異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

餃子にビールだよな

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第72話 餃子にビールだよな



「はい、いらっしゃい!…あら、イイ男が来たと思ったらレオナルドさんかい。おや、素敵なお連れ様だ。お仕事中かい?」

「久しぶりだな女将おかみ。今日はこちらのお方がリオガの街歩きを楽しみたいとの事だったから、街一番の女将のホロホロをご案内差し上げたのさ。」

 レオさんがかしこまった話し方で突然の貴族ムーブ!…って、そう言えば今日の俺は貴族だったわ。

「あらまあ、それは光栄な事!じゃあ、街一番美味しいホロホロをお出ししなきゃね!」

 あはははと笑いながら女将さんは、他の客にハイよ、大お待たせー!とホロホロを出していた。…かなり大きいな、あの器。デカ盛りのお店かな?

「さああるじ、こちらは大、中、小とありますが、どちらになさいますか? あるじであれば小が程良いかと思います。」

 レオさんがそう言うと、女将さんが気を利かせて空の器をカウンターに出してくれた。大は調理器具のボウルみたいなデカさで、中はラーメンどんぶり、小はご飯丼サイズだった。うーむ、腹が空いてるから中でも良さそうだが…、食べ歩きするならここは抑えて小だよなあ。
 ええと、そうそう、お約束で、

「(小でお願いします。)」

 レオさんが聞く為にこちらへ少し体を傾けたので、その耳元近くに口元を手で隠して小声で注文を伝える。

「かしこまりました。女将、小と中を頼む。あとこのお方には水もつけてくれ。」

 はいよー!と女将さんは元気よく応えた。
 それから10分もしない内に、小中お待たせー!と湯気を立てるホロホロと水がドンっと出てきた。ついでに小さな取り皿付きだ。
 ホロホロは、すいとんやほうとうのような幅広の麺にビーフシチューのようなスープをかけ鶏ハムっぽいのをトッピングした料理だった。にんにくのような香りがほんのりしてまたそれが食欲を誘う。
 くんくんとホロホロのいい香りを満喫していると、レオさんが水を一口分取り皿にいれ口に含む。コクンと飲み込みと次は俺の器からスープと麺をひとつ、取り皿に乗せパクリといった。

あるじ、もう召し上がっても大丈夫です。少々お熱いのでお気をつけ下さい。」

 あ、これって毒味か!
 めっちゃ貴族っぽい! めっちゃレオさん護衛っぽい!
 …ははは、食い意地はってすぐ箸(実際はフォークとスプーンね)つけなくて良かった。
 ではリオガ名物ホロホロ、いただきまーす!


 女将さんのホロホロはすごく美味しかった。
 味はビーフシチューな見た目に反して中華風で、鶏白湯ラーメンがとろっと少し濃くなった感じだ。肉厚の麺に絡むにんにくっぽい辛味がアクセントになっている。そしてそのスープに入っている巣場すば鳥の肉がとても柔らかく驚いた。スプーンで掬わないとすぐほろりと崩れてしまう程で、レオさんがこの柔らかさがホロホロの由来と教えてくれた。
 俺がハフハフと小サイズを大満足で食べ終わる頃、レオさんはすでに食べ終わっていて、カウンターに小銭を置き、釣りはいらねえと女将さんにウィンクしてた。レオさん、食うの早いな。

「毎度ありぃ。またおいでな~。」

 女将さんの元気な声に送り出されホロホロ屋台を後にした。

「はあ~、ホロホロめっちゃ美味しかった~! 麺も食いごたえあってすごい満足!」

「な、美味えだろ?ここのホロホロはボリュームもあるから、マーシナリーにも人気あるんだ。夜メシ時になると更に行列さ。」

「これは行列わかるわー。はー、夜メシならビールと餃子もつけたくなるレベル。」

 夜のラーメン餃子定食にはビールですよ、うん。…ああ餃子、こっちにないかな?いまめっちゃ餃子のおくちになってきた。

「あー、あのびーるなら間違いねえ。ぎょうざはよくわからんがバレイ酒とホロホロはあうからなぁ。」

 レオさんは腕組みをし、片手で口元をこすっとしながらちょっと斜め上を見上げる。多分レオさんもビールのお口になってるな 笑。
 しかし餃子は無かったかー。残念!

