元家令は完成された美しい所作で礼をし、客間から足早に去っていった。
「…はあ、疲れた。さあて、コウにメシ食わせっか。」
俺は凝った首をコキっとひとつ鳴らして、コウが待つ寝室へ戻った。
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