異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

次の日は頭が痛い

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第87話 次の日は頭が痛い



「なあなあ、コウちゃ~ん。オレの事、護衛で雇わねえ? 今ならお安く契約しちゃうぜ?」

 師匠が突然猫撫で声で営業をかけてきた!ついでに頬をプニプニ摘んできた!…何かを摘むの好きなのか、この人。
 唐突すぎて真顔になってしまった。のを、レオさんがんで言い返してくれる。尚、頬を摘む手はペシリと払ったが、やはり乳首と同じように頬に微ダメージを受けた。コイツら…、って、あ!ほんとはわかってやってのか! クッ、昨晩の報復か…。地味にダメージを蓄積させるやり方を…!

「は? いきなり何言ってんだ、お前。護衛は間に合ってんだよ。」

「うっせー、オメエに聞いてねえっての。なあ、コウちゃんいいだろ? オレめっちゃ強えし、もめっちゃ強いからさあ…。コウちゃん大満足だと思うぜ?」

 いや、師匠が強いのはなんとなく知ってますケド…、流石に護衛は2人も要らないのよな…。あとお弟子さんのマテウスさんもいたよな。いまの俺んち(ダンジョンね!)に戦闘職3人は人員過剰配置なんですが…。
 あとアレが強いって、アレとは…??

「ええと、師匠は、「師匠じゃなくて、エイトな?」…、エイトさんはお弟子さんの面倒見ないといけないと思うので、コッチの専属護衛業は難しいんじゃないかなぁ…なんで、今回はお話しはまたの機会に…。」

 諦めてくれい! あと頬の次に俺の上腕プニプニをプニプニするのもやめてくれい!

「は? あの雑魚? アレはその辺に捨て…っ、クッ、…あー、もう時間かぁ。マジ面倒くせえ。」

 師匠が左胸を押さえながらノロノロと起き上がる。師匠の手の隙間から赤い刺青みたいな物が見えた。
 あれ、刺青なんて師匠の胸にあった? さっきなかったよな?

「おいエイトール、お前付けてんのかよ。」

 レオさんが呆れ顔で肘枕をしている。

「昔、ついついうっか~り戦場で教会のお偉いさんぶった斬っちまってよ。んで、牢にぶち込まれて縛り首か、どっちがいいってよぉ。ハッ、マジあいつらクソだわ。」

 師匠の左胸にはダンジョン守護神のマークとあがなう者と一文の入った赤い刺青があった。

「お前が悪りいんじゃねえか。」

「ケッ、オレは悪くねえさ。金ピカの輿こしできたバカ丸出しのオッサンが悪りいのさ。はー、コイツのせいで、あと一年はあの雑魚から2日も離れられねえのマジイラつくわ。」

 …金ピカの輿って、どんなサンバ上様スタイルだよ。いや、サンバ上様は金ピカだが戦場に輿で乗り付けないな。まあどっちにしろ戦場に金ピカで登場するのはアカン側ですよね…。

「エイトさん、マテウスさんから2日離れるとどうなるんですか?」

「ん? あー、コウちゃん外国人だから背徳紋はいとくもんしらねえのか。コレ、約束破っとじわじわと痛覚が鋭敏になってきて何の刺激でも痛みになってくんのよ。最後は空気すら激痛で痛み狂って死ぬんだわ。もう自害すんにも早めにしねえと痛すぎて自害できねえの。サイテーっしょ? ま、コレ雑魚を一目みるか、アイツが勝手に死ねば止まるけどな。」

「マジすか…。」

 エグい。それエグいです、師匠…。

「エイトール、弟子はどこにいんだ? そろそろ会わねえと不味いんじゃねえのか?」

「あー、それな。多分、この近所まで来てんじゃねえのかな。なんか知らねえがアイツ自分にも試練を課すとか言ってよ、自ら背徳紋入れてんの。痛みが出始めると神の目スキルで追ってくんだぜ? 娼館でヤッてるトコまで乗り込んでくっからマジ引くよなぁ。」

「マジかよ…。」

 ドン引き。それドン引きです、マテウスさん…。
 師匠もヤバいが、あの人大分ヤバいな…。

「…おい、まさか扉ぶち破って入ってこねえよな?」

「…まあ、ここには流石に入ってこねえだろうよ。一応貴族の屋敷だからな。アイツもその辺は弁えてんだろ、多分…。」

 師匠の目が泳いだ。…これは前科あるヤツだ。

「帰れ。」

「へいへい、わかりましたー。帰りますー。あ、オメエらいつまでリオガにいんの? また飲もうぜぇ。」

「コウが回復次第出るから飲まねえ。」

「えええ、マジでぇ。またコウちゃんとしっぽり飲みてえんだけどぉ。」

「コウはお前とは飲まん。ダメだ。」

「嫁入り前の生娘のオヤジかよ、レオナルドはよぉ。」

 師匠はベッドに腰掛けズボンをよっこいせと履きながら不貞腐ふてくされた。
 うん、まあそんな感じだよな、レオさん。でも酒NGです。ごめんなさい。
 モゾモゾと痛む下半身を庇いながら、師匠の隣りまで移動した。