「まあ酒は夜のお楽しみだ。次、肉いくぞ。」

「肉オッケー!あ、あの串焼きみたいなのは?」

 お貴族サマは歩き食べ禁止との事で、席がある店を中心に羊の串焼きやしょっぱいクレープのロール、あのパプリカみたいなサフルを使ったパイの店などなど、気になった所をハシゴした。
 大分腹も膨れたと言うかかなり満腹で、最後はオープンテラス風のカフェの茶でシメ。こちらの茶は紅茶のようで、山羊のミルクティーが主流なんだそうだ。うん、これ結構甘くて俺好みかも!

「次は買い物だったな。服を買うんだったか?」

「そう。俺、こっちの普通の服が欲しいんだよね。出かける時、毎回貴族のふりするの面倒だし…って、んん?! あれ?! 俺、今まで金払ってなくね?!」

「ははは、今更気づいたのか。まあ気づかなくても仕方ねえよな。直接の金のやり取りは従者がやるモンだからよ。」

 …くっ、奢りのプロか!支払いスマートすぎる!

「もう早く言って! 次は俺が払うから!」

あるじ、貴族たる者、金銭を手ずから平民にお渡しになるのは少々はしたのう事で御座います。従者にお任せください、ってな。今日は俺が払うから諦めろ。」

 き、貴族! ここで貴族か!

「…うう、後でちゃんと請求してね!ちなみに今日のメシ代ってどんなモンなの? 一応市場価格知りたいから教えて。」

「…そうだな、ホロホロや串焼きが1タイ前後くらいで他は1タイもしねえ。んで、この茶は店先で飲んでるから6ラルってとこだ。屋台なら4ラルくれえだな。ま、俺がここで腹一杯食うなら5タイもありゃ充分ってトコさ。」

 ふむふむ、あのガッツリお食事系が100円前後でレオさんがお腹いっぱいで500円か。多分東南アジアとかぐらいの物価かな?

「なるほど。じゃあ服一式ならどれくらい?」

「…うーむ、これはちょっと難しいな。新品の仕立てはキリがねえし、古着はその時次第だしなあ。…ああ、下着なら新品で買うから2、3タイか。とりあえず平民向けの上下一揃い1トニーちょいとみとけばいいだろうな。」

 上下で1,000円ちょい。めっちゃプチプライス。とんでもなく安心価格。物価は知れたけど、この安さに慣れるのはかかりそう…。

「んー、1トニーちょいね。ありがとう、なんとなく物価わかったかも。じゃあ、次はおすすめの服屋さんまでご案内よろしくお願いします!」

「かしこまりました。我があるじに相応しい街一番の服飾店をご案内いたしましょう。」

 レオさんが貴族ごっこの丁寧口調でニヤっと笑った。高級ブランド店に連れてかれたらどうしよう…。

 屋台街からストリートを奥へ向かって歩いて行くと、徐々に外食系から自宅用の食料品や雑貨の店に街並みは変わっていき賑やかな雰囲気も穏やかになってきた。
 レオさんは店頭に吊るしの服が並ぶ小綺麗な服屋に立ち寄り、こちらの方のお忍び用に平民の服が欲しいと店主のおじさんに伝える。貴族にびびったおじさんは慌てて中の応接室っぽい小部屋に通してくれ、新品の服を何着か出してくれた。
 うんうん、ちゃんと街を歩く人々が着るような服だ。よかった、普通の服屋さんで。実はこう見えて高級ブランドのセレクトショップとかだったら俺がびびってたわ。

 …しかし何故チョイスが女性用ばかり?
 いくら小さいからって女性用は! ぐぬぬ、解せぬ!

 首元のリボンが可愛らしいシャツやひらひらしたスカート類を断って、男性向けの服を再追加してもらい見繕う。少し大きめだがなんとか一揃い確保できた。脱! 貴族スタイル!
 会計をし服屋を出る。

「後はなんか欲しいモンあるか?」

「うーん、後は…、あ、魔道具が見たいかも。買うってよりも見る感じで。陽見石ひけんせきとかそう言うのがあるお店がいいな。」

 これぞ異世界ってお店が見たいです!

「魔道具か。ここら辺だと庶民向けの日用品しかないがいいか?」
 
「いいよ。庶民向けでも全然オッケー。」

「わかった。じゃあ、そこの店だ。」

 なんと向かいの店だった。近っ。
 
 
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