「…うぐッ、ね、寝たまんまですんません。ええと、またリオガに来た時ご飯一緒にたべましょ? 今度は昼のリオガで遊びたいです。」

 痛みに引き攣りながらニッコリ社交辞令スマイル。これで許してくだせえ、師匠ー。

「………もー、コウちゃんはよぉ…。小悪魔すぎんぞ。騙されるわ、このこのッ!」

 ガバッと俺に覆い被さってグリグリと頬ずりしてきた。ウッ、ちょっと師匠! 近い近い!あと無精髭チクチク痛いぃ!

「おい離れろ、バカ。」

 レオさんが師匠を引き剥がしにかかった。

 が、

ブチュウッ

「またろうな、コウちゃん♡ 」

 勢いで唇を奪われた!!

「…は?? え??」

「んじゃあ、オレ帰るわ~。しばらくはリオガ拠点にその辺ウロウロしてっからよ。なんかあったら斡旋所か教会のマテウス宛に言伝ことづてしてくれな。」

「何もねえがわかった。さっさと弟子のトコに帰りやがれ、アホ。」

 ベッドから降りてさっと服を着込んで、コウちゃんまたな~とヒラヒラと手を振り、師匠は出て行ってしまった…。

 …つーか、またやろうなって。
 師匠、ボディビル大会にハマったのか…? キスは余計だが。

「…うう、頭、痛い。」

 二日酔いと師匠をマッスルへそそのかしてしまった罪に…。

「…大丈夫か? 痛むのは頭だけか?」

 レオさんが心配そうな顔で覗き込んできた。お、レオさんも無精髭生えてんな。ちょっとワイルドだ。朝からイケメンめ。

「…ん、頭と腹筋と尻かな…。ははは、よっぽど変な格好したんだな、俺。」

「………いや、大分可愛かったな。」

 レオさんは目を泳がせながら口元を押さえている。…これはポージングの甘さを思い出し笑いの気配! 可愛かったはボディビルの褒め言葉ではありません! ぐぬぬ!

「ねえ、レオさん。こっちの世界には二日酔いの薬ってある? あったら試したいんだけど。」

 気を取り直して!
 とりあえず二日酔いをなんとかしたいなぁ。多分ストレージには頭痛薬はあるとは思うんだけど、こっちの薬も気になるんだよね。魔法薬的なのを期待。

「二日酔いで薬…。コウの世界はすごいな。こっちは二日酔いには水くらいだ。どっかの村で野草の絞り茶ってのは聞いた事はあるが、怪我や病気くらいにならねえと薬はないな。まあ、痛みどめの薬は一応あるから飲むか?」

 …あー、そうよな。二日酔いって病気じゃないもんな…。自業自得な二日酔いを薬で治療なんて贅沢だよな…。

「あは、俺の世界は薬って身近ですぐ手に入るから…。えっと、痛みどめは大丈夫。あ、もし酒とかを過剰摂取して死にかけたりしたら、異常回復みたいな魔法あるの?」

 こちら魔法の世界だから、状態異常回復魔法はあるのかな??

「酒で死にかけるのはそいつの…、いやまあ、何かを飲んだりして死にかけたら水魔法だな。体の異物を水で流すってヤツだ。体に直接干渉する魔法は扱いが難しいから、資格を持ってるヤツしか出来ねえな。…あー、後は教会だ。あそこは医療神官がスキルで治療するんだ。神の祝福ってヤツらしいが詳しくはわからんな。」

「へえ、胃洗浄を水魔法でやるみたいな感じか。あと教会って病院みたいな事もやってんだね。手広いね。」

「いや、病院は別にあるぞ。だいたい薬屋と一緒にやってる。軽い風邪や年寄り共の腰痛なんかはそっちだな。大した治療は出来ねえが教会よりは安く診てくれる。」

 うん、アレっぽいな、教会。『神の祝福』で重い病気や怪我治療って、信仰とお布施集めるなら持ってこいだもんな。地球でも新興宗教なんかがよくやってるアレなパフォーマンス。
 …なんだかこっちの教会、ちょっとヤバめかな…。

